プロよりおいしく作れる 野菜料理の“ちょっとしたコツ”365 身近な野菜で、プロよりおいしい野菜料理を作ってみませんか? 銀座の日本料理店「六雁(むつかり)」の店主・榎園豊治(えのきぞの・とよはる)さんに、家庭だからこそ実践できる“ちょっとしたコツ”を毎日教わります。
一覧はこちら>> 新じゃがいもの揚げ煮
小さくころころとして、透き通るような肌の新じゃがいもが出回り始めました。じゃがいもは保存がきくので1年中出回っていて、旬がわかりにくいですね。秋にじゃがいも料理(「
じゃがいもの蓑揚げ」、「
じゃがいもの梨もどき」、「
じゃがいものすり団子汁」、「
いも天の吹き寄せ」)を多数紹介したように、一般的なじゃがいもは10月~11月に収穫されます。
じゃがいもは秋の収穫後に、貯蔵して熟成させます。一方、新じゃがいもは収穫後すぐに出荷され、貯蔵しない分、水分をたっぷり蓄えています。薄くて柔らかく、土の香りをまとうような皮の風味は、初ものならではです。出回る時期は3月~6月頃(鹿児島県、長崎県など暖かい地方で冬に植えられたもの)と9月~10月頃(北海道などで春に植えられたもの)の2回。
じゃがいもは冷暗所で3か月ほど保存が可能ですが、新じゃがいもは水分量が多いため、長期保存できません。保存する場合は低温に弱いので日の当たらない場所で常温保存します。名前のとおり、新鮮さを味わうのが新じゃがいも、必要な分をその都度買って、すぐに食べきりましょう。
指でこするだけで皮がむけてしまうほど薄いので皮ごと食べられ、水分を多く含むので早く火が通ります。新じゃがいもは若々しい香りを皮の内側に封じ込めるようにするのがポイントです。
皮ごと味わえる揚げものや煮ものにするのはいかがでしょう。ビタミンCなどの栄養素は皮の近くに多く含まれるので、効果的に栄養を摂取できます。
じゃがいも好きは数あれど、じゃがいも“信者が”好きなのは“新じゃが”(笑)。今日も野菜料理を楽しみましょう。
ちょっとしたコツ
・「新じゃがいもの揚げ煮」は、野菜料理をおいしくする7要素中6要素を取り入れている。
◎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り 刺激
・揚げ煮には、切らずにそのまま使える小粒の新じゃがいもがむいている。
・下揚げでほぼ火が通るので、少なめの煮汁で一気に炊いて、煮つめながら新じゃがいもにからめる。
・薄い皮でもその食感が気になるという場合は、揚げてすぐに竹串を使って皮をむく。
・揚げる代わりに、蒸した新じゃがいもを油で炒めてから炊いてもよい。
・仕上げに粉山椒やこしょうを好みでふってもよい。
「新じゃがいもの揚げ煮」
【材料(4人分)】・新じゃがいも(ピンポン玉くらいの大きさ) 250g
・揚げ油 適量
・出汁 250cc
・日本酒 大さじ2
・砂糖 小さじ1
・みりん 小さじ1
・薄口醤油 小さじ1/2
・濃口醤油 小さじ1/2
【作り方】1.フライパンに揚げ油を入れて160℃に熱する。新じゃがいもを入れて8分ほど揚げる。竹串を刺して通ったら油から上げる。
2.鍋にじゃがいもと出汁、調味料をすべて入れて火にかける。沸いたら、鍋のまわりについた煮汁が焦げないくらいの中火にして、沸かしながら一気に煮汁を煮つめる。途中で鍋を返しながらじゃがいも全体に煮汁をからめていく。
3.「ひと目でわかるプロセス&テクニック」の写真くらいに煮汁を煮つめたら鍋を火からおろし、器に盛って供する。
私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。 六雁(むつかり)
榎園豊治さんプロフィール銀座並木通りにある日本料理店「六雁」初代料理長であり、この連載の筆者でもある榎園豊治さんは、京都、大阪の料亭・割烹で修業を積み、大津大谷「月心寺」の村瀬明道尼に料理の心を学ぶ。その後、多くの日本料理店で料理長を歴任、平成16年に銀座に「六雁」を立ち上げた。野菜を中心としたコース料理に定評がある。
東京都中央区銀座5-5-19
銀座ポニーグループビル6/7F
電話 03-5568-6266
営業時間 (夜)17時30分~23時 ※土曜日のみ17時~
(営業時間は変更になることもあります。事前に店舗にご確認ください)
URL:
http://www.mutsukari.com連載でご紹介する料理を手がけてくださる、現料理長・秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。 文/榎園豊治 撮影/大見謝星斗