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究極の保存食、いもがら。女性の冷えや代謝アップに効果がある、滋味深い食材です

2022.03.27

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プロよりおいしく作れる 野菜料理の“ちょっとしたコツ”365 身近な野菜で、プロよりおいしい野菜料理を作ってみませんか? 銀座の日本料理店「六雁(むつかり)」の店主・榎園豊治(えのきぞの・とよはる)さんに、家庭だからこそ実践できる“ちょっとしたコツ”を毎日教わります。一覧はこちら>>

いもがらの煮もの、納豆汁、味噌汁


いもがらの煮もの、納豆汁、味噌汁

いもがらをご存じでしょうか? 初めて聞いたという方も多いかもしれません。いもがら(干しずいき)は八つ頭や赤芽いもなどの里いもの葉柄(芋茎)から、葉と茎の皮を除いて乾燥させたものです。生のものは「ずいき」と呼ばれ、「赤ずいきの酢炒り、唐辛子炒り」、「蓮いもの白酢かけ、きゅうり緑酢和え」で既に紹介しています。

荒縄のような見た目で、本当に食べられるの?という感じですが、煮ものなどにするとしみじみと味わい深いものです。この連載では、こうした忘れられつつある食材を取り上げ、おいしい料理を紹介します。


いもがらの煮もの、納豆汁、味噌汁

縄のようなと述べましたが、鎌倉時代から戦国時代にはまさにいもがら縄にして携帯食にしていました。いもがらを帯のように長く編んで味噌で煮しめ、通常時は荷物を縛る縄として用いたり、腰に巻きつけて所持し、必要なときにちぎって水を加えて炊き食料としました。

築城の名人・加藤清正(かとう・きよまさ)が建てた熊本城は、籠城の備えとして、城内に敷き詰める畳の芯になる畳床(たたみどこ。本来はわら床を用いる)にいもがらを用いたそうです。

戦国時代以降も通年の常備菜として活用されました。また「血の道を通す」「古血を洗う」「産後の女性にはいもがら」など、女性は積極的に食べるように昔からいわれてきました。

いもがら自体には味はありませんが、水でもどすとふっくらとし、煮ものや味噌汁などに入れると味がしみ込みおいしくなります。食物繊維が豊富で、しゃきしゃきとした食感できんぴらや酢のもの、和えものにも。

今日のいもがらの煮ものには「めかぶとろろ、めかぶ汁」で紹介しためかぶを合わせます。これまでもくり返し乾物料理のコツの中で述べてきたように、「定番具材に旬の野菜を加え、風味を増す」「単調でぼんやりした味にならないよう、食感のあるものなどを混ぜ、さらに香味野菜を加えてアクセントにする」「油をうまく使い、甘みは少なめに」の3つのテクニックを使っています。

いもがらは、あくを抜くことが大事です。あくが残ったままだと口の中がイガイガしてい“がら”っぽくなるかも。いも“がら”だけに(笑)。今日も野菜料理を楽しみましょう。


ちょっとしたコツ


・「いもがらの煮もの、納豆汁、味噌汁」は、野菜料理をおいしくする7要素中6要素を取り入れている。

◎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り 刺激

いもがらを茹でる際には米のとぎ汁を用いる。えぐみや苦みの元となるあくを吸着し、取り除く働きがある。

旬のめかぶとせりを加えて、風味と食感を加える。

・油をうまく使い、調味は甘みを少なめに。







「いもがらのもどし方」

・いもがら 適量

・米のとぎ汁 適量

1.水をたっぷりはったボウルにいもがらを入れ、浮き上がらないよう落とし蓋をして、30分ほどつける。

2.鍋に、水につけたいもがらと米のとぎ汁を入れ、落とし蓋をして火にかける。沸いたら弱火にして7〜8分茹で水に放す。水の中で優しくもみ洗いし、15分ほど水にさらす。少し食べてみて苦みやえぐみが抜けていたら、ざるに上げて水気を絞って使う。この段階で乾物のときの6倍ほどの重量になる。




