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スフレではありません。焼きたてがおいしい、和のハーブを使った浮島を作りましょう

2022.04.16

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プロよりおいしく作れる 野菜料理の“ちょっとしたコツ”365 身近な野菜で、プロよりおいしい野菜料理を作ってみませんか? 銀座の日本料理店「六雁(むつかり)」の店主・榎園豊治(えのきぞの・とよはる)さんに、家庭だからこそ実践できる“ちょっとしたコツ”を毎日教わります。一覧はこちら>>

浮島(うきしま)2種、木の芽アイスクリーム


浮島(うきしま)2種、木の芽アイスクリーム

今日は六雁と縁が深い和菓子「浮島」を紹介します。洋菓子のスフレじゃないの?という声が聞こえてきそうですが、スフレではなく浮島です。少なくとも私の中では(笑)。

最近では和菓子屋でもあまり見かけなくなりましたが、浮島という和菓子があります。蒸しカステラとも呼ばれます。水分を多く含み、しっとりして柔らかな口どけです。泡立てたメレンゲを使った生地のため、蒸すとぽっこりとふくらんで、水面に浮かび漂う浮島に見えるところから名づけられました。


浮島とは辞書を引くと「湖や沼などに浮かんで水上を浮動する島。植物や泥炭からなり植物が生えている場合も」とあります。

千葉県安房(あわ)郡鋸南町(きょなんまち)勝山(かつやま)沖に浮かぶ風光明媚な浮島は、手つかずの原生林が残る無人島で、『日本書紀』にも登場する伝説と信仰の島です。日本武尊(やまとたけるのみこと)が大和朝廷に従わない各地の部族を平定する東国遠征の途上、病で亡くなります。父の景行(けいこう)天皇は深く悲しみ、我が子を偲んで皇子と同じ旅路をたどり、浮島に着きます。浮島が気に入ってしばらく滞在した際、同行していた磐鹿六雁命(いわかむつかりのみこと)が、蛤や堅魚(かつお)を料理して天皇に差し上げました。天皇は大変喜ばれて、末永く天皇家の料理をつかさどるように命じられ、後に料理の神様としても祀られるようになりました。

冒頭で触れた浮島との縁ですが、実は六雁は磐鹿六雁命から店名を頂戴しているのです。それで浮島を名物の一つとして、季節ごとの風味で提供しています。今回はふきのとうと木の芽の浮島をお教えしましょう。本来は蒸すものですが、焼くほうがはるかにおいしいので、六雁では焼いて作ります。このオリジナルレシピは初公開です。いつも以上に丁寧に説明しますので、ぜひお試しください。野菜料理を楽しみましょう。


ちょっとしたコツ


・「浮島2種」は、野菜料理をおいしくする7要素中6要素を取り入れている。

◎旨み 塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り ◎刺激

小麦粉とバターに牛乳を混ぜるときは、湯せんすると分離しない

・鍋で練った生地は常温より冷やさないこと。冷やし過ぎるとメレンゲと混ざりにくくなる

生地に3回に分けてメレンゲを混ぜる。1回目はよくなじむようにしっかりと混ぜ、2回目と3回目は気泡をつぶさないようにさっくりと混ぜる。

・「木の芽アイスクリーム」は、野菜料理をおいしくする7要素中6要素を取り入れている。

◎旨み 塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り ◎刺激

・アイスクリームには油脂が多く含まれるため、木の芽の風味が消えやすい。多めに加えて香りを楽しむ

・木の芽は口あたりがよくなるようみじん切りにした後、すり鉢でする

すり鉢とすりこ木は使う前に十分に水を吸わせておく。乾いたままだと、木の芽の色がしみ込んでしまう。







浮島(うきしま)2種、木の芽アイスクリーム

「ふきのとう浮島」(左)


【材料(7cm×4cm×深さ3cmの耐熱容器6個分)】
・強力粉 27g

・無塩バター(常温にもどして柔らかくする) 27g

・牛乳 100cc

・ふきのとう 30g

・卵黄 20g

・シロップ
水25cc、グラニュー糖80g

・メレンゲ
卵白63g、グラニュー糖13g

【作り方】
1.ふきのとうは、一番外の葉が堅いようであれば取り除く。つぼみを包む外葉を閉じた状態で、ぬれ布巾で汚れを拭く。縦半分に切り、200℃に予熱したオーブンで全体が茶色になるまで3~4分焼く。

