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世紀のテノール歌手・パヴァロッティが愛したイタリア料理

2020.11.18

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パヴァロッティが愛したイタリア料理レシピ 01(全3回) 誰もが知る不世出のテノール歌手、ルチアーノ・パヴァロッティ(1935~2007)の人間味あふれる素顔の魅力を綴った『パヴァロッティとぼく-アシスタント「ティノ」が語るマエストロ最後の日々』。本に書かれている料理にまつわる数々のエピソードからは彼の人間味あふれる魅力が垣間見えてきます。食通のパヴァロッティが愛したイタリア料理のレシピを、翻訳者の楢林麗子さんのエッセイとともにお送りします。

パヴァロッティが亡くなる前の13年間、もっとも信頼され心を通わせた、最後のアシスタント“ティノ”による回顧録。『パヴァロッティとぼく-アシスタント「ティノ」が語るマエストロ最後の日々』 エドウィン・ティノコ(著)楢林麗子(訳)/アルテスパブリッシング刊

01.【パヴァロッティ直伝のレシピ】
トマトとバジルとグリーンピースのタリアテッレ





――ぼくたちは手早く昼食を用意した。いつものようにマエストロはキッチンに愛用のスツールを置いて座り、タリアテッレを作り始めた。トマトとバジルとグリーンピースにオリーブオイルをひとまわしと、削ったパルミジャーノをたっぷり混ぜたものだ。その後スモークサーモン、チーズを食べ、それからデザートにはマチェドニア、そして最後に必ずエスプレッソを飲んだ。このエスプレッソはオルゾという大麦コーヒーで、フェルネット・ブランカとかサンブーカなどのリキュールを入れて飲んだ。(『パヴァロッティとぼく』7節より)


モデナへの郷土愛
文/楢林麗子


『パヴァロッティとぼく』の中には料理や食卓のシーンが数多く登場します。

パヴァロッティはワールドツアーで行く先々のホテルに特注のキッチンを作らせ、イタリアから持参した山のような食材を使い、愛用の鍋やフライパンまで持ち込んで自ら料理をしたのです。

そして、人に食べさせること、友達やスタッフと一緒に食べることもまた大きな喜びとしていました。

パヴァロッティがいともたやすく作るのは、パルミジャーノチーズたっぷりのリゾット、グリーンピースのタリアテッレ、全粒粉のパンにのせたモルタデッラ・ソーセージのアペリティフなど、どれも家庭的な料理、それも伝統的なイタリア・モデナの郷土料理です。

モデナのあるエミリア地方は、パルマの生ハム、パルミジャーノ・レッジャーノチーズ、ボローニャのモルタデッラ・ソーセージ、モデナのバルサミコ酢などの美食の宝庫として知られます。

イタリアのパスタは、地方によって製法や形状が異なりますが、『パヴァロッティとぼく』で何度も登場する卵入りのタリアテッレもエミリア地方発祥のパスタです。

また、パヴァロッティは自慢の食材を手土産にすることに決めていて、スーツケースがパンパンになる理由のひとつでもありました。

ニューヨークのメトロポリタン歌劇場(MET)の芸術監督(当時)ジェイムズ・レヴァインへは2kgものパルミジャーノやまるごとのモルタデッラをプレゼント。――「マエストロはイタリアならではの食料品をプレゼントすることが自分らしくて、いつも喜んでもらえると信じていた」(同12節より)。実際、レヴァインは大喜びだったのです。

世界中を旅しても故郷イタリア・モデナに心を馳せ、まわりのスタッフたちにいつも気を配り、自分で作った料理で人をもてなすことを喜びとしていたパヴァロッティ。素朴な料理の数々からは、王様と言われたパヴァロッティの温かく庶民的な一面が感じられます。

1991年 カリフォルニアの滞在先で自ら料理をするパヴァロッティ。

トマトとバジルとグリーンピースのタリアテッレ
Tagliatelle con pomodoro, basilico, piselli


※パヴァロッティのレシピは家庭料理なので、およその分量を記載してあります。お好みに合わせて調節してください。

●材料(4人分)
・自家製の卵入りタリアテッレまたは市販の乾燥タリアテッレ(卵入りのもの) 400g

・玉ねぎのみじん切り 1/2個分

・パッサータ ※(粗ごししたトマト) 約600g

・生のスイートバジルの葉 20枚くらい

・エクストラヴァージン・オリーブオイル 適宜

・オニオンソルト、ガーリックソルト 適宜

・砂糖 少々

・ゆでたグリーンピース 約60g

・パルミジャーノ・レッジャーノチーズ 約50g

●作り方

1)フライパンにオリーブオイルを適宜たらし、玉ねぎを軽く炒め、オニオンソルトとガーリックソルト(パヴァロッティはマコーミック社のものと決めていた)を少々入れる。

2)パッサータ(※缶詰のホールトマト、カットトマトなどをこしたものでもよい)を加え、酸味をとるために砂糖をひとつまみ入れる。

3)5分ほど煮込み、バジルの葉を手でちぎって入れる。

4)深鍋に湯を沸かし、沸騰したら塩を加えて、自家製タリアテッレ(レシピは第2回で紹介)を入れ、浮いてきたらすぐに取り出し、ざるで水けを切る(市販の乾燥タリアテッレの場合はアルデンテにゆでる)。

5)4)のタリアテッレを3)のフライパンに入れて、ゆでたグリーンピースも加え、混ぜ合わせる。最後にオリーブオイルをまわしかけ、おろしたパルミジャーノを入れてできあがり。

『パヴァロッティとぼく-アシスタント「ティノ」が語るマエストロ最後の日々』


エドウィン・ティノコ 著/楢林麗子 訳/小畑恒夫 日本語版監修 アルテスパブリッッシング刊 ・詳しくはこちら>>
ルチアーノ・パヴァロッティ(Luciano Pavarotti)
1935年10月12日、イタリア・モデナ生まれ。輝かしい歌声から“キング・オブ・ハイC”と讃えられた20世紀最高のテノール歌手。レコード・セールス1億枚。世界で最も売れたクラシック・ヴォーカリストとして知られる。「神に祝福された声」と評されたイタリアの空を思わせる明るく豊かな美声は世界中の人々から愛された。2007年9月6日、モデナにて死去。

エドウィン・ティノコ(Edwin Tinoco)
『パヴァロッティとぼく―アシスタント「ティノ」が語るマエストロ最後の日々』の著者。“ティノ”はパヴァロッティの付けた愛称。ペルー・カハマルカ生まれ。ペルーの首都リマの5つ星ホテル「ラス・アメリカス」で客室担当係として働いていた1995年(当時28歳)にパヴァロッティに出会い、彼が亡くなるまでの13年間、パーソナル・アシスタントを務める。

楢林麗子(ならばやし・れいこ)
翻訳家。「三大テノール」をきっかけにオペラに興味を持ち、鑑賞したイタリア・オペラのビデオやDVDは150本以上、オペラやコンサートは、海外公演約30回、国内公演約90回。好きな言葉は「Never too late(なにごとも遅すぎることはない)」。50歳からイタリア語を学び始めて、『パヴァロッティとぼく―アシスタント「ティノ」が語るマエストロ最後の日々』が初の翻訳となる。
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