セロリ酒肴3種 ごま和え、南蛮漬け、梅炒め
今日はセロリを使った酒肴を3つ紹介します。洒落た副菜としてもきっと箸が進むでしょう。セロリは全国の各産地で栽培・収穫され、1年を通して出荷されるため旬がわかりにくい野菜ですが、露地ものが出回るのは春または秋になります。
セリ科オランダミツバ属の植物で、16世紀末に加藤清正(かとう・きよまさ)が朝鮮出兵の際に持ち帰った「清正人参(きよまさにんじん)」と呼ばれる中国種が、日本に伝わった最初のセロリといわれています。現在のセロリに近い品種は、オランダ人によって長崎に持ち込まれた西洋種で「オランダ三つ葉」と呼ばれました。
当時の日本人には香りが強過ぎたのか、食用としては普及せず、戦後、食の欧米化が進むとともに需要が増して、本格的に栽培されるようになりました。
現在、主に流通しているものは香りの弱い「中間種」と呼ばれる品種です。株のままでは大きいのでスーパーマーケットなどでは2~3枝ずつにして売られています。であれば、特徴を知って用途に合わせて選ばなければ損ですね。
株の外側ほど茎の根元が幅広で緑が濃い部分が多く、筋も堅いので除く必要があります。全体的に太くしっかりして香りも強いので、煮ものや炒めものに向いています。株の中心部は光が当たらないために白からクリーム色で筋も除く必要はありません。柔らかく香りも穏やかで生食に向きます。
茎の根元の切り口にスが入っているものは、収穫が遅れて堅くなっている可能性が高く、筋張っていることが多いので避けます。茎の部分に張りがあり、堅くてしなりにくく、葉の緑が鮮やかなものが新鮮です。葉が黄みを帯びたものは、鮮度が落ちています。買ってきたらすぐに茎と葉を切り分けて、別々に冷蔵庫で保存します。
SMAPがカバーして大ヒットした『セロリ』(作詞・作曲:山崎まさよし、編曲:清水信之)に、人それぞれの好みの違いの象徴としてセロリが取り上げられています。パクチーもそうですが、香りが強い野菜はなんとなく敬遠される傾向があります。しかし、一度そのおいしさを知るとやみつきになることも。
もしご家族にセロリ嫌いがいるようでしたら、おいしいセロリ料理を作って新たな世界を教えてあげてください。『セロリ』の“サビ”ではありませんが「がんばってみてよ 少しだけ」(笑)。今日も野菜料理を楽しみましょう。
ちょっとしたコツ
・「セロリのごま和え」は、野菜料理をおいしくする7要素中6要素を取り入れている。
◎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り 刺激
・外側の茎は筋を除いて薄めに切る。柔らかい中心部は筋を除く必要はなく、そのまま少し厚めに切って用いる。
・セロリは茹でて水に放すと香りが抜けてしまう。茹でたらざるに上げて、冷たい漬け出汁に浸けて冷ます。
・「セロリの南蛮漬け」は、野菜料理をおいしくする7要素中7要素を取り入れている。
◎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り ◎刺激
・セロリは食感を大切にし、揚げ過ぎない。
・土佐酢につけ過ぎるとセロリがへたってしまうので注意。
・「セロリの梅炒め」は、野菜料理をおいしくする7要素中7要素を取り入れている。
◎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り ◎刺激
・セロリは食感が残るように炒める。
・揚げじゃがいもと和えることで、油分としゃりしゃりした食感が加わる。和えたらすぐに供する。
「セロリのごま和え」(左)
【材料(2〜3人分)】・セロリ(筋を取る) 70g
・漬け出汁
出汁180cc、塩0.3g、薄口醤油12cc、日本酒5cc
・白いりごま(市販品を軽くいり直す) 大さじ2
・出汁 大さじ1
・薄口醤油 小さじ1/2
【作り方】1.セロリは筋が堅い場合は筋を除く。3cmほどの長さにして2mm厚さに切る。
2.漬け出汁を作る。ボウルに出汁を入れ調味料を加えて混ぜ、冷蔵庫で冷やす。
3.鍋に湯を沸かしてセロリを入れ、さっと茹で2の漬け出汁に10分ほどつける。つけすぎると香りが抜ける。セロリの香りが得意でない場合は長めにつけるとよい。
4.ごまを香ばしくいり直してすり鉢でする。「ひと目でわかるプロセス&テクニック」の写真のように、ところどころにごまの粒がわずかに残るくらいにすったら、出汁と薄口醤油を加えてよく混ぜる。
5.絞ってさらにクッキングペーパーで汁気を除いたセロリを4に加え、ごま衣をからめて和え、器に盛る。
「セロリの南蛮漬」(中)
【材料(2人分)】・セロリ(筋を取る) 40g
・揚げ油 適量
・土佐酢 100cc
出汁4:薄口醤油1:みりん1:酢1の割合
・赤唐辛子(種を抜いて輪切りにする) 1/4本
【作り方】1.セロリは茎が太いものを選ぶ。筋を除いて1cm角×4cm長さに切る。
2.フライパンに揚げ油を入れて火にかけ、170℃に熱する。セロリを入れて20秒ほど揚げ、クッキングペーパーに上げる。余分な油を除いたら、赤唐辛子を加えた土佐酢に漬ける。30分ほどつけたら、一緒につけた赤唐辛子とともに器に盛る。
「セロリの梅炒め」(右)
【材料(2〜3人分)】・セロリ(筋を取る) 75g
・サラダ油 小さじ1
・梅干し(中) 1個
・じゃがいも 1/3個
・揚げ油 適量
・塩昆布(みじん切りにする) 少々
【作り方】1.セロリは茎が太いものを選ぶ。筋を除いて3.5cm長さ×6mm幅の斜め切りにする。
2.じゃがいもは皮をむいて櫛刃をつけたスライサーで2mm角×4cm長さにスライスする。水に放してでんぷんを流し、ざるに上げて水気を切る。乾いた布巾で挟んでさらに水分を除く。165℃の揚げ油で薄いきつね色にカリッと揚げ、クッキングペーパーに広げて余分な油を除く。
3.フライパンにサラダ油をひき、セロリを入れて炒める。セロリに油がなじんだらちぎった梅肉を加え、セロリの食感が失われないように手早く炒める。
4.セロリに梅肉がからんだら火からおろす。塩昆布を加えて混ぜ、2のじゃがいもと和えて器に盛る。
私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。