クレソンのポテサラケーキ
今日は「こどもの日」。子供から大人まで皆に愛されるポテトサラダ(ポテサラ)のケーキ仕立てを紹介します。みずみずしい新じゃがいもと新玉ねぎベースのポテサラに、季節野菜をたっぷり添えて華やかに仕上げます。季節野菜は材料表どおりでなくても、家にあるものでいろいろ工夫をすれば、おいしく食べられるはずです。
クレソンをポテサラに加えるのがポイントで、クレソンのすがすがしい風味と苦み、少しピリッとくる辛みがアクセントになり、味を引き立てます。
ポテトサラダといえば、コロッケ、肉じゃがと並ぶじゃがいもを使った食卓の定番メニューのひとつ。おかずにも酒の肴にもなり、居酒屋や和食店でも、お総菜としても人気ですね。
身近な料理として親しまれ、家庭や店によって千差万別のポテサラですが、そのルーツには諸説あります。昔、ロシアで活躍したベルギー出身の料理人リュシアン・オリヴィエが考案したじゃがいも、ゆで卵、グリンピースなどをマヨネーズで和えた「オリヴィエ・サラダ」が有力で、それをもとに日本で独自に発展してきました。
明治時代から当時の料理人たちが工夫を重ね、最初は高級料理として供されたものが一般にも普及しました。茹でたじゃがいもにスライスした玉ねぎを加えて辛子入りのドレッシングで和えたものから、ドレッシングとマヨネーズの両方使ったもの、マヨネーズだけのものへと変化。
ポテサラに欠かせないのがマヨネーズですね。18世紀半ば、フランスのリシュリュー公爵が地中海のメノルカ島(現スペイン)のマオンという港町で、オリーブ油と卵黄、レモン汁を混ぜたソースをかけた肉料理を食べました。大変気に入ってレシピをパリに持ち帰り、マオンのソース「Mahonnaise(マオンネーズ)」として紹介したものが、後に「Mayonnaise(マヨネーズ)」になったとの説があります。
ステーキなどに添えられているクレソンを生のままかじると、特有のさわやかな風味と淡い辛みがあります。苦みや辛みのもとは、わさびや大根などに含まれる成分と同じです。肉料理に添えられていることが多いのは、クレソンの香りや成分が脂っぽさを和らげてくれるからで、油脂を含むマヨネーズを使ったポテサラにもぴったりです。
今日は家族みんなで大きなポテサラケーキを囲んで、子供たちに切り分けてもらいましょう。子供はちょっぴり大人びた料理を大人の真似をして食べるのも大好きです。クレソンには食欲を増進させる作用も期待できるようです。おなかいっぱい野菜料理を楽しみましょう。
ちょっとしたコツ
・「クレソンのポテサラケーキ」は、野菜料理をおいしくする7要素中7要素を取り入れている。
◎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り ◎刺激
・皮付きのまま新じゃがいもを茹でて、若々しい香りを皮の内側に閉じ込める。茹でた後も水っぽくならない。
・新じゃがいもは水分を多く含むため、火が早く通る。茹で過ぎに注意。
・あつあつのうちにマッシュすると、ほくほくした食感になる。じゃがいものでんぷんを包むペクチン層は熱いうちは弾力性があるため、つぶしてもでんぷんの粒が壊れない。冷えてからつぶすと弾力のなくなったペクチン層が壊れ、でんぷんが流出して餅のような粘りが出る。
・マッシュしたら、熱いうちに塩・こしょうすると味がなじみやすい。
・マヨネーズは、マッシュした新じゃがいもの粗熱が取れ、ほんのりと温かさを感じる50~55℃程度で加える。熱いうちに加えると分離する可能性がある。冷め過ぎると味がしみ込みにくくなる。
・クレソンは冷めてから混ぜる。ポテサラが熱いうちに混ぜると変色する。
・カリフラワーは堅めに茹で、水に放さずザルに上げて、そのまま余熱で火を通すと水っぽくならない。
「クレソンのポテサラケーキ」
【材料(4〜5人分)】・新じゃがいも 500g
・新玉ねぎ 40g
・塩 4〜5g(好みで)
・こしょう 適量
・マヨネーズ(市販品) 30g(好みで)
・クレソン 1束(50g)
※トッピングする季節野菜は下記の材料を参考に好みで。
・フルーツトマト 1〜1.5個
・カリフラワー 適量
・塩麹だれ(市販品のフレンチドレッシングでもよい) 適量
作りやすい分量:塩麹(市販品。商品により塩分濃度がかなり違うので加減する)225g、 はちみつ25g、オリーブ油25g、シェリービネガー15g
・そら豆の油焼き 6〜7粒 「
そら豆3種 茹でそら豆、塩蒸し、油焼き」参照
・とうもろこし醤油焼き 適量
・スナップエンドウ 適量
・アーモンドスライス(ローストする) 適量
・レッドソレルスプラウト 適量
【作り方】1.新じゃがいもは皮付きのまま鍋に入れ、かぶるくらいの水を入れて火にかける。沸いたら弱火にして15〜20分、竹串がすっと通るくらいまで茹でてざるに上げる。
2.やけどしないよう利き手に調理用手袋をして、熱い新じゃがいもを布巾で持って皮をむく。ボウルかすり鉢に入れてマッシュする。塩こしょうして下味をつけ、粗熱が取れたらマヨネーズを加え、混ぜて冷ます。
3.新玉ねぎは皮をむいて縦に半分にして、繊維にそって薄切りにする。クレソンは先端と茎、葉に分け、それぞれ食べやすい大きさに切る。
4.2に新玉ねぎとクレソンを加えて混ぜ、直径15cmほどのケーキ型に、3cm弱の厚みで詰める。
5.フルーツトマトは皮を湯むきして、ヘタを除き一口大に切る。
6.カリフラワーは茎側から切り込みを途中まで入れ、手で裂いてから包丁で2cm程度の小房に分ける。鍋に湯を沸かし、カリフラワーを入れて堅めに茹で、水に放さずざるに上げて薄く塩(分量外)をふる。冷めたらボウルに入れて塩麹だれを適量加えて和える。
7.スナップエンドウは両側の筋を取る。ヘタを折って先端まで引っ張って太い筋を除く。反対側に爪を立て同じく先端に向かって筋を取る。鍋に湯を沸かしてスナップエンドウを入れ、歯ごたえが残るくらいに茹でる。浮いてくるので落とし蓋をするか、箸で混ぜながら茹でる。茹で上がったらざるに上げて薄く塩(分量外)をふり、扇風機か団扇で冷ます。冷めたら食べやすい大きさに切る。
8.4を型から抜いて器に盛り、フルーツトマト、カリフラワー、そら豆の油焼き、とうもろこし醤油焼きの実を外したもの、スナップエンドウを彩りよくのせる。アーモンドスライスとレッドソレルスプラウトを添えて供する。
私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。