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大根なますをプロ直伝のアレンジでリフレッシュ! 人気の小鉢料理に大変身

2021.12.16

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プロよりおいしく作れる 野菜料理の“ちょっとしたコツ”365 身近な野菜で、プロよりおいしい野菜料理を作ってみませんか? 銀座の日本料理店「六雁(むつかり)」の店主・榎園豊治(えのきぞの・とよはる)さんに、家庭だからこそ実践できる“ちょっとしたコツ”を毎日教わります。一覧はこちら>>

大根なます3種


大根なます3種

今回は大根なますを3種紹介します。金時にんじんと合わせた紅白なますは大根なますの定番で、これまでも「干し柿なますの煮こごり」などに使ってきました。おせち料理にも必ずといっていいほど入る紅白なますですが、おせち料理の不人気ランキングでは常に上位だとか。

市販されているおせちのなますは日持ちを考えて強い甘酢に漬けているのでかなり酸っぱく、味が酸味と甘みだけなので舌の肥えた現代人には単調に感じるのも原因だと思われます。加えて、「焼ききのこの柚子おろし和え」でもお話しした、大根の硫黄臭も大きく影響していると予想されます。


家庭で作れば酸味は好みに調整できますし、味の単調さとにおいの問題は今日お教えする工夫で改善できます。来年のおせち、紅白なますくらいは作らないわけにはいきませんね(笑)。

それからもう一つ、「大根の利休和え」も紹介します。大根を、黒ごまとシナモンを使った衣で和えます。ごまとシナモンが魅惑的な香気を放ち、大変おいしいです。よくある創作料理のようにも見えますが、実は『大根一式料理秘密箱』(天明5年(1785)刊)に「利休あへ大根」として載っており、シナモン(原文では肉桂の粉)を加える理由について、大根は「悪しきにほひ(におい)出(いず)るゆへ(え) これを入るれば くさみ出申さず」と記され、大根の臭みを消すのに利用されていて驚きです。

シナモンは日本には8世紀前半に伝来し、正倉院宝物にも「桂心(けいしん)」という名で残されています。樹木としては江戸時代の享保年間に漢方薬の一つとして入ってきたようです。「利休あへ」の利休は「なすの利久煮」でも触れましたが、千利休が料理にごまを多用したと伝えられることによります。

時代とともに、人の嗜好も変わります。昔からの伝統的料理を引き継いでいくことは大切ですが、人々に好まれなければ必ず廃れていきます。しかし、そこに工夫を加えれば現代人にも好まれる料理にすることができます。家族がおいしく食べてくれるための一工夫で野菜料理を楽しみましょう。


ちょっとしたコツ


・「大根なます3種」は、3つで野菜料理をおいしくする7要素中7要素を取り入れている。

◎旨み ◎塩分 ◎甘味 ◎油分 ◎食感 ◎香り ◎刺激

・日持ちさせたければ、濃い甘酢に漬けるのではなく、薄めの甘酢で二度漬けすればよい。

ドライトマトやドライみかんを加えることで生の状態にはない凝縮した旨みや風味が加わり、味にメリハリも出る。大根の臭みを軽減する効果もある。

・旨みをさらに強くしたければ、甘酢に使う昆布出汁の昆布の量を増やす







大根なます3種

「紅白なますドライトマト風味(左)」


【材料(3人分)】
・大根の甘酢漬け 80g

・金時にんじんの甘酢漬け 40g

・ドライトマト(フルーツトマトを使ったもの。2×3cmくらいの無塩) 3〜4個

・塩 適量

・甘酢 適量
昆布出汁(水1L に昆布10g)450cc、酢300cc、砂糖100g

【作り方】
1.大根と金時にんじんを甘酢漬けにする。大根を7mm幅×3cm長さ×1.5mm厚さの短冊切りにし、濃度3%の塩水に10分ほどつける。大根がしんなりしたらざるに上げて水気をきり、甘酢に1時間以上漬けておく。金時にんじんを7mm幅×3cm長さ×1mm厚さの短冊切りにしさっと茹で、大根同様、甘酢に漬ける。日持ちさせたい場合は、昆布出汁の量を50cc増やして450ccにした、味が薄めの甘酢に1時間漬けた後、ざるにあけて酢をきり軽く絞って、再度、新しい甘酢(薄め)に30分以上漬け直すとよい。

2.ドライトマトを2mm幅×1cm長さくらいに切る。

3.ボウルに甘酢を軽くきった大根とにんじんを入れてよく混ぜる。ドライトマトも加えて混ぜ器に盛る。

「大根のみかんなます(右)」


【材料(3人分)】
・大根の甘酢漬け 100g

・ドライみかん(温州みかんを使ったもの) 4〜5房

・塩 適量

・甘酢 適量

・温州みかんの搾り汁 1個分

【作り方】
1.大根の甘酢漬けは「紅白なますドライトマト風味」と同じ。

2.ドライみかんを2mm幅×1.5cm長さくらいに切る。

3.甘酢をきった大根をボウルに入れ、みかんの搾り汁を回しかけてよく混ぜる。5分ほどおいたらドライみかんを加え混ぜて、軽く汁気をきって器に盛る。みかんの皮をおろし金で削ってふりかけてもよい。

「大根の利久和え(上)」


【材料(3人分)】
・大根 100g

・塩 少々

・くこの実 15粒

・いりごま(黒)45g

・甘酢 大さじ1と2/3

・薄口醤油 小さじ2

・砂糖 小さじ1

・シナモン 少々

【作り方】
1.大根は3mm厚さのいちょう切りにして薄く塩をする。5〜6分おいて水分が出てきたら、軽くもんで水分をよく絞りボウルに入れる。甘酢(分量外)を回しかけてよく混ぜ、1分ほどおいたら甘酢を軽く絞る。

2.くこの実は甘酢(分量外)を少量まぶして柔らかくする。

3.和え衣を作る。いりごまをすり鉢に入れペースト状になる前のまだ粒が少し残るくらいの状態までする。甘酢と調味料を加えて調味し、シナモンを好みの量加えて混ぜる。

4.3に大根を入れ、和え衣を均一にまぶしからめる。器に盛ってくこの実を散らす。

私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。

六雁(むつかり)

榎園豊治さんプロフィール
銀座並木通りにある日本料理店「六雁」初代料理長であり、この連載の筆者でもある榎園豊治さんは、京都、大阪の料亭・割烹で修業を積み、大津大谷「月心寺」の村瀬明道尼に料理の心を学ぶ。その後、多くの日本料理店で料理長を歴任、平成16年に銀座に「六雁」を立ち上げた。野菜を中心としたコース料理に定評がある。

六雁 むつかり

東京都中央区銀座5-5-19
銀座ポニーグループビル6/7F
電話 03-5568-6266
営業時間 (夜)17時30分~23時 ※土曜日のみ17時~
(営業時間は変更になることもあります。事前に店舗にご確認ください)
URL:http://www.mutsukari.com

六雁 むつかり 料理長、秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。連載でご紹介する料理を手がけてくださる、現料理長・秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。
文/榎園豊治 撮影/大見謝星斗
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