もともと季節の分かれ目を「節分」といいましたが、今では冬と春の境目をいいます。2月初旬——。立春とはいえ、春は名のみ。節分にちなんでお豆さんの料理をご紹介します。詳しいレシピは次ページ>>料理・文/大原千鶴
節分の日、京都では多くの神社仏閣で「節分祭」がおこなわれます。中でも「四方参り」といって御所の四方の鬼門を守る神社とお寺にお参りすることで最良の邪気払いができるとされています。
節分の前夜、鬼はまず北東の表鬼門の吉田神社に現れ「鬼やらい」で吉田神社を追われます。
次に南東の八坂神社では花街の方に豆まきで追い払われ、南西裏鬼門の壬生寺でも炮烙割りと狂言で追いやられ、最後に北西の北野天満宮まで逃げて行き、そこの社に閉じ込められるというのです。
全部行けると、本当に圧巻ですが、それはそれで大変なので、私は吉田神社だけにお参りに行きます。
前年にいただいたお札やお正月のお飾りを持って行くのですが、夜に行くと火炉祭といってその納められた大量のお札を燃やす大きな焚き火を見ることができます。
京都の冬、特に節分の頃は寒さが厳しいのです。そんな雪がちらつく夜に大きな焚き火を見ると、それはそれは神々しく、自然と手を合わせて拝みたくなります。火のありがたさ、美しさを実感させてくれますね。
また参道にはたくさんの露店が出るのですが、その中に「金太郎いわし」といわれる丸々と太った塩いわしを売るお店があり、店先でもいわしを焼いています。太ったいわしから滴り落ちる脂で辺り一面煙がもうもう、いわしの匂いもすごいのです。
なんでも鬼はいわしの匂いと煙が嫌いらしく、煙を立てていわしを焼くことも節分の厄除けの1つとされています。ですから節分の日は大概の家でいわしを食べます。そして残った頭を柊の枝に刺して玄関に飾ります。ここでもいわしの匂いを鬼が嫌がり、柊の尖った葉が鬼の目を突くことで鬼が入ってこない、とされています。
ここまで嫌がられては鬼がかわいそうな気もしますが、どの家からも追いやられ、封じ込められた鬼が出てこないように北野天満宮では「鬼は外」とは言わないそうです。
どうかこの1年、鬼が現れませんように。
家庭で作る行事食は、由来も併せて子どもに伝えていきたいですね
京都では節分のために塩いわしを求めますと、柊をくださるお店もあります。
節分に塩いわしをいただき、柊の枝にその頭を刺して玄関に飾る——。今でも多くのお家で節分の行事を守っているのでしょう。
金太郎いわしは塩がなれて脂ものっています。たっぷりの大根おろしに柚子の皮を添えてどうぞ。
時間をかけてふっくら炊いたお豆さんはことのほかおいしいもの。
あずきご飯はお決まりのもので、毎月1日と15日にいただきます。健康に過ごすための先人の知恵ですね。