菜花のカツレツ、焼き菜花
菜花は1月〜3月が旬で、早春の季節感が楽しめます。これまでに「
わらびと新春野菜の酢のもの、菜花とゆばの辛子酢味噌かけ」「
菜花とたたきいもの辛子和え、辛子味噌漬け」「
菜花の昆布押し、わさび漬け和え」を紹介してきました。お試しいただいたでしょうか?
食用菜花には在来種と西洋種があり、在来種は葉が黄緑色で柔らかく、つぼみと茎と葉を利用します。もともと千葉県で切り花や養蜂用に栽培されていたものを、苦みを抑えて野菜へと品種改良したものです。京都の菜の花漬けは在来種の切り花用の「伏見寒咲花菜(ふしみかんざきかさい)」の花蕾を漬けたもの。
一方、西洋種は葉色が濃く、葉が厚くて主に茎と葉を利用します。在来種に比べて苦みが少なく甘みがあります。「江戸の灯りは伊勢で持つ」といわれたほど菜種油のための栽培が盛んだった三重県の三重菜花がそうです。採油用の種を取るために増産し、残った茎や若芽を食用にしたのが始まりです。
これまでは在来種を使った料理でしたが、今回は三重菜花を使って「菜花のカツレツ、焼き菜花」をお教えします。葉が厚くて茎と葉がしっかりしているので、カツレツにぴったりでビールにもよく合います。
カツレツとは明治時代にフランスから伝わった「コートレット」を日本風にアレンジしたもので、コートレットの英訳「cutlet(カットレット)」からきています。もともとは肉にパン粉をつけてバターで炒め焼きにしたものですが、後に粗めのパン粉をつけた揚げ焼きになり、現在のカツレツになりました。
わざわざカツレツにしなくてもフライでもいいのではと思われるかもしれませんが、油で揚げてはいけません。菜花の水分と食感が失われ、おいしくなくなります。ぜひカツレツにしてください。「カツレツはカツゼツ(滑舌)悪いと言いにくい」(笑)。今日も野菜料理を楽しみましょう。
ちょっとしたコツ
・「菜花のカツレツ」は、野菜料理をおいしくする7要素中7要素を取り入れている。
◎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り ◎刺激
・先に下茹でしてから焼くことで、余分な油を吸収せず軽い仕上がりとなる。
・菜花にはほろ苦さがあるが、水にさらし過ぎると甘みや風味が抜けてしまうので注意。
・揚げるのではなくパン粉をつけて焼くことで、菜花の程よい食感が残る。適度な油分が加わり苦みを感じにくくなる。
・レーズンの甘みとカシューナッツの旨みが全体の味に奥行きを出す。
・「焼き菜花」は、野菜料理をおいしくする7要素中7要素を取り入れている。
◎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り ◎刺激
・下茹でした菜花は、フライ返しで押さえながら焼いて少し焦げ目をつけると、余分な水分が飛んで味が凝縮し香ばしさも加わる。
・ドライトマトと松の実を粒マスタードで和えてしばらくおくと味がなじみ、和えてすぐよりもおいしくなる。
「菜花のカツレツ」
【材料(2〜3人分)】・三重菜花(在来種でもよい) 1束
・塩 少々
・こしょう 少々
・レーズン 適量
・カシューナッツ 適量
・パン粉(細かいもの) 適量
・卵 1個
・薄力粉 35g
・マーガリン(ベジタリアンでなければバターでもよい) 30g
【作り方】1.三重菜花は15秒ほど茹でて水に放し、1分ほど水につけたままにして苦みを軽く抜く。ざるに上げて絞り、クッキングペーパーに挟んで水気を除く。
2.レーズンとカシューナッツは5mm角に刻む。
3.卵をボウルに入れて泡立て器でよく溶き、薄力粉を加えて均一になるように混ぜる。
4.菜花に薄く塩こしょうをして3をつけ、バットに並べる。レーズンとカシューナッツを適量つけ、パン粉を薄くふりかける。
5.フライパンを中火にかけてマーガリンを溶かし、4の菜花を入れる。フライ返しで押さえながら焼いて、両面がカリッとしてきつね色になったら取り出して器に盛る。
「焼き菜花」
【材料(2〜3人分)】
・三重菜花(在来種でもよい) 1束
・塩 少々
・こしょう 少々
・サラダ油 大さじ1
・高菜の粒マスタード(一般的な粒マスタードでもよい) 10g
・ドライトマト(フルーツトマトを使った無塩のもの。なければ普通の無塩でもよい) 5g
・松の実 5g
【作り方】1.三重菜花は「菜花のカツレツ」と同じように茹でて水気を除く。
2.ドライトマトは米粒大に、松の実は1粒を3つに切る。高菜の粒マスタードをボウルに入れて、ドライトマトと松の実を加えてよく混ぜる。
3.フライパンを火にかけてサラダ油をひき、薄く塩こしょうをした菜花を入れる。フライ返しで押さえながら焼いて、両面に少し焦げ目がついたら取り出して器に盛る。2をかけて供する。
私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。