京都の冬は底冷えがきつく、そんなとき体の芯から温まるあんかけ料理はことのほか喜ばれます。冬ならではの、聖護院かぶらとぐじのうまみたっぷりのみぞれ鍋は、家族に笑顔を運んでくれます。詳しいレシピは次ページ>>ぐじと聖護院かぶらのみぞれ鍋
料理・文/大原千鶴
京都の人はあんかけが好きです。それもそのはず、京都は夏暑く冬が寒いのですが、実はその底冷えたるやなかなか大変なものなのです。
私もお仕事で神戸や大阪、東京などに行きまして帰りに京都駅で電車を降りますと「わぁ。やっぱり京都って寒いわぁ」と、襟元を合わせて背中を丸めてつい小走りになります。
夏が暑いので京都の住宅事情としては夏の暑さをしのぐ工夫はされているのですが、冬の寒さには対応できていません。
ですから、これも旅行で北海道や長野県に冬に行きますと、京都よりも寒いはずの寒冷地が、室内は暖かすぎるくらい暖かく、半袖で過ごせるくらい暖房が効いておりますし、窓も二重窓で隙間風などありません。実のところ寒さの厳しさは京都の方が酷なのです。
そんな京都に住んでいますと、自然と温かいもの、湯気の出たものが恋しくなります。
お料理をあんかけにするとどんなものでも長く温かさを保ってくれますから、必然的にあんかけが好きになるのですね。冬の間はおうどんもあんかけ。それも濃いめのあんでその上にはおろし生姜がたっぷりのっていて、見るからに温かそうです。
まずはそのお丼を両手で包み込むように持って温かさを味わいます。かじかんだ手がようやくほぐれてきたらおもむろに黄金色のあんにお箸を入れ全体を混ぜていただきます。その時の熱さも、湯気も全てが嬉しいお味のうちです。
今回はそんなあんかけをご馳走に仕立てました。冬のご馳走ぐじ。赤甘鯛です。加減に汐が回ったぐじを焼いて骨で出汁を取り、ほぐした身を加えました。みぞれは聖護院かぶら。千枚漬けに使われるあのかぶらです。
甘みがあって肉質が緻密で美味しい聖護院かぶらは、この夏暑く冬寒い京都の伝統野菜。この寒さを我慢しないと食べられないのですから、京都の寒さも悪い事ばかりではなさそうですね。