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新じゃがいもの揚げ煮のアレンジ料理。3種の味噌で、いろいろな味を楽しみましょう

2022.03.31

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プロよりおいしく作れる 野菜料理の“ちょっとしたコツ”365 身近な野菜で、プロよりおいしい野菜料理を作ってみませんか? 銀座の日本料理店「六雁(むつかり)」の店主・榎園豊治(えのきぞの・とよはる)さんに、家庭だからこそ実践できる“ちょっとしたコツ”を毎日教わります。一覧はこちら>>

新じゃがいもの味噌ころがし3種


新じゃがいもの味噌ころがし3種

新じゃがいもの味噌ころがしを紹介します。「新じゃがいもの揚げ煮」のアレンジ料理になります。日本各地のじゃがいもの生産地で同様のものが食べられていました。小さ過ぎて出荷できないいもを、自家用として油で揚げて甘辛く煮しめたり、味噌と砂糖でからめたそうです。切ったり皮をむく必要がないので、忙しい農作業の合間に手早く作れるおかずやおやつとして、農繁期にはまとめて作ってくり返し食べたとか。

今の時代は、同じものを毎食くり返し食べるというのはつらいでしょうから、一度に仕込んだ料理をアレンジして、目先を変えて楽しみます。これが家庭料理のコツですね。最近紹介したものでは「たけのこ三昧」「ふきの筏揚げ、ふきのとう味噌かけ」もそれに当たります。


皮ごと揚げて、新じゃがいもの若々しい香りを薄い皮の内側に封じ込めます。貯蔵・熟成していないため糖分が少なく、濃いめの味を表面だけにからめる味噌ころがしのような調理法が適しています

新じゃがいもの味噌ころがし3種

魯山人が、凝った料理は何気ない器にさらっと盛り、総菜的な料理はよい器に盛れという主旨のことを言っていますが、器使いの妙を言い当てていると思います。ファッションも同じですね。お洒落な人は、ハイブランドのジャケットにさらりとデニムを合わせたり、ヌーディなメイクでバランスを取るのが上手だったりします。

今日は総菜的な味噌ころがしを、呉須赤絵(ごすあかえ)の向付(むこうづけ)に盛りました。これは須田菁華(すだ・せいか)の作ですが、何気なくもなく、本歌でもなく、ちょうど良い塩梅ではないでしょうか。

呉須赤絵、名前だけではイメージが湧かないかもしれませんが、写真を見ていただけば「ああ、これ知ってる、うちにもある。有田焼? 清水焼?」というくらいに見慣れた器かもしれません。元々は中国で明朝末期から清朝初期にかけて作られた磁器で、赤や緑の絵具を用いた力強く奔放な絵付けが特徴です。

日本に伝わると茶人が珍重し、中国南部で焼かれた磁器という意味で「呉州(ごす)」、赤色を主調にした上絵付けが施されているので「呉須赤絵」と呼ばれるようになりました。江戸時代から永楽(えいらく)や木米(もくべい)など多くが倣って製作し、今でも多くの作家に作り続けられています。料理や茶会に呉須赤絵の器を使うと、あまりにも定番過ぎるという印象がありますが、実際に料理を盛りつけてみると、予想よりはるかに美しく見えます。

「いもっぽい」とは私のような田舎出身の者をセンスがない、ダサいとからかう悪口ですね。「センスとは集積した知識をもとに最適化する能力である」と何かで読んだことがあります。つまり、おしゃれだといわれる人は、そもそもファッションについて豊富な知識を持っていて、それをもとに最適化しているのです。そしてセンスを磨く方法のひとつが王道、定番を知ること。これは料理にも通じています。

新じゃがいもを“ど定番”の呉須赤絵でコーディネート、おしゃれでしょうか? それともいもっぽいでしょうか?(笑)今日も野菜料理を楽しみましょう。


ちょっとしたコツ


・「新じゃがいもの味噌ころがし」は、野菜料理をおいしくする7要素中7要素を取り入れている。

◎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り ◎刺激

・揚げ煮や味噌ころがしには、切らずにそのまま使える小粒の新じゃがいもがむいている

・揚げ煮にした段階で煮汁を煮つめているので、フライパンでではなく、電子レンジで温めて味噌をからませる







新じゃがいもの味噌ころがし3種

「新じゃがいもの味噌ころがし」


木の芽鉄火味噌(左)、生姜味噌(中)、ごま味噌(右)

【材料(2人分)】
・新じゃがいもの揚げ煮(ピンポン玉大のもの) 18個

・サラダ油 少々

・日本酒 適量

・ごま味噌 大さじ1強
玉味噌(白) 15g
(作りやすい分量:西京味噌500g、卵黄5個、砂糖30g、日本酒200cc 「生姜味噌」参照)
いりごま(市販品をいり直す) 小さじ2/3

・木の芽鉄火味噌 大さじ1強
鉄火味噌 大さじ1強(「秋野菜の朴葉焼き」参照)
木の芽 適量

・生姜味噌 大さじ1強
生姜味噌 適量(「生姜味噌」参照)
生姜 適量

【作り方】
1.新じゃがいもは「新じゃがいもの揚げ煮」を参照して揚げ煮にする。

2.木の芽は枝部分を外して葉のみにする。生姜は皮をむいて3mm角に切る。

3.いりごまを香ばしくいり直してすり鉢でする。ところどころにごまの粒がわずかに残るくらいにすれたら、玉味噌(白)を加えてよく混ぜる。すり鉢を使うのが面倒な場合は、ごまをまな板の上に広げてみじん切りにしてもよい。ごま味噌に日本酒を少量加えて柔らかくする。

4.新じゃがいもの揚げ煮が冷めている場合は、電子レンジで温める。フライパンを火にかけサラダ油を少量ひいて温めた新じゃがいもを6個入れる。油がなじんだらごま味噌を入れてからめ、火から下ろす。同様にフライパンで、日本酒を少量加えて柔らかくした鉄火味噌と生姜味噌を、新じゃがいもの揚げ煮各6個にそれぞれからめる。

5.ごま味噌をからめたものはそのまま器に盛る。鉄火味噌をからめたものは器に盛って木の芽を散らし、生姜味噌をからめたものには生姜を散らす。

私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。

六雁(むつかり)

榎園豊治さんプロフィール
銀座並木通りにある日本料理店「六雁」初代料理長であり、この連載の筆者でもある榎園豊治さんは、京都、大阪の料亭・割烹で修業を積み、大津大谷「月心寺」の村瀬明道尼に料理の心を学ぶ。その後、多くの日本料理店で料理長を歴任、平成16年に銀座に「六雁」を立ち上げた。野菜を中心としたコース料理に定評がある。

六雁 むつかり

東京都中央区銀座5-5-19
銀座ポニーグループビル6/7F
電話 03-5568-6266
営業時間 (夜)17時30分~23時 ※土曜日のみ17時~
(営業時間は変更になることもあります。事前に店舗にご確認ください)
URL:http://www.mutsukari.com

六雁 むつかり 料理長、秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。連載でご紹介する料理を手がけてくださる、現料理長・秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。
文/榎園豊治 撮影/大見謝星斗
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