たけのこ三昧
たけのこが旬真っ盛りです。京都府山城地区で採れる、皮が黄金色に輝く朝掘り白子たけのこが、今頃になると話題にのぼります。粘土質の地表にわらを敷き、盛り土をするなど手をかけ育てたたけのこは、高値で取り引きされます。非常に柔らかく、えぐみやあくが少ないので、掘りたてはその場で刺し身で食すこともできるほどです。
私も関西にいましたので山城地区のたけのこのおいしさはよく知っていますし、この時期は朝早く起きて山城までたけのこを買いに行っていました。帰路の途中で店に電話をかけ湯を沸かしておくよう指示し、帰るとすぐに茹でたものです。
東京に来てからも航空便で取り寄せたことがありましたが、記憶にある山城の白子たけのことは少し違いました。「
たけのこの煮もの」でもお話ししたように、一にも二にも鮮度が命で、店に到着する頃にはえぐみが生じていたのです。
今は山城地区産だけに固執するのではなく、東京近郊の掘りたてのものも使っています。たけのこに限らず、野菜は採りたてに尽きます。
竹は意外にもイネ科に属し、たけのこを食用としているのは日本、中国、韓国などの限られた国だけです。温暖な地域に多く生え、その種類は60種類以上あるといわれますが、食用になるのは「孟宗竹(もうそうちく)」をはじめとして、「淡竹(はちく)」や「真竹(まだけ)」、「根曲がりたけ」、「寒山竹(かんざんちく)」など、数種類だけです。
中でも孟宗竹は大きくて実が白く柔らかで、えぐみも少なく甘みがあります。旬は3月~4月です。淡竹や真竹は4月中旬〜6月、根曲がりたけは5月中旬頃から旬になります。
たけのこは皮がしっとりして乾いておらず、色が白いものを選びます。太くて短いほうがおいしいです。伸び過ぎたものは避け、根元のまわりのぶつぶつが少なく色が薄いものを選びましょう。ぶつぶつが赤いとあくが強いです。
たけのこの料理は既に「
たけのこの煮もの」「
たけのこ飯、木の芽和え」を紹介しましたが、焼きもの、炒めもの、揚げものにも幅広く使えます。部位によって堅さが違うので、根元部分は炒めもの、柔らかい穂先は汁ものや和えものと使い分けるとよいでしょう。
今日はたけのこ三昧ということで、3種の料理をお教えします。たくさん炊いたたけのこを違う調理法でアレンジして楽しんではいかがでしょう。酒の肴にもおかずにもなります。たけのこには他にも多くの料理があるので、これからもどんどん紹介し、読者の皆さまに役立つレシピとして、ありっ“たけ残”すつもりです(笑)。今日も野菜料理を楽しみましょう。
ちょっとしたコツ
・「たけのこの天ぷら」は、野菜料理をおいしくする7要素中6要素を取り入れている。
◎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り 刺激
・炊いてから時間が経過したたけのこを揚げると、弱まっていたたけのこの香りが熱で甦る。
・味がついているため焦げやすい。天ぷらの衣をつける前に薄力粉を通常より少し多めにつける。
「たけのこの味噌炒め」は、野菜料理をおいしくする7要素中7要素を取り入れている。
◎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り ◎刺激
・炊いたたけのこには既に味がついているので、からませる味噌はごく少量に。味噌の風味をつけるくらいにする。
・「たけのこの油焼き」は、野菜料理をおいしくする7要素中7要素を取り入れている。
◎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り ◎刺激
・上質な梅干しの梅肉を用いる。油焼きして旨みが増したたけのこに梅肉を添え、軽やかにして供する。
「たけのこの天ぷら」(右上)
【材料(作りやすい分量)】・たけのこ(炊いたもの) 適量 「
たけのこの煮もの」参照
・天ぷら衣 適量
薄力粉100g、冷水100cc、卵黄1個
・薄力粉 適量
・揚げ油 適量
・塩 少々(好みで)
・美味出汁 適量(好みで)
出汁4:濃口醤油1:日本酒1:みりん0.8の割合
【作り方】1.炊いたたけのこを煮汁から上げて、クッキングペーパーで汁気を除く。
2.天ぷら衣を作る。ボウルに入れた冷水に卵黄を加え、泡立て器でときほぐす。そこに薄力粉を加えて粘りが出ないようにさっくりと混ぜる。ベジタリアンは卵を用いなくてもよい。
3.たけのこに薄力粉をまぶして天ぷら衣をつけ、170℃に熱した揚げ油に入れて揚げる。途中で返して、出る泡が少なくなりカリッと揚がったら油から上げて、クッキングペーパーにのせて油をきる。下味がついているので何もつけなくてもおいしいが、好みで塩や美味出汁をつけてもよい。
「たけのこの味噌炒め」(左上)
【材料(3人分)】・たけのこ(炊いたものの根元部分) 6個
・サラダ油 小さじ1と1/2
・日本酒 大さじ1と1/2〜2
・信州味噌(好みの味噌でよい) 適量
・木の芽 適量
【作り方】1.炊いたたけのこの根元部分を煮汁から上げて、クッキングペーパーで汁気を除く。片面に鹿子に包丁目を入れる。
2.フライパンを火にかけサラダ油をひき、たけのこを入れる。中火で焦げ目が少しつくくらいまで両面を焼く。
3.日本酒をふりかける。ジュッと音がしてフライパンの温度が下がったら、底に残った日本酒で少量の味噌を溶き、たけのこにからめる。
4.火からおろして器に盛り、粗めに刻んだ木の芽をふりかけて供する。
「たけのこの油焼き」(手前)
【材料(3人分)】・たけのこ(炊いたものの根元部分) 6個
・サラダ油 小さじ1と1/2
・梅肉 適量
【作り方】1.炊いたたけのこの根元部分を煮汁から上げて、クッキングペーパーで汁気を除く。片面に鹿子に包丁目を入れる。
2.フライパンを火にかけサラダ油をひいて、たけのこを入れ、中火で焼く。
3.焦げ目が少しつくくらいに両面を焼いたら、火からおろして器に盛り、梅肉を少量添えて供する。
私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。