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規格外の素材をいかにおいしく食べるか。“もったいない”精神こそ、料理上手への道です

2022.04.26

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プロよりおいしく作れる 野菜料理の“ちょっとしたコツ”365 身近な野菜で、プロよりおいしい野菜料理を作ってみませんか? 銀座の日本料理店「六雁(むつかり)」の店主・榎園豊治(えのきぞの・とよはる)さんに、家庭だからこそ実践できる“ちょっとしたコツ”を毎日教わります。一覧はこちら>>

そら豆のかき揚げ、そら豆とセロリの葉のきんぴら


そら豆のかき揚げ、そら豆とセロリの葉のきんぴら

そら豆のかき揚げと、そら豆とセロリの葉のきんぴらを紹介します。外はカリッ、中はほくほくのそら豆に生姜の程よい刺激が加わったかき揚げは、お代わり必至のおいしさです。香ばしく焼いたそら豆にセロリの風味が調和したきんぴらは、おかずにもおつまみにもなり、箸が止まりません。

こんなにおいしい食材が、料理屋だったら捨てられてしまいかねないものだと聞いたら、きっと皆さまはびっくりされることでしょう。


そら豆のかき揚げ、そら豆とセロリの葉のきんぴら

そら豆3種」や「そら豆の翡翠(ひすい)煮、醤油煮」でお話ししたように、プロは見た目が美しいそら豆の翡翠煮のような料理を好み、若い豆を使います。熟した豆はじゃがいものようなほくほく食感でおいしいのですが、実が黄色くて美しくなく、加熱すると実(子葉)がバラバラに離れ、商品価値が落ちるので嫌われます。若い豆と熟した豆の見分け方(「空豆3種」参照)はあるのですが、一緒に買った豆でも、さやによって熟れ具合が均一でないことがあります。すると、若い豆でも粒の小さいものや熟した豆はお客さまに出す料理には使えないということで、賄いで使うか捨てられてしまうことも十分あり得るのです。

うど三昧 皮のきんぴら、べっ甲煮、梅煮」の賄いの話にも通じますが、良い材料は手をかけ過ぎてはいけません。持ち味を引き出すために、手を加えるのは最小限にとどめます。逆に、粗末な材料は自分の持てるすべての技と知識を駆使して、工夫しおいしく料理します。

実はコース料理の前菜とは、元々そういう料理が多かったのです。椀ものや刺し身、焼きもの、煮ものなどの主料理を作る際に、ヘタや使わない部位がどうしても出てしまいます。それらをおいしく食べられる気の利いた料理にうまく工夫して仕上げ、前菜や小鉢としてお出ししていました。料理人の腕の見せ所だったのです。

ところが、いつの間にか、派手な演出をした前菜がコース料理の見せ場となり、そのための材料を仕入れるようになりました。そこでまたヘタや使わない部位が生じるという矛盾が起き、それらは行き場がなく、最終的に捨てられてしまうということが現実に起きてしまいます。

熟した豆はほくほくしておいしいのですから、色が気にならず割れてもいい料理にします。セロリの葉は堅い食感と強い香りのために使いにくいのなら、さっと熱を入れれば食べやすくなり、油を使えば香りも和らぎます。

六雁でも賄いで、野菜の皮を刻んだものを味噌汁などに入れたりしますが、その刻み方に思いやりや愛情、性格、人間性が出るのです。一手間は時間にすればわずかです。忙しさを口実に逃げるか、あえて忙しい中でも挑戦するのかは、その人の心がけの表れなのです。そして一事が万事、少しでもおいしいものをという気持ちで賄いを作る料理人は、料理長になってからも、どんな状況でも妥協せず、お客さまのために精一杯の努力をするでしょう。一手間を惜しまず、野菜料理を楽しみましょう。


ちょっとしたコツ


・「そら豆のかき揚げ」は、野菜料理をおいしくする7要素中7要素を取り入れている。

◎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り ◎刺激

かき揚げにするそら豆は、熟して割れた豆でも、若い小さな粒の豆でも、両方を合わせてもよい。両方を混ぜる場合は、火の通りが同様になるように大きな豆は切って調整する。

・「そら豆とセロリの葉のきんぴら」は、野菜料理をおいしくする7要素中6要素を取り入れている。

◎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り 刺激

・先にそら豆を焼き目がつくくらいに焼き、セロリの葉を加える。

そら豆は油を使って焼くことで香ばしくなり、旨みも増す

セロリの葉は熱を入れると食べやすくなり、油の効果で香りも和らぐ。







そら豆のかき揚げ、そら豆とセロリの葉のきんぴら

「そら豆のかき揚げ」(左)


【材料(2人分)】
・そら豆(さやから出し薄皮をむく) 100g

・生姜(せん切り) 40g

・天ぷら衣
薄力粉100g、冷水100cc、卵黄1個

・揚げ油 適量

・塩 少々

【作り方】
1.そら豆はさやから出して薄皮をむく。生姜は2mm角×2.5cm長さのせん切りにする。

2.天ぷら衣を作る。ボウルに入れた冷水に卵黄を加え、泡立て器でときほぐす。そこに薄力粉を加えて粘りが出ないようにさっくりと混ぜる。ベジタリアンは卵を用いなくても構わない。

3.そら豆と生姜をボウルに入れ、少量の薄力粉(分量外)をまぶす。

4.3に2の天ぷら衣を適量加え、全体が均一になるよう混ぜる。

5.180℃に熱した揚げ油の中に、4を小さなおたまで静かに入れていく。実際は170℃前後で揚げたいので、油の量にもよるが最初は180℃にしておき、たねを入れた後に170℃になるように火加減を調整する。

6.油の中でたねが広がってきたら、箸で寄せて形を整える。しばらくしたら裏返す。泡が小さくなり揚がったら油をよく切って、塩をかけて供する。

「そら豆とセロリの葉のきんぴら」(右)


【材料(2人分)】
・そら豆(熟した豆) 60g

・セロリの葉 60g

・ごま油 大さじ2/3

・日本酒 大さじ1

・きび砂糖 小さじ1

・薄口醤油 10cc

【作り方】
1.そら豆はさやから出して薄皮をむく。セロリの葉は茎から外して1.5cm幅に切る。

2.フライパンを火にかけ、ごま油をひいてそら豆を入れ、両面に焦げ目がつくくらいに焼く。セロリの葉も加えて炒め、火が通ったら日本酒ときび砂糖、薄口醤油を加えてからめる。汁気がなくなったら火からおろす。

私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。

六雁(むつかり)

榎園豊治さんプロフィール
銀座並木通りにある日本料理店「六雁」初代料理長であり、この連載の筆者でもある榎園豊治さんは、京都、大阪の料亭・割烹で修業を積み、大津大谷「月心寺」の村瀬明道尼に料理の心を学ぶ。その後、多くの日本料理店で料理長を歴任、平成16年に銀座に「六雁」を立ち上げた。野菜を中心としたコース料理に定評がある。

六雁 むつかり

東京都中央区銀座5-5-19
銀座ポニーグループビル6/7F
電話 03-5568-6266
営業時間 (夜)17時30分~23時 ※土曜日のみ17時~
(営業時間は変更になることもあります。事前に店舗にご確認ください)
URL:http://www.mutsukari.com

六雁 むつかり 料理長、秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。連載でご紹介する料理を手がけてくださる、現料理長・秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。
文/榎園豊治 撮影/大見謝星斗
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