プロよりおいしく作れる 野菜料理の“ちょっとしたコツ”365 身近な野菜で、プロよりおいしい野菜料理を作ってみませんか? 銀座の日本料理店「六雁(むつかり)」の店主・榎園豊治(えのきぞの・とよはる)さんに、家庭だからこそ実践できる“ちょっとしたコツ”を毎日教わります。
一覧はこちら>> 天井絵おせち、ゆり根最中
野菜おせち2日目です。昨日のシンプルな美しさとは打って変わって、計39品の料理をオリジナルの天井絵お重に豪華に盛りつけました。天井絵とは天井に描かれている絵で、日本でも安土桃山時代以後、時々を代表する画家によって極彩色もしくは墨で描かれ寺院や宮殿などの天井を飾りました。天井絵に倣って四角い空間を区切って、絵の代わりに様々な料理を盛り込むという趣向です。
今日は1段目を紹介します。料理の内容は次のようになります。
上の列、左から
1.
紅白なますドライトマト風味2.卯の花酢いり信太巻き(開いた油揚げで、「
生姜の甘酢漬け」のせん切りを芯にした「
おからの酢炊き」を巻く。油揚げの炊き方は本日紹介)、かんぴょうゆば巻き(茹でた三つ葉を芯にした「
煮かんぴょう」を平ゆばで巻く。ゆばの焼き方は本日紹介)
3.
れんこんいとこ煮、
くわい揚げ煮、
金時にんじん梅煮、
梅型に飾り切りした長いも白煮中の列、左から
4.
ごぼう山椒味噌煮、
金柑ビネガー煮、
梅型に飾り切りした長いも白煮5.
擬製豆腐、ゆり根最中柚子味噌・ふきのとう味噌(本日紹介)
6.
いもきんとん、ゆり根茶巾のし梅(12/24紹介予定)、
栗蜜煮下の列、左から
7.
たたきごぼう、
酢蓮8.
こんにゃくのピリ辛煮、ぜんまい信太巻き(さっと茹で直したぜんまいの水煮を開いた油揚げで巻いて、もどしたかんぴょうで結び、「
ぜんまいの煮もの」と同じ煮汁で炊く)
9.
豆かりんとうこれまでお教えした料理やその展開がほとんどです。全品でなくとも数品だけでも手作りおせちにチャレンジして野菜料理を楽しみましょう。
ちょっとしたコツ
・「ゆり根最中」は、野菜料理をおいしくする7要素中6要素を取り入れている。
◎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り 刺激
・おせち料理に入れる場合は、お重の中は湿度が高くゆり根が水分を吸うので、少しだけ堅めに蒸す。
「ゆり根最中」
【材料(4人分)】・ゆり根(大きめの鱗片) 16枚
・玉味噌(白) 大さじ2
作りやすい分量:西京味噌500g、卵黄5個分、砂糖30g、日本酒200cc 「
生姜味噌」参照
・柚子 少々
・ふきのとう 1/2個
・サラダ油 適量
【作り方】1.姿のままおがくずで包んで売られているゆり根の場合、表面についたおがくずをよく洗い鱗片を外す。ゆり根の下処理は「
ゆり根のかき揚げ、揚げ出し」参照。大きめの鱗片を選び、形を整えたら、3〜4分蒸す。
2.ふきのとう味噌を作る。ふきのとうは堅い皮をむき縦2つに切って、サラダ油をひいたフライパンで炒める。火が通ったらクッキングペーパーで包んで指で押さえて余分な油を除く。みじん切りにして大さじ1の玉味噌と混ぜる。
3.柚子味噌を作る。玉味噌大さじ1をボウルに入れる。柚子の皮の黄色い部分をおろし金で削って、先を切った茶筅で玉味噌に好みの量をふりかけてよく混ぜる。柚子の絞り汁も好みで適量加えてもよい。
4.同じくらいの大きさの鱗片を2個1組にして合計8組作る。片方のくぼみに柚子味噌をのせてもう一方の鱗片を合わせる。ふきのとう味噌も同様に。「ひと目でわかるプロセス&テクニック」の写真参照。
「信田巻き」の油揚げの炊き方
【材料(4〜5人分)】・油揚げ 3枚
・出汁 500cc
・砂糖 大さじ1
・みりん 小さじ1
・濃口醤油 大さじ1と1/3
【作り方】1.油揚げは2枚に開いてボウルに入れ熱湯をかけ、ざるに上げて湯をきり、冷めたら水気をよく絞る。油臭くないものであれば油抜きせずにそのまま使用してもよい。
2.鍋に油揚げを入れ、出汁を注いで火にかけ調味料を加える。沸いたら中火にして15分くらい炊いて煮汁を煮つめていく。煮つめ具合は好みで。
「かんぴょうゆば巻き」のゆばの焼き方
【材料】・生ゆば 煮かんぴょうが巻ける量
・煮かんぴょう 適量
・三つ葉 適量
・小麦粉 少々
・水 少々
・サラダ油 少々
【作り方】1.生ゆばを巻きすの上に広げて、広げた煮かんぴょうを横方向に並べる。かんぴょうの上に茹でた三つ葉をのせて芯にして海苔巻きを巻く要領でゆばで巻く。少量の小麦粉を水で溶いたものをゆばの端に塗って巻き終わりを留める。
2.テフロン加工のフライパンを火にかけてごく少量のサラダ油をひき、クッキングペーパーで伸ばす。1のゆば巻きの巻き終わり部分を下にしてフライパンに入れ、上から軽く押さえて焼きつける。フライパンの上で少し転がして別の面にも焼き目をつける。これを繰り返して全面に均一な焼き目をつける。
※乾燥の平ゆばを使う場合は、平ゆばをバットに入れて水を注ぎ、5分ほどおいてむらなくもどす。湯でもどすと風味が飛ぶ。もどったらクッキングペーパーの上に広げて、上からもクッキングペーパーをのせてはさみ水分を除いて用いる。
私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。 六雁(むつかり)
榎園豊治さんプロフィール銀座並木通りにある日本料理店「六雁」初代料理長であり、この連載の筆者でもある榎園豊治さんは、京都、大阪の料亭・割烹で修業を積み、大津大谷「月心寺」の村瀬明道尼に料理の心を学ぶ。その後、多くの日本料理店で料理長を歴任、平成16年に銀座に「六雁」を立ち上げた。野菜を中心としたコース料理に定評がある。
東京都中央区銀座5-5-19
銀座ポニーグループビル6/7F
電話 03-5568-6266
営業時間 (夜)17時30分~23時 ※土曜日のみ17時~
(営業時間は変更になることもあります。事前に店舗にご確認ください)
URL:
http://www.mutsukari.com連載でご紹介する料理を手がけてくださる、現料理長・秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。 文/榎園豊治 撮影/大見謝星斗