2.蓋付きの鍋に牛乳を入れて火にかける。沸いたら1を加えて火からおろし、蓋をする。10分ほどおいた後、均一になるまでミキサーにかける。

3.ボウルに強力粉と無塩バターを入れて、よく練り合わせる。

4.3を湯せんにかけ、2を少しずつ加えて混ぜる。さらに卵黄を加えて均一になるように混ぜる。

5.4を鍋に移し、中火にかけて耐熱性ゴムべらで練る。生地がひとまとまりになったら火からおろし、ボウルに広げて常温まで冷ます。ここで冷まし過ぎるとメレンゲと混ざりにくくなるので注意。

6.シロップを作る。鍋に水とグラニュー糖を入れて中火にかけて116℃まで上げる。

7.メレンゲを作る。ボウルに卵白とグラニュー糖を入れ、ハンドミキサーで混ぜてしっかりとしたメレンゲを作る。メレンゲに6の熱いシロップを少しずつ加えてハンドミキサーでつやが出るまで混ぜて常温に冷ます。

8.5に7を3回に分けて加える。1回目はよくなじむようにゴムべらでしっかりと混ぜる。2回目と3回目は気泡をつぶさないようにさっくりと混ぜる。

9.耐熱容器(7cm×4cm、深さ3cmのスフレ型)6個の内側に無塩バター(分量外)を厚めに塗り、グラニュー糖(分量外)をまぶす。8を器の縁と同じ高さまで入れて、ぬらして固く絞った布巾で、縁についた生地を拭き取る。生地が縁についていると、焼いたとき生地が引っ張られて浮き上がらないので注意。

10.230℃に予熱したオーブンに入れて8〜12分焼き、生地が浮き上がったら取り出してすぐに供する。

「木の芽浮島」(右)


【材料(7cm×4cm×深さ3cmの耐熱容器6個分)】
・強力粉 27g

・無塩バター(常温にもどして柔らかくする) 27g

・牛乳 100cc

・木の芽 10g

・卵黄 20g

・シロップ
水25cc、グラニュー糖80g

・メレンゲ
卵白63g、グラニュー糖13g

【作り方】
1.木の芽をまな板の上に広げて包丁で可能な限り細かいみじん切りにして常温の牛乳に混ぜる。

2.ボウルに強力粉と無塩バターを入れてよく練り合わせる。湯せんにかけて1を少しずつ加えて混ぜ、さらに卵黄を加えて均一になるように混ぜる。

3.これ以降は「ふきのとう浮島」と同じ手順。

「木の芽アイスクリーム」


浮島(うきしま)2種、木の芽アイスクリーム

【材料(2〜3人分)】
・市販品のバニラアイスクリーム 100g

・木の芽 25g

【作り方】
1.バニラアイスクリームは少し柔らかくしておく。

2.木の芽をまな板に広げて包丁でみじん切りにする。すり鉢に入れペースト状になるまでよくする。「たけのこの木の芽和え」の「ひと目でわかるプロセス&テクニック」も参照。

3.すり鉢に1を加えて混ぜ、保存容器に移して冷凍庫に入れる。

4.程よい堅さになったら、スプーン2本を使って成形して器に盛る。

私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。

六雁(むつかり)

榎園豊治さんプロフィール
銀座並木通りにある日本料理店「六雁」初代料理長であり、この連載の筆者でもある榎園豊治さんは、京都、大阪の料亭・割烹で修業を積み、大津大谷「月心寺」の村瀬明道尼に料理の心を学ぶ。その後、多くの日本料理店で料理長を歴任、平成16年に銀座に「六雁」を立ち上げた。野菜を中心としたコース料理に定評がある。

六雁 むつかり

東京都中央区銀座5-5-19
銀座ポニーグループビル6/7F
電話 03-5568-6266
営業時間 (夜)17時30分~23時 ※土曜日のみ17時~
(営業時間は変更になることもあります。事前に店舗にご確認ください)
URL:http://www.mutsukari.com

六雁 むつかり 料理長、秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。連載でご紹介する料理を手がけてくださる、現料理長・秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。
文/榎園豊治 撮影/大見謝星斗
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