(右)一の重:なます、たたきごぼう、田作り、黒豆、数の子
(中)二の重:海老つや煮、鴨ロース、菊花かぶら、海老松風、栗きんとん、錦玉子、鰆さわら南蛮漬け、スモークサーモン、黄身巻き、鯛きずし
(左)三の重:煮しめ
器/銀筋独楽文三段重神様への感謝の料理
おせちは本来、五節句に神様へ捧げる節供(せちく)を意味します。なかでも正月は年神様に節供を捧げ、五穀豊穣、子孫繁栄などを祈念する特別な行事でした。そのため正月の節供を特に「おせち」と呼ぶようになったといわれます。
3時間で仕上げた11品のうち、煮しめを除く10品を魯山人作の大長鉢に盛りつけている。お重でなくてもこのように鉢や大皿などに盛るのもよい。裏白、松葉、南天の枝などを添えると彩りにもなり、料理が映える。取り箸は必ず添えるようにしたい。青竹の取り箸はことに正月にふさわしい。器/伊賀釉長鉢 北大路魯山人 作「家族揃って迎える元旦に今年は3時間おせちをおすすめします」
家族が無事に年を越し、新しい年を迎えられることに感謝しておせちを作る。そのおせちを家族揃って囲む。そんな大事な日本の食文化を皆で受け継ぎ、次代につなげていきたいと村田吉弘さんは考えます。
「一品でも手作りすることが家族の絆を深めます」
そこで3時間ほどであればおせち作りに使えるのでは、と「3時間おせち」案が浮上しました。縁起やいわれが込められた祝い肴は伝統の形を守って。3時間で作るそのほかの料理は現代風でもよいのです。
村田吉弘(むらた・よしひろ)さん京都の名料亭「菊乃井」の3代目主人。近年は日本の食文化を次代につなぐために奔走する。世界への日本食文化の紹介にも尽力し、和食のユネスコ無形文化遺産登録にも大いに貢献する。3時間おせちは段取り命
調理は常に同時進行。電子レンジ、ガス台などの調理器具をフル回転させます。何よりいちばん大事なのは段取りです。余計な手順をそぎ落として、必要なことだけで組み立てます。
村田さんはいいます。「この11品を全部作らんでも、作りやすいと思うものを作ればいい。皆においしいといってもらえたら、来年はもうちょっと数を作ってみようかなと、必ずなります」。
料亭菊乃井の床飾り。花は松と梅もどき。三方には熨斗と打出の小槌を飾り、吉祥を表す。撮影/森山雅智菊乃井の茶室の床飾り。裏白の上に米と炭を重ねただけの簡素な形がむしろ清新な趣である。撮影/森山雅智菊乃井
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