紫キャベツと春菜の博多ドーム
紫キャベツと春菜の博多ドームを紹介します。「福岡ドーム(現・福岡PayPayドーム)」ではありません(笑)。日本料理では、博多帯の縞柄のように2種類以上の色が違う食材を重ね、切った断面が縞模様になるようにした料理を「博多」といいます。紫キャベツのドームの中に春野菜が縞目をなすので、博多ドームとしました。いつものオヤジギャグが冒頭に炸裂し申し訳ありません。
フレンチのようにも見えますが、野菜の博多押しという日本料理を私なりにアレンジしたものです。見た目から受ける印象ほど難しくありません。特別な道具も不要で、この連載でこれまで紹介してきました料理の組み合わせ(「
金時にんじん酒肴3種」、「
千枚漬け」、「
紫キャベツと大豆の酢のもの」、「
春キャベツの酢のもの、辛子和え」)を具材にすれば簡単にできます。
やり方の基本さえ覚えれば、冷蔵庫の残り野菜を活用して、皆さまだけの博多ドームを作ることもできるでしょう。ドームの外側は春キャベツでもいいのですが、紫キャベツを使用したほうが美しく仕上がります。
紫キャベツは、以前は輸入ものが多かったのですが、近年は長野県や愛知県、茨城県などの国産が増え、年間を通して出回ります。選ぶ際は葉の紫色が鮮やかで張りがあるもの、持ったときに重みがあって葉がしっかり巻いているものがよいでしょう。葉の表面に粉がついているように白っぽくなっているものが新鮮です。紫キャベツには普通のキャベツよりもビタミンCやカリウム、食物繊維が多く含まれています。
葉に厚みがあるのでせん切りにしたほうが食べやすく、「
紫キャベツと大豆の酢のもの」のように、酢を使って調理すると赤く発色します。他の食材と合わせる場合は色が移るので注意が必要です。マリネのように酢に漬け込むのもおいしいですが、さっと和えるだけでもしゃきしゃきとした食感でおすすめです。
今回使った紫キャベツスプラウトも最近人気が出てきました。貝割れ菜よりも細く、軸は薄紫色でほんのりとキャベツの風味がします。今日も野菜料理を楽しみましょう。
ちょっとしたコツ
・「紫キャベツと春菜の博多ドーム」は、野菜料理をおいしくする7要素中6要素を取り入れている。
◎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り 刺激
・各具材の汁気をクッキングペーパーでていねいに除いた後に重ねていく。
・春キャベツ、たたきいも、にんじんなど細かく切って調理した具材の間には、青じその葉をはさんで、上下の層の料理が混ざらないようにする。
・紫キャベツの酢のものは色移りしやすいので、春かぶなど厚みのあるものを仕切りとしてはさむ。
・大和いもは包丁で細かく刻んで、たたきいもにする。適度な歯ごたえと粘りがあるので、食感に変化が生まれる。
「紫キャベツと春菜の博多ドーム」
【材料(4人分)】・紫キャベツの外葉(大) 3〜4枚
・塩 適量
・酢 適量
・オリーブ油 適量
・やまといも(中) 5cm
・紫キャベツのせん切りの酢のもの 1/5個分 「
紫キャベツと大豆の酢のもの」参照
・春キャベツのせん切りの酢のもの 1/5個分 「
春キャベツの酢のもの」参照 ※はっさく、くるみは加えない。
・春かぶの千枚漬け 大きめ2個分 「
千枚漬け」参照
・にんじんのきんぴら 中1本分 「
金時にんじんのきんぴら」 参照 ※三つ葉、黒ごまは加えない。代わりにレーズン、はっさく、カシューナッツを加える。
・青じそ 12〜16枚
・カシューナッツ(5mm角に切る) 適量
・紫キャベツスプラウト(1.5cmに切る) 適量
・青芽じそ 少々
・穂じその花 少々
・奈良漬(5mm角に切る) 少々
・刻み昆布(なければ白板昆布を刻んでもよい) 適量
・揚げ油 適量
【作り方】1.紫キャベツの外葉は、芯と葉の厚い部分を除いて薄い部分のみにする。塩(重量の1%)をふって10分ほどおき、水分が出たらクッキングペーパーで拭いて除く。ボウルに入れて酢とオリーブ油を少量ふりかけ10分ほどおく。
2.やまといもは皮をむいて細かく刻み、たたきいもにする。「
とんぶりと秋野菜の山かけ」の「ひと目でわかるプロセス&テクニック」参照。刻み昆布を160℃の油で揚げてクッキングペーパーに広げて余分な油を除く。
3.半球型(直径9〜10cm、深さ6cm。お椀や茶碗でもよい)を用意する。1の紫キャベツの最も大きな葉をまな板の上に置き型をうつぶせにのせ、型の輪郭に沿って丸く切り取る。
4.半球型の内側に霧吹きで水を少量吹きかけてラップをはる。1の紫キャベツを半球内にぴったりになるように切って敷き詰める。「ひと目でわかるプロセ&テクニック」参照。
5.紫キャベツのせん切りの酢のものを、4の底に均一の高さになるように詰める。春かぶの千枚漬けを半球型の径にぴったりの大きさになるように切って調整し、紫キャベツの上に広げ、軽く押さえる。さらに春キャベツのせん切りの酢のものを詰めて、枝部分を切った青じそを3〜4枚広げる。
6.同じ要領でたたきいも、青じそ、にんじんのきんぴら、青じそ、たたきいも、青じそ、春キャベツのせん切りの酢のものの順に重ねていく。
7.最後に3の丸く切った紫キャベツをのせてラップでおおい、型からはみ出し浮いた部分をそろえた指で押さえて圧をかける。さらに型のまま皿などに半球型の底を上にして置き、重石をして中身がきれいな縞状に固定するよう30分ほど押す。
8.少し水分がにじみ出て、型の中の具が落ち着いたら、型から外してラップをはがす。上に紫キャベツスプラウト、青芽じそ、穂じその花、奈良漬、揚げ昆布をのせ、食べやすい大きさに切って供する。
私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。