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今年のバレンタインデーは、温かいぜんざいで。フルーツの酸味が爽やかです

2022.02.14

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プロよりおいしく作れる 野菜料理の“ちょっとしたコツ”365 身近な野菜で、プロよりおいしい野菜料理を作ってみませんか? 銀座の日本料理店「六雁(むつかり)」の店主・榎園豊治(えのきぞの・とよはる)さんに、家庭だからこそ実践できる“ちょっとしたコツ”を毎日教わります。一覧はこちら>>

ぜんざい2種 いちごぜんざい、粟ぜんざい


今年のバレンタインデーは、温かいぜんざいで。フルーツの酸味が爽やかです

今日はバレンタインデーですね。子供の頃はもらえもしないチョコレートを今年こそはと夢見たものです(笑)。バレンタインデーといえばチョコレート、クリスマスといえばフレンチ、昔はそうだったように記憶しますが、今は少し変わったようです。

クリスマスにあえて私どもの和食店をご予約くださる大人のお客さまも多く、ずいぶん早くから予約がいっぱいになります。ご期待に応えるべく大人なクリスマスの趣向に知恵を絞りますが、それはバレンタインデーでも同じです。


バレンタインデーにチョコレートを贈る習慣はご存じのとおり日本独自のもので、諸説ありますが、いずれにしてもチョコレート会社がキャンペーンを行ったのが発端のようです。ですから、チョコレートではなく和の素材で工夫します。

チョコレートの代わりにあんを使ったぜんざいを2種紹介します。いちごを加えるのがポイントで、重たくなりがちなぜんざいを、いちごの酸味が軽やかにし香りも豊かになります。いちごの赤い色と形がどこかハートを連想させます。

今年のバレンタインデーは、温かいぜんざいで。フルーツの酸味が爽やかです

日本のバレンタインデーは、女性から男性にチョコレートを渡して愛の告白をする日ということですが、ぜんざいはできたてが一番なので、女性が自宅に好きな人を招くか、その人の家に行って作らなくてはなりません。告白にはあまり向かないかもしれませんね。

ぜんざいは「善哉もち」の略で、関西では粒あんを使ったおしるこのことをさし、汁気がない状態のものを「亀山(かめやま)」と呼びます。関東ではこしあんと粒あんのどちらで作っても、汁気があるものは「しるこ」と呼び、粟餅(あわもち)・白玉餅などに汁気のないあんをかけたものを「ぜんざい」と呼びます。

善哉は「よきかな」という意味で、ほめ喜んで発する言葉としても使われます。チョコレートには縁がありませんでしたが、そんな私でも妻と出会えました。善哉(よきかな)。今日は男女がバレンタインデーで盛り上がり、“チョコ”っとうらやましいけど善哉。野菜甘味を楽しみましょう。


ちょっとしたコツ


・「いちごぜんざい」は、野菜料理をおいしくする7要素中4要素を取り入れている。

◎旨み 塩分 ◎甘み 油分 ◎食感 ◎香り 刺激

・いちごは2回に分けて加える。最初のいちごであんに香りを移し、2回目のいちごは香りと酸味、食感を生かすためほとんど火を通さない。

・「粟ぜんざい」は、野菜料理をおいしくする7要素中4要素を取り入れている。

◎旨み 塩分 ◎甘み 油分 ◎食感 ◎香り 刺激

・通常、もち粟は蒸すだけで味をつけないが、蒸している途中で蜜をふりかけるのがポイント。もち粟に薄く甘みがつくので、あんの甘みも少なくて済み、粟自体のおいしさが味わえる。







今年のバレンタインデーは、温かいぜんざいで。フルーツの酸味が爽やかです

「いちごぜんざい」(右)


【材料(3人分)】
・こしあん(赤)300g

・水 150~180cc(好みで)

・グラニュー糖 30g(好みで)

・いちご 4~5個

・りんご(紅玉) 適量

・干しいも 適量

・ココナッツロング(ローストする) 適量

【作り方】
1.こしあんは「水羊羹」を参照して作る。市販品のこしあん(加糖)を使ってもよい。

2.いちごはヘタを取って縦に4~6等分する。りんごは皮付きのまま5mm角に切る。干しいもはオーブントースターで焼いて5mm幅×2cm長さに切る。

3.こしあんを鍋に入れ、水とグラニュー糖を好みの量加えてよく混ぜ火にかける。沸いたらいちごの半量を加えて1分30秒~2分炊く。

4.残りのいちごと干しいもを加えたら、ひと混ぜして鍋を火からおろし椀に盛る。りんごとココナッツロングを添えて供する。

「粟ぜんざい」(左)


【材料(3人分)】
・もち粟 100g

・水 200cc

・白蜜(水2:グラニュー糖1で合わせて1割ほど煮つめたもの) 50cc

・こしあん 適量

・いちご 3個

・キウイ 適量

・りんご(紅玉) 適量

・金柑ビネガー煮 適量 「金柑ビネガー煮」参照

【作り方】
1.もち粟を洗う。もち粟が流れ出ないように目の細かいざるに入れて、水をためたボウルにつける。流水を注ぎながら濁りが取れるまで洗い、水に30分つけてざるに上げる。

2.もち粟をふやかす。もち粟を鍋に入れ2倍量の水を注いで火にかける。沸いたら火を弱め2分ほど炊いて、粟がぽってりとろっとしてきたら、火から下ろす。「ひと目でわかるプロセス&テクニック」参照。

3.もち粟を蒸す。ざるにガーゼを広げて、その上にもち粟を広げる。蒸気が通りやすいように真ん中部分はくぼませておく。蒸気が立った蒸し器にざるごと入れて中火で蒸す。10分蒸したら一度蒸し器からざるを取り出して、ガーゼを持ってもち粟だけをボウルにあける。用意しておいた白蜜を加えて、白蜜が全体に回るようにしゃもじで混ぜる。再度ガーゼを敷いたざるにもち粟を戻して蒸し器に入れ、中火で10分蒸す。

4.こしあんは「水羊羹」を参照して作る。市販品のこしあん(加糖)を使ってもよい。水(分量外)を加えて好みの堅さに調整する。

5.いちごはヘタを取って縦に4~6等分する。りんごは皮付きのまま5mm角に切る。キウイは皮をむいて5mm角に切る。金柑ビネガー煮は縦に4等分する。

6.もち粟が蒸しあがったら器に盛り、電子レンジで温めた4のこしあんをかけ、いちご、りんご、キウイ、金柑ビネガー煮を添えて供する。

私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。

六雁(むつかり)

榎園豊治さんプロフィール
銀座並木通りにある日本料理店「六雁」初代料理長であり、この連載の筆者でもある榎園豊治さんは、京都、大阪の料亭・割烹で修業を積み、大津大谷「月心寺」の村瀬明道尼に料理の心を学ぶ。その後、多くの日本料理店で料理長を歴任、平成16年に銀座に「六雁」を立ち上げた。野菜を中心としたコース料理に定評がある。

六雁 むつかり

東京都中央区銀座5-5-19
銀座ポニーグループビル6/7F
電話 03-5568-6266
営業時間 (夜)17時30分~23時 ※土曜日のみ17時~
(営業時間は変更になることもあります。事前に店舗にご確認ください)
URL:http://www.mutsukari.com

六雁 むつかり 料理長、秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。連載でご紹介する料理を手がけてくださる、現料理長・秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。
文/榎園豊治 撮影/大見謝星斗
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