栗のお赤飯はたくさん作ってご近所さんにお分けすると、とても喜ばれます。季節感も大切なご馳走の要素なんですね。詳しいレシピは次ページ>>栗のお赤飯
料理・文/大原千鶴
私の実家の裏山には栗の木が何本かあり、少し行ったところにも栗林があったので、秋になると近所の子供たちと連れ立ってよく栗拾いをしました。
栗といっても皆さんがスーパーでご覧になるような立派な大きな栗ではなく、一つが大体2~3センチの小さなもの。私たちは柴栗とよんでいましたが、正式な名前があるのかどうか……ともかく、小さな栗ですからイガも直径8センチほど。
あちこちに栗やイガが落ちているところで栗拾いが始まります。ぱっかりとイガが割れて落ちているものはいいのですが、イガが閉じたまま落ちるものも多く、栗を取り出すにはちょっとしたテクニックが要ります。
まず閉じたままのイガを固くて平たい地面の上に置き、足でコロコロと転がしながら踏みつけて尖ったイガを寝かせます。十分にイガが寝てくると、中の栗を包んでいる、殻のようなところが見えてきます。
そこをよく見ると割れ目があるので、それが割れるように両足を使って、イガをしごいて殻を割るのです。栗のイガは手に刺さると本当に痛いので、ちょっとお行儀が悪いですが足を使うのが一番なんですよ。
まだ少し青みの残る閉じたイガから取り出した栗は、ザラザラした底の部分がほんのりと白く、なんとも言えず初々しくて、子供ながらその姿がとても綺麗だなぁと感じました。
拾った栗は洗って茹で栗にしてから半分に切ってスプーンで中身をくりとって食べます。小さくても甘くて香りが良く、山の子供たちにとって最高のおやつでした。
6月頃に咲く栗の花、新しい栗はその花の香りがします。春が来て、気持ちのいい季節が過ぎ、むせ返るような栗の花の香りがしてくると間も無く梅雨がやってきます。
梅雨が明け暑い夏が過ぎて木の葉が色づく頃、豊かな実りが山にも与えられ、その頃に6月の花の香りを思い出しながら栗拾いをする。
毎年毎年変わらず続く営み。嬉しいことがあっても、大変なことがあっても、自然はたんたんと生きていく。学ぶべきことが栗の中にもたくさん詰まっているなと思いました。