京都で新体験 第7回(全30回) 今、私たちに必要なのは、心をからっぽにし、頭を整理する時間です。自分の心に、自分の人生に深く残る何かを求めて、日本の心の原点、京都に旅立ちます。
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“紅葉狩り弁当”を作る 辻留 京都店
[教える人]平 晴彦さん(辻留 京都店主人)
平 晴彦さん(たいら・はるひこ)1946年東京生まれ。青森県立青森高校卒業後、1965年に「辻留銀座店」に入店。2代目辻 嘉一の薫陶を受ける。1975年より出張料理専門の「辻留 京都店」を任され、現在にいたる。著書に『京都辻留がつくる季節の茶懐石』(小社刊)、『京都辻留 季節の煮物椀』『辻留の盛り付け 茶懐石からお弁当まで』(淡交社)ほか。理に適った手順で作りましょう
1.吹き寄せを作る
弁当作りで大切なのは全体の手順。秋を象徴する吹き寄せは、具材を別々に炊いて合わせるため、少々手間と時間がかかります。こういった細かい作業が必要なものを先に作っておくと、そのあとが順調に進められます。
松葉牛蒡やこんにゃく辛煮など、しっかり味をつけるものは、前日に作っておいてもよいでしょう。
2.飛龍頭、野菜を炊く
京料理は淡い味を中まで煮含ませるため、時間がかかるものもあります。一方でそれは、煮含ませている間にいろいろな作業ができるということでもあります。
例えば、飛龍頭を揚げて、だしで炊いている間に、きぬかつぎや南京を蒸しておく。全体感を把握し、調理の段取りを事前に考えることで、効率よく進められます。
3.松茸御飯、とりを炊く
紅葉狩り弁当の主役である、香り高い松茸御飯。俵形に握りますが、熱々では握りにくいので、折詰に詰める少し前に炊き上げて冷ましておきます。
とり旨煮は野菜などと違って、強い火力で一気に炊き上げます。時間をかけて味を含ませる必要がないので、少し遅いタイミングで作って構いません。
4.和え物を作る、御飯を握る
汁気が多い和え物は、早めに和えるとどうしても水っぽくなってしまうため、詰める直前に作ります。折詰に直接入れる際は、他のものに汁がうつらないよう堅めに絞りますが、今回は小鉢に入れて詰めるので、少し汁気を残してしっとりと仕上げます。
松茸御飯は冷めた頃に俵形に握ります。
5.食べよく盛りつける
持ち運んだときに動かないようきっちり詰めて、かつ箸は入りやすいように。料理を切る大きさは、詰めやすさではなく食べやすさを第一に考えます。仕切りとして裏白や菊の葉を入れると、味が混じり合うこともなく、見た目も美しくなります。“美しい盛りつけ”は同時に“いただきやすい盛りつけ”でもあるのです。
皿への盛りつけは伸びやかに、ゆとりを持って
家でいただくときの大皿への盛りつけの一例です。空間を生かし、料理同士が等間隔になるよう盛ると美しく見えます。料理の配置は折詰に詰めるときと同様で、土台となるものを奥に、目立たせたい吹き寄せを手前に置きます。ここでも立体的に盛ることが大切です。
下のフォトギャラリーで詳しくご紹介します。 Information
京都での紅葉狩りに
[辻留 京都店]秋の弁当のご案内
- 京都での行楽の際には弁当を買い求めるのも一案。「辻留 京都店」のほか、JR京都伊勢丹や京都髙島屋などの百貨店、新幹線改札内の「京老舗の味 舞妓」でも販売しています。 京都の紅葉の時期に合わせて販売する、秋の弁当6480円(布巾付き)。内容は時期により変わる。辻留 京都店で購入する際は3日前までに予約を。京都市東山区三条通大橋東入3-16 TEL:075(771)1718
【読者限定】イベント案内 紅葉狩り弁当 特別料理教室
今回ご紹介した紅葉狩り弁当を、「辻留 京都店」主人の平 晴彦さんに教わる、本誌読者限定の特別料理教室を開催します。講習の後は食事も楽しめます。京都の紅葉が盛りの頃、名店の弁当を作り、味わい、深まりゆく秋を感じるひとときをお過ごしください。 詳細・応募はこちら>>
撮影/大道雪代
『家庭画報』2022年10月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。