わかめと木の芽のひたし、わかめとうすい豆
今日は新わかめを使った料理を2品紹介します。「
新わかめの味噌汁」では生の新わかめを使いました。火を通すと鮮緑になり独特の食感や磯の風味があります。旬は3月から4月の頭で、そろそろ終わりになります。これからは塩蔵や乾燥の新わかめが出てきます。
塩蔵と乾燥はどちらも同じように使えるのですが、プロの料理人は使い分けをする場合もあります。「塩蔵わかめ」は旬の時期に収穫したわかめを茹でて、塩をまぶして水分を抜いたもので、三陸産が有名です。炊くと柔らかくなり煮ものなどに適しています。乾燥わかめにはそのまま干して乾燥させた「素干しわかめ」や、灰をまぶして乾燥させた「灰干しわかめ」などがあり、鳴門産がよく知られています。色がきれいで食感がよく、酢のものやひたしなどに用います。
最近になって技術の進歩により、昔はなかった画期的な「冷凍わかめ」が出てきました。流水解凍ですぐに使え、採れたてのシャキシャキ食感のわかめが一年中味わえます。
わかめは甲状腺ホルモンの原料となり、髪や皮膚にもよいヨウ素や、余分なコレステロールや塩分を排除する働きがあるアルギン酸、豊富なミネラル分やビタミン群も含有しています。低カロリーで食物繊維も豊富なのでダイエット中にもおすすめの食材で、古くから若返りの妙薬とされてきた理由がわかるような気がします。名前も「若女」「若芽」に通じます。
わかめは波やうねりの強い海でも、体をくねらせて簡単には折れません。その柔軟さを生み出しているのが食物繊維の一種アルギン酸です。保水力が高く、クッションのような役割を果たしてわかめの細胞を守ります。
アルギン酸は水と反応しトロトロになる性質があります。それを利用して日本料理にはわかめをトロトロに炊く料理法があり、同じ若竹煮(「
梅若竹椀、新わかめの吸いもの」参照)でもわかめの歯ごたえを残す場合と、とろみが出るほど柔らかく炊く場合があります。
今回はもどしたわかめにたっぷりの木の芽を添えたひたしをお教えします。夏には冷たく冷やしておろし生姜を添え、冬にはあつあつの出汁をかけて柚子の風味で食べてもおいしいでしょう。もう一品は「
豆飯」で用いたうすい豆を、わかめとさっと炊きます。
私も昔は世間の荒波やうねりに真正面からぶち当たり挑んでいましたが、もう若くありません。わかめのように体をクネクネとさせて上手にかわそうと思います(笑)。今日も野菜料理を楽しみましょう。
ちょっとしたコツ
・「わかめと木の芽のひたし」は、野菜料理をおいしくする7要素中5要素を取り入れている。
◎旨み ◎塩分 甘み 油分 ◎食感 ◎香り ◎刺激
・塩蔵わかめ、乾燥わかめは水でもどして使うが、もどし過ぎに注意する。食感や風味、旨みが失われるだけでなく、わかめに含まれる水溶性の食物繊維や、一部のビタミン群も失われてしまう。
・「わかめとうすい豆」は、野菜料理をおいしくする7要素中5要素を取り入れている。
◎旨み ◎塩分 ◎甘み 油分 ◎食感 ◎香り 刺激
・うすい豆は茹でた後、時間をかけて少しずつ水を入れ替えて冷ます。一気に水を替え冷ますと皮にしわがよる。
「わかめと木の芽のひたし」(左)
【材料(2人分)】・灰干しわかめ(普通の乾燥わかめ、塩蔵わかめでもよい。もどした状態) 50g
・調味出汁 約200cc
出汁180cc、塩0.5g、薄口醤油15cc、日本酒10cc
・木の芽 適量
【作り方】1.灰干しわかめは、水をたっぷり入れたボウルに入れて灰を手早く洗い流す。水が濁らなくなるまで何度か水を替えて手揉み洗いし、ざるに上げる。普通の乾燥わかめの場合は5分ほど水でもどして、ざるに上げて水気をきる。
2.鍋にたっぷりの湯を沸かし、わかめを入れ2秒ほど茹でたら冷水に放す。冷めたらすぐにざるに上げて水気をきる。
3.わかめをまな板に広げ、真ん中にある茎の部分に沿って包丁を入れて茎を除く。茎は和えものなど、別の料理に使うとよい。茎が気にならない場合はそのまま使ってもよい。
4.3を食べやすい大きさに切ってボウルに入れる。調味出汁150ccをまぶしかけてざっと洗うように混ぜる。ざるに上げて汁気をきり、器に盛る。分けておいた新しい調味出汁50ccをかけて、木の芽をたっぷりと添えて供する。
「わかめとうすい豆」(右)
【材料(2人分)】・塩蔵わかめ(乾燥わかめでもよい。もどした状態) 40g
・煮汁 約200cc
出汁180cc、塩0.3g、薄口醤油12cc、日本酒5cc
・うすい豆(さやから出した状態) 20g
【作り方】1.塩蔵わかめは、水をたっぷり入れたボウルに入れて塩を手早く洗い流す。何度か水を替えて手もみ洗いした後、新しい水に3〜5分ほどつける。途中で2〜3回水を替えて塩分を抜く。わかめを少し口に含み、塩分が抜けていたらざるに上げる。
2.「わかめと木の芽のひたし」の2〜3と同じようにさっと茹でて冷水に放し、茎部分を除く。食べやすい大きさに切る。
3.うすい豆を塩茹でする。さやから出したうすい豆をボウルに入れる。塩1g(分量外)をまぶして5〜6分おく。うすい豆が堅そうな場合は重曹(材料外)小さじ1/5を塩と一緒にまぶしてもよい。
4.鍋に湯を沸かしてうすい豆を入れる。再度、沸いたら、中火にして1分30秒〜2分柔らかくなるまで茹でる。鍋のまま流し台に持っていき、蛇口より水を少量ずつ注いでゆっくり温度を下げて水を入れ替える。一気に冷やすと皮にしわがよる。うすい豆がつかっている水が水道水と同じくらいの温度になったら、一粒食べてみて塩の抜け具合を確認する。塩辛いようなら、もうしばらく水につけ、程よい塩加減になったらざるに上げて水をきる。
5.鍋にわかめと出汁を入れて火にかけ、すべての調味料を加える。沸いたら弱火にして2分ほど炊き、うすい豆を加える。さらに1分ほど炊いたら火からおろして器に盛る。
私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。