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柔らかく茹でた黒豆さえあれば、酒肴からおやつまでさまざまな料理が楽しめます

2021.12.06

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プロよりおいしく作れる 野菜料理の“ちょっとしたコツ”365 身近な野菜で、プロよりおいしい野菜料理を作ってみませんか? 銀座の日本料理店「六雁(むつかり)」の店主・榎園豊治(えのきぞの・とよはる)さんに、家庭だからこそ実践できる“ちょっとしたコツ”を毎日教わります。一覧はこちら>>

黒豆三昧


黒豆三昧

最近の百貨店は9月後半くらいからおせち料理の受注を始め、「えっ、もう!」という感じですが、さすがに12月になるとおせち料理のことが気になり出しますね。その筆頭といえばやはり黒豆です。今年は読者の皆さまに一品だけでもおいしいおせちを作っていただこうと、実は以前から「黒豆の蜜煮」、「黒豆梅おこわ」と伏線を敷いてきました(笑)。

黒豆というと甘く炊いた蜜煮だけのように思われるかもしれませんが、他にもいろいろな楽しみ方があります。今日は「黒豆“三昧”」ということで“三味”の黒豆料理を紹介します。蜜煮にするための茹でもどす工程ではどうしても皮が破けてしまう黒豆が出てしまいますが、その再利用にもなる料理です。


黒豆三昧

黒豆の蜜煮」でもお話ししましたが、私たちプロは黒豆を炊く場合、豆にシワが寄らないように、皮が破れないようにと細心の注意を払います。ところが、関東ではあえてシワが寄るように炊くこともあります。これはシワが寄った豆に「“シワが寄る”まで(=年をとるまで)ずっと“まめ”で元気でいられるように」という願いを込めてのことです。また、「シワ寄せ(しわよせ)」を「幸せ(しあわせ)」にかけて幸せ黒豆と呼ぶこともあります。ものは言いようといいますが。

皮が破れかけた黒豆は、濃い煮汁で炊くと皮がしまってそれ以上破れが広がらなくなります。それを利用したのが「黒豆の五目豆」です。「黒豆なます」では茹でもどした黒豆を土佐酢に漬けて、下味をつけると同時に豆をしめて皮の破れをふさぎます。黒豆の蜜煮もおいしいですが、豆本来の風味を堪能したかったら「和三盆かけ」がおすすめです。柔らかく茹でもどしただけの黒豆に和三盆糖をかけて召し上がってはどうでしょう。和三盆糖が濃くかかった部分と薄い部分で味にメリハリができ、豆の風味も強く食べ飽きません。皮が破れた箇所も和三盆糖で隠れます(笑)。

黒豆を柔らかく茹でもどす際に皮が破れても、今日の黒豆料理を覚えておけば大丈夫! さあ、おせちの黒豆を炊く準備ができました。今年は炊かないわけにはいきませんね(笑)。シワが寄ろうと寄るまいと、想いを込めて作る黒豆料理は家族を幸せにします。野菜料理を楽しみましょう。


ちょっとしたコツ


・「黒豆和三盆かけ」は、野菜料理をおいしくする7要素中4要素を取り入れている。

◎旨み 塩分 ◎甘み 油分 ◎食感 ◎香り 刺激

・和三盆糖は食べる直前にかける。和三盆糖をかけて時間がたつと黒豆から水分が出て、同じ甘さであっても水っぽく感じ、豆の風味も弱まる。

・「黒豆なます」は、野菜料理をおいしくする7要素中5要素を取り入れている。

◎旨み ◎塩分 ◎甘み 油分 ◎食感 ◎香り 刺激

黒豆を茹でもどした際の茹で汁をベースにした土佐酢を作る。茹で汁に溶け出したアントシアニン系色素が酸によって赤くなる。茹で汁自体には土佐酢のように旨みがないので、削りがつおを加えて旨みが出たらこして使う。

・「黒豆の五目豆」は、野菜料理をおいしくする7要素中7要素を取り入れている。

◎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り ◎刺激

・もどした黒豆を他の食材と同様に最初から煮汁で炊くと、破れた皮がさらにむけてしまう。煮汁が煮つまって濃くなってから加え、弱火でさらに煮つめることで、皮はむけず程よく味がつく。