「いもがらの煮もの」


いもがらの煮もの、納豆汁、味噌汁

【材料(4〜5人分)】
・もどしたいもがら 250g

・生めかぶの茎の部分(塩蔵ものでもよい) 150〜200g

・生めかぶのひだの部分 30〜40g

・せり 1束

・油揚げ 1.5〜2枚

・太白油 小さじ2

・出汁 200cc

・日本酒 大さじ2

・みりん 大さじ1と2/3

・砂糖 小さじ2

・薄口醤油 大さじ1

・濃口醤油 大さじ1と1/3

【作り方】
1.もどしたいもがらを、4.5cm長さに切る。油揚げは1cm×3.5cmに切る。

2.生めかぶは、ひだ状の部分にある汚れを水でよく洗う。堅い茎にそって包丁を入れ、茎とひだの部分に分ける。鍋にたっぷりの湯を沸かし、ひだの部分は10〜20秒、茎の部分は40秒茹でて鮮緑色になったら冷水に放す。冷めたらざるに上げて水気をきる。ひだの部分は食べやすい大きさに切る。茎の部分は4.5cm長さに切り、縦に2mm幅で刻む。塩蔵の茎わかめ(めかぶの茎の部分)を使う場合は、十分に塩抜きしてよく水気を絞り、4.5cm長さに切って刻まずに使う。

3.せりは根の部分を切り落とす。葉先や上のほうの柔らかい茎と、下のほうの太い茎に分けて、それぞれしゃきしゃきした食感が残るようにさっと茹でて水に放す。冷めたら水から上げて水気を絞り、葉先や上のほうの柔らかい茎は2cm、下のほうの太い茎は1cm長さに切る。

4.フライパンを火にかけ太白油をひき、いもがらと茎わかめを入れて炒める。

5.油がなじんだら油揚げを入れて、出汁と調味料を加える。沸いたら弱火にして途中で上下を返し、汁気がほとんどなくなったらめかぶのひだの部分を入れ、混ぜて火からおろす。器に盛ってせりを添えて供する。

いもがらの煮もの、納豆汁、味噌汁

「いもがらの納豆汁」(左)


【材料(2人分)】
・もどしたいもがら 50g

・豆腐(絹ごし。好みで木綿でもよい) 適量

・なめこ 20g

・にら 適量

・納豆(小粒。好みでひき割りでもよい) 1パック(50g)

・出汁 300cc

・信州味噌(好みの味噌でもよい) 適量

【作り方】
1.もどしたいもがらは3cm長さに切る。

2.豆腐は食べやすい大きさに切る。なめこは茹でて冷水に放し、水気をきる。にらは1.5cmほどに切る。

3.鍋に出汁を入れて火にかけ、80℃くらいになったら信州味噌を溶き入れて、いもがらと豆腐、なめこを加える。味噌汁が90℃を超えたくらいで納豆とにらを加える。沸く直前に火からおろして椀に盛る。

「いもがらの味噌汁」(右)


【材料(2人分)】
・もどしたいもがら 60g

・油揚げ 1/3枚

・三つ葉 1/4パック

・出汁 300cc

・八丁味噌(好みの味噌でもよい) 適量

【作り方】
1.もどしたいもがらは3cm長さに切る。

2.油揚げは1cm×3cmに、三つ葉は2cm長さに切る。

3.鍋に出汁を入れて火にかけ、80℃くらいになったら味噌を溶き入れ、いもがらと油揚げを加える。味噌汁が90℃を超えたくらいで火からおろして、三つ葉を加え椀に盛る。

私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。

六雁(むつかり)

榎園豊治さんプロフィール
銀座並木通りにある日本料理店「六雁」初代料理長であり、この連載の筆者でもある榎園豊治さんは、京都、大阪の料亭・割烹で修業を積み、大津大谷「月心寺」の村瀬明道尼に料理の心を学ぶ。その後、多くの日本料理店で料理長を歴任、平成16年に銀座に「六雁」を立ち上げた。野菜を中心としたコース料理に定評がある。

六雁 むつかり

東京都中央区銀座5-5-19
銀座ポニーグループビル6/7F
電話 03-5568-6266
営業時間 (夜)17時30分~23時 ※土曜日のみ17時~
(営業時間は変更になることもあります。事前に店舗にご確認ください)
URL:http://www.mutsukari.com

六雁 むつかり 料理長、秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。連載でご紹介する料理を手がけてくださる、現料理長・秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。
文/榎園豊治 撮影/大見謝星斗
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