揚げアボカドのづけ、アボカドのわさび海苔和え
「森のバター」と呼ばれるアボカドは果肉の約20%が脂肪ですが、その約80%は不飽和脂肪酸で、血液をサラサラにしコレステロールを減らす作用がある、栄養価の高いヘルシーな果実です。柔らかく熟したものはねっとりと濃厚な味わいです。
アボカドは中南米原産で、クスノキ科ワニナシ属の常緑高木になります。スーパーマーケットなどに並んでいる一般的なものは、すべてメキシコやアメリカなどから輸入されたものです。国内でも和歌山県など数か所で生産されていますが、市場に出回るのはごく少量です。
日本に入ってくるアボカドのほとんどがハス種という品種で、皮が厚く追熟を必要とするため、輸入に適しています。通年輸入されているので、旬はないようなものですが、国産に関しては10月下旬〜翌1月頃です。
日本に初めて輸入されたのは明治初期で、和名では「鰐梨(わになし)」と表記されます。英名のalligator pearを直訳したもので、アボカドの皮はワニ皮をなんとなく連想させますね。
食材としては野菜的なイメージですが、果物に分類されます。木に実がつく多年生植物で、レモンや未熟なパパイヤなどと同様、野菜的果実と呼ばれ、果物でありながら野菜のように扱われています。「
いちごの田楽、白和え、カットいちご」でお話しした、いちごやメロン、すいかが「果実的野菜」と呼ばれるのと対照的です。
アボカドにわさび醤油をつけると、まぐろのトロの味がするという人がいますが、それは言い過ぎだと思います(笑)。しかし、まぐろの調理法を流用すると、アボカドがおいしくなるのは事実です。今回はそんなアボカド料理を紹介します。今日も野菜料理を楽しみましょう。
ちょっとしたコツ
・「揚げアボカドのづけ」は、野菜料理をおいしくする7要素中6要素を取り入れている。
◎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り 刺激
・柔らかく熟れているアボカドを使うこと。アボカドが熟れていなければ、どんなに手を加えてもおいしくはならない。熟れていない場合は、りんごやバナナなどのエチレンガスを発するものと一緒にビニール袋に入れ、常温で1〜2日ほどおき、過熟状態にならないようこまめにチェックする。
・アボカドを下揚げして表面を固めることで、出汁醤油に漬けても表面が溶けて形がくずれることがない。
・アボカドは、薄めの出汁醤油に長時間漬けるのではなく、少し濃いめの出汁醤油に短時間漬ける。
「アボカドのわさび海苔和え」は、野菜料理をおいしくする7要素中7要素を取り入れている。
◎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り ◎刺激
・焼き海苔を加えて旨みと風味をたす。海苔は3大旨み成分である「グルタミン酸」「グアニル酸」「イノシン酸」を含むので、いまひとつものたりないときに加えるとおいしくなる。
・揚げそばの実の油分がこくを出し、食感がアクセントとなる。
・美味出汁を土佐酢に替えてもよい。
「揚げアボカドのづけ」(左)
【材料(3人分)】・アボカド(熟れたもの) 1個
・揚げ油 適量
・フルーツトマト 1.5個
・出汁醤油 適量
濃口醤油2:みりん1:日本酒1の割合
・ココナッツロング(ローストする) 適量
・ワイルドルッコラのスプラウト 適量
【作り方】1.アボカドは柔らかく熟したものを用意する。アボカドの種に当たるように縦に包丁を一周入れ、ひねって2つに割り、種と皮を除く。片身を縦3つにそれぞれ切る。
2.出汁醤油を作る。鍋にすべての調味料を入れて火にかけ、沸いたら火からおろして冷ます。
3.フライパンに揚げ油を入れ、180℃に熱する。アボカドを入れて揚げる。表面がきつね色になったら油から上げて、クッキングペーパーに広げて余分な油を除く。
4.3を冷めた出汁醤油に3〜5分(好みで)漬ける。
5.フルーツトマトは皮を湯むきして、ヘタを除いて縦6つのくし切りにする。
6.出汁醤油から上げたアボカドの汁気をきり、一口大に切る。ボウルに入れてフルーツトマトと混ぜ、器に盛る。ローストしたココナッツロングとワイルドルッコラのスプラウトを添えて供する。
「アボカドのわさび海苔和え」(右)
【材料(2〜3人分)】・アボカド(熟れたもの) 1個
・美味出汁 適量
出汁4:濃口醤油1:日本酒1:みりん0.8の割合
・わさび(市販品のチューブ入りわさびでもよい) 少々
・焼き海苔 少々
・そばの実 少々
・揚げ油 適量
【作り方】1.アボカドは「揚げアボカドのづけ」の1と同じように種と皮を除いて一口大に切る。
2.揚げそばの実を作る。そばの実は160℃の油で揚げて、クッキングペーパーに広げて余分な油を除く。
3.ボウルに美味出汁を適量入れてわさびを溶かす。アボカドを入れて、ちぎった焼き海苔も加えて和える。器に盛り、ボウルに残った美味出汁を少量かけて、ちぎった海苔をのせる。揚げそばの実をかけて供する。
私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。