・五目豆にわさびを添えると、甘みがしまり酒の肴にもなる。







黒豆三昧

「黒豆和三盆かけ(右奥)」


【材料(2人分)】
・柔らかく茹でもどした黒豆 約60粒

・和三盆糖 適量

【作り方】
1.黒豆を柔らかく茹でもどす。黒豆の茹でもどし方については「黒豆の蜜煮」参照。

2.茹でもどした黒豆の汁気をきって器に盛り、和三盆糖を好みの量かける。

「黒豆なます(左奥)」


【材料(2人分)】
・柔らかく茹でもどした黒豆 約20粒

・大根 1/4本

・長いも(6mm角に切る) 5g

・紫カリフラワー(パープルフラワー) 20g

・紫キャベツ 30g

・塩 小さじ1/4

・酢 小さじ1

・土佐酢 約350cc
作りやすい分量:黒豆の茹でもどし汁200cc、酢50cc、みりん50cc、薄口醤油50cc、削りがつお10g

【作り方】
1.黒豆は柔らかく茹でもどす。

2.黒豆の茹でもどし汁で赤い土佐酢を作る。茹で汁をボウルに入れ調味料を加える。削りがつおを加えて5時間ほどおいたらクッキングペーパーでこす。

3.パープルフラワーは茎側から切り込みを途中まで入れ、手で裂いてから包丁で黒豆と同じくらいの大きさに切る。鍋に湯を沸かし、酢を少々(分量外・湯500ccに酢大さじ1/2)加え、パープルフラワーを茹でる。歯ごたえが残るよう堅めに茹でたら、水に放さずざるに上げる。冷めたら1の黒豆と一緒に2の土佐酢に30分漬ける。

4.紫キャベツは3〜4mm幅のせん切りにする。塩をして水が出たら軽く絞って酢を加えてよく混ぜる。

5.大根をすりおろして水気を絞りボウルに入れる。2の土佐酢を好みの量加えて味をつけ、長いも、土佐酢をきったパープルフラワーと黒豆を加えて混ぜる。

6.酢を軽く絞った紫キャベツを器に盛り、その上に5を盛る。

「黒豆の五目豆(手前)」


【材料(作りやすい分量)】
・柔らかく茹でもどした黒豆 150g

・にんじん(10〜12mm角に切る) 60g

・こんにゃく(10〜12mm角に切る) 60g

・昆布(水で戻したものを10〜12mm四方に切る) 40g

・ごぼう(10〜12mm角に切る) 60g

・しいたけ(12mm角に切る) 30g

・サラダ油 小さじ1/2

・ごま油 小さじ1/2

・出汁 900~1000cc

・薄口醤油 大さじ1

・みりん 大さじ1

・砂糖 5g

・わさび 適量

【作り方】
1.にんじん、こんにゃく、ごぼうはそれぞれ下茹でする。昆布は少量の水に1時間ほどつけてもどして切る。

2.フライパンを火にかけてサラダ油とごま油を加え、にんじん、こんにゃく、ごぼう、昆布、しいたけを入れて炒める。油がなじんだら昆布のもどし汁に出汁と合わせて1Lにして加え、強火で煮る。

3.沸いたら調味料を加えて一気に煮汁を煮つめる。煮汁が最初の量の半分くらいになったらフライパンを返しながら煮汁を絡め、煮汁が1/3くらいになったら黒豆を加える。木べらは使わずに鍋を返して混ぜ、再度沸いたら中火にして、時々フライパンを返しながら煮汁を煮つめつつ全体に絡める。煮汁が減るにつれて火力を落とす。

4.煮汁が大さじ2杯程度になったら火からおろし、器に盛ってわさびを添える。

私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。

六雁(むつかり)

榎園豊治さんプロフィール
銀座並木通りにある日本料理店「六雁」初代料理長であり、この連載の筆者でもある榎園豊治さんは、京都、大阪の料亭・割烹で修業を積み、大津大谷「月心寺」の村瀬明道尼に料理の心を学ぶ。その後、多くの日本料理店で料理長を歴任、平成16年に銀座に「六雁」を立ち上げた。野菜を中心としたコース料理に定評がある。

六雁 むつかり

東京都中央区銀座5-5-19
銀座ポニーグループビル6/7F
電話 03-5568-6266
営業時間 (夜)17時30分~23時 ※土曜日のみ17時~
(営業時間は変更になることもあります。事前に店舗にご確認ください)
URL:http://www.mutsukari.com

六雁 むつかり 料理長、秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。連載でご紹介する料理を手がけてくださる、現料理長・秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。
文/榎園豊治 撮影/大見謝星斗
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