創刊66周年企画[完全保存版]私の最高レストラン66 第12回(全19回) 美味なる思い出は、人生の彩りとなります。創刊66周年を記念し、小誌ゆかりの著名人の「人生の思い出に残る」美食処66軒を紹介します。
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道なき道を切り拓き、常に技を磨き、心震わす一品を生み出し続ける料理人たち。
特集第10回・
11回・12回は世界中の料理人、美食家から一目を置かれ、今、まさに円熟の時を迎える料理人をクローズアップします。
世界が注目する“里山キュイジーヌ"
NARISAWA 成澤由浩さん
「五穀豊穣」。和紙の蓋を開けると、煙とともに現れたのは、酒粕に漬けて炭火焼きにしたさわら。渦状に囲むソースは、ピンクが赤じそ、緑は木の芽と大葉がべース。玄米と黒米のポップライスをあしらっている。料理界の“革新者”が今見据えるもの
2001年に土の料理を提唱して以来、炭の料理、水の料理、さらには“革新的里山料理"と、独自の視点で食のあり方を見つめ、ガストロノミーとサステナブルの両立を世界に発信してきた成澤由浩シェフ。
成澤由浩さん(なりさわ・よしひろ)1969年愛知県生まれ。ヨーロッパで8年間修業後、帰国。小田原に「ラ・ナプール」オープン。2003年青山に移転。11年に店名を「NARISAWA」に。“ワールド50ベストレストラン”では09年から14年間連続で受賞。10年にスペインで行われた世界最高峰の料理学会マドリード・フュージョンでは、世界で最も影響力のあるシェフに選ばれるなど、そのメッセージ力の強さは世界的にも認められています。
そんな成澤シェフの原動力ともいえるのが、“自ら産地を訪れて入手した食材を使用する"という徹底したポリシーです。生産者を訪ね、人と自然が共存する姿を見て、先人たちの知恵に感銘を受ける――こうしたさまざまな経験から生まれたひと皿が「里山の風景」。
「里山の風景」。“森と共に生きる”をテーマに里山の光景を映し出した一品。皿に敷き詰めているのは、だしに含ませて味をつけたおから。緑は苔、黒は土、白は雪をイメージしている。そこには、古来育まれてきた里山文化に対する敬意が込められています。また、色彩豊かな手毬を色とりどりの根菜で模したお椀や豊作の願いと収穫への感謝を込め「五穀豊穣」と名づけた一品も同様。
日本の食文化の本質を、ジャンルにとらわれることなく、独自のフィルターを通して現代に甦らせることが成澤シェフの目指すところです。とはいえ、その料理は決して難解なものではありません。「まずおいしくなくては。本能的にうまいと感じる料理でお客さまに喜んでいただくことが大切。哲学はその後につながるもの」と成澤シェフ。
美味の向こう側にある自然環境を守り続けることを考える――それが、ひいてはガストロノミーにつながることをNARISAWAは舌を通して伝えています。
下のフォトギャラリーで詳しくご紹介します。 Information
NARISAWA
東京都港区南青山2-6-15
TEL | 03(5785)0799 |
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営業時間 | 12時〜14時30分(12時30分LO)、17時30分〜20時(18時LO) |
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定休日 | 日曜・月曜定休 |
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撮影/阿部 浩 取材・文/森脇慶子
『家庭画報』2023年3月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。