プロよりおいしく作れる 野菜料理の“ちょっとしたコツ”365 身近な野菜で、プロよりおいしい野菜料理を作ってみませんか? 銀座の日本料理店「六雁(むつかり)」の店主・榎園豊治(えのきぞの・とよはる)さんに、家庭だからこそ実践できる“ちょっとしたコツ”を毎日教わります。
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ひじき料理を「
ひじきの炒め煮」「
秋野菜とコリンキー、長ひじきの柑橘酢和え」「
長ひじきと冬野菜のきんぴら」と、季節ごとに紹介してきましたが、最後になる今回は乾物ではなく、今の時季だけのみずみずしい生ひじきを使います。
生ひじきは乾燥ひじきと違い、スーパーマーケットの鮮魚コーナーに並べられています。これまで紹介した芽かぶ(「
芽かぶとろろ、芽かぶ汁」参照)や新わかめ(「
梅若竹椀、新わかめの吸いもの」参照)、新もずく(「
新もずくの酢のもの、雑炊」参照)のように、海で採ったものをそのまま売っているのではなく、出荷前に一度加熱処理しています。採れたてのひじきにはあくがあり、加熱処理しないと食べられないからです。
「
秋野菜とコリンキー、長ひじきの柑橘酢和え」でもお話ししましたが、2月〜5月の旬の時期に採取したひじきは、水洗い、塩抜きの後に蒸す、もしくは釜茹でしてあくを除きます。その後、天日干しや乾燥をさせずに出荷されたものが生ひじきで、乾燥ひじきに比べてぷりぷりとした食感が特徴です。
生ひじきが出回る期間は限られており、それ以外の時期に売られているひじきは、乾物を水でもどしたものです。どちらも水で洗うだけでなく、熱湯でさっと茹でた後に用います。
産地などで採れたてのひじきが手に入った場合の下処理方法もお教えしましょう。流水で丁寧に洗って30分ほど水につけ、傷んでいる部分などがあれば取り除きます。5~10分茹で、鮮やかな緑色になったら冷水に30秒〜1分さらした後に調理します。柔らかくしたい場合は、新しいお湯でさらに30分ほど茹でるとよいでしょう。
おかひじき(「
おかひじきのひたし、豆腐の味噌漬け和え、梅酢和え」参照)とパプリカを合わせて、彩り豊かに梅風味のサラダ感覚に仕上げ、生ひじきのフレッシュ感を堪能します。今日も野菜料理を楽しみましょう。
ちょっとしたコツ
・「生ひじきと新玉ねぎの梅風味」は、野菜料理をおいしくする7要素中7要素を取り入れている。
◎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り ◎刺激
・生ひじきは茹でた後、しっかりと水気をきる。乾いた布巾の上に広げ、上からも布巾をかぶせて軽く押して水気を取り除くとよい。
「生ひじきと新玉ねぎの梅風味」
【材料(3〜4人分)】・生ひじき(加熱処理済みの市販品) 400g
・新玉ねぎ 50g
・パプリカ(赤
・橙) 各20g
・おかひじき 20g
・梅干し(大。商品によって塩分濃度が違うので加減する) 3個(40g)
・塩 少々
・米油 小さじ1
【作り方】1.大きめのボウルに冷水を用意する。鍋にたっぷりの湯を沸かし、生ひじきをざるに入れて、ざるごと30秒ほど茹でたら、ボウルの中の冷水にひじきを入れる。
2.生ひじきをすすぐように混ぜ、傷んでいる部分などがあれば除く。空のざるにすすいだひじきを両手ですくって移し、水気をよくきる。ボウルの底に砂が沈殿している可能性があるので、ひじきだけを手ですくって移すこと。
3.新玉ねぎは繊維にそって薄切りにする。パプリカはそれぞれ縦に半分に切り、ヘタとわたを除いて縦に細めのせん切りにする。
4.おかひじきは、太い茎から枝分かれした柔らかい茎と芽の部分をちぎって使う。太い茎が柔らかい場合はそのまま使ってもよい。鍋にたっぷりの湯を沸かし、おかひじきを入れ、30秒〜1分茹でて冷水に放す。冷めたらざるに上げて水気をきり、食べやすい大きさに切り、塩と米油をふりかけて和える。
5.ボウルに生ひじきと新玉ねぎ、パプリカを入れてよく混ぜる。種を除いて粗く刻んだ梅干しを加えて和える。
6.5を器に盛り、4のおかひじきをのせて供する。
私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。 六雁(むつかり)
榎園豊治さんプロフィール銀座並木通りにある日本料理店「六雁」初代料理長であり、この連載の筆者でもある榎園豊治さんは、京都、大阪の料亭・割烹で修業を積み、大津大谷「月心寺」の村瀬明道尼に料理の心を学ぶ。その後、多くの日本料理店で料理長を歴任、平成16年に銀座に「六雁」を立ち上げた。野菜を中心としたコース料理に定評がある。
東京都中央区銀座5-5-19
銀座ポニーグループビル6/7F
電話 03-5568-6266
営業時間 (夜)17時30分~23時 ※土曜日のみ17時~
(営業時間は変更になることもあります。事前に店舗にご確認ください)
URL:
http://www.mutsukari.com連載でご紹介する料理を手がけてくださる、現料理長・秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。 文/榎園豊治 撮影/大見謝星斗