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熱を加えるほどに甘くなるねぎ。太白油を塗って焼くだけで完成する冬のごちそうです

2021.11.22

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プロよりおいしく作れる 野菜料理の“ちょっとしたコツ”365 身近な野菜で、プロよりおいしい野菜料理を作ってみませんか? 銀座の日本料理店「六雁(むつかり)」の店主・榎園豊治(えのきぞの・とよはる)さんに、家庭だからこそ実践できる“ちょっとしたコツ”を毎日教わります。一覧はこちら>>

ねぎの丸焼き、ねぎと油揚げの早煮


ねぎの丸焼き、ねぎと油揚げの早煮

今日はねぎを丸焼きにしました。少し野趣が過ぎないかという声が聞こえてきそうです(笑)。さすがにこれは料理屋では出せませんが、ねぎが持つ甘さ、おいしさを味わうにはこのスタイルがおすすめです。

加熱するとねぎが甘くなるのは、すき焼きや鍋料理などでご存じだと思います。中でも焼くとねぎの糖度は14〜15%にもなるといわれ、それは一般的なみかんやいちごを超えメロンに匹敵する甘さです。辛みが強いために甘さが感じられないだけで、実は生の状態でもねぎの糖度はほとんど変わりません。加熱することで辛み成分を作り出している酵素の働きが止まり、甘さだけが際立ってくるのです。


ねぎの丸焼き、ねぎと油揚げの早煮

また、ねぎは切れば切るほど酵素が働き、旨みが減って逆に辛みが強くなります。丸のままのねぎは小口切りにしたものと比べると、旨み成分を4倍も含みます。加熱すれば酵素は働かないので、加熱した後に切れば旨みはそのまま残ります。

ねぎの丸焼きは理屈にかなった調理法なのです。家庭だからこそできる最高の食べ方、ねぎの丸焼きで野菜料理を楽しみましょう。


ちょっとしたコツ


・「ねぎの丸焼き」は、野菜料理をおいしくする7要素中6要素を取り入れている。

◎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り 刺激

・下仁田ねぎ、飛騨ねぎといった太ねぎを使う。細い白ねぎでは焦げすぎてしまい、可食部分が少なくなると同時に甘みも少ない。

・通常はむいてしまう一番外側の堅い皮をつけたままで焼くと無駄がない。

・ねぎは焼く前に、竹串や千枚通しで満遍なく突き刺しておくと火が通りやすい。

太白油をねぎ全体に塗って焼くと、油の旨みが浸透しておいしくなる。

・グリラーでそのまま丸焼きにしてもよいが、火の入り具合がわかりにくいので、まずアルミホイルに包んで蒸し焼きにし、中身をとろけるような状態にした上でホイルから出して、外側部分のみを強火で焦がして焼きなすのように焦げの風味を加える

・「ねぎと油揚げの早煮」は、野菜料理をおいしくする7要素中7要素を取り入れている。

◎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り ◎刺激

・煮汁を先に合わせて沸かしたところにねぎを加えてさっと炊くことで食感を残し、ねぎの甘みと辛みのバランスを好みに調整する。







ねぎの丸焼き、ねぎと油揚げの早煮

「ねぎの丸焼き」(左)


【材料(2人分)】
・下仁田ねぎ(飛騨ねぎでもよい) 2本

・太白油 適量

・塩 少々

・濃口醤油(好みで) 少々

【作り方】
1.下仁田ねぎは根元の部分と青い部分を切り除く。竹串や千枚通しで満遍なく突き刺して、太白油を全面に塗って薄く塩をふる。

2.ねぎをアルミホイルで包みグリラーに入れて中火で蒸し焼きにする。ねぎをホイルの上から押してみて柔らかくなるまで焼く。

3.ねぎが柔らかくなったらアルミホイルから出す。アルミホイルの中のねぎから出たエキスは捨てずにとっておく。

4.ガス火の上に魚焼き器をのせて強火でねぎを焼く。直火が無理ならグリラーでもよい。外側部分だけを全面焦がす。

5.ねぎの焦げた外側のみに包丁を浅く入れて外側部分を開き、中身を取り出す。一口大に切って外側の中に戻して、3でとっておいたねぎのエキスをかけ、塩を薄くふってあつあつを供する。好みで濃口醤油を垂らしてもよい。

「ねぎと油揚げの早煮」(右)


【材料(2人分)】
・白ねぎ(太くて柔らかいもの) 1本

・油揚げ 1/3枚

・出汁 200cc

・日本酒 大さじ1

・みりん 小さじ1弱

・薄口醤油 小さじ1.5

・一味唐辛子 少々

【作り方】
1.白ねぎは6mm厚さ×4cm長さの斜め切りにする。油揚げは6mm幅×3cm長さに切る。

2.鍋に出汁を入れ、火にかけて調味料を加える。沸いたらねぎと油揚げを加えて炊く。炊くほどに辛みが少なくなり、甘みが増して柔らかくなるが、さっと炊けば食感とねぎの程よい辛みが残る。炊く時間を調整して好みで甘みと辛み、食感のバランスをとる。

3.炊きたてを器に盛り、好みで一味唐辛子を添えて供する。

私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。

六雁(むつかり)

榎園豊治さんプロフィール
銀座並木通りにある日本料理店「六雁」初代料理長であり、この連載の筆者でもある榎園豊治さんは、京都、大阪の料亭・割烹で修業を積み、大津大谷「月心寺」の村瀬明道尼に料理の心を学ぶ。その後、多くの日本料理店で料理長を歴任、平成16年に銀座に「六雁」を立ち上げた。野菜を中心としたコース料理に定評がある。

六雁 むつかり

東京都中央区銀座5-5-19
銀座ポニーグループビル6/7F
電話 03-5568-6266
営業時間 (夜)17時30分~23時 ※土曜日のみ17時~
(営業時間は変更になることもあります。事前に店舗にご確認ください)
URL:http://www.mutsukari.com

六雁 むつかり 料理長、秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。連載でご紹介する料理を手がけてくださる、現料理長・秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。
文/榎園豊治 撮影/大見謝星斗
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