私の最高レストラン66 第15回(全19回) 美味なる思い出は、人生の彩りとなります。創刊66周年を記念し、家庭画報ゆかりの著名人の「人生の思い出に残る」美食処66軒を紹介します。
前回の記事はこちら>> 2023年、グルマンはここを目指す。旅の目的地(デスティネーション)にしたいレストラン
日本各地の豊かな自然に魅せられたシェフがその土地の恵みから作り出す料理は、まさにそこでしか出合えない特別な味。ここからは、新しく誕生した3軒のデスティネーションレストラン(「オーベルジュ オーフ」、3月10日配信予定「ソウア」、3月13日配信予定「ときと」)をご紹介します。もちろんすべて宿泊も可能。美味なる旅へ出かけましょう。
シェフからの挨拶代わりのアミューズ3品。隣接する「農口尚彦研究所」の仕込み水に季節の香りを移して(上)。その右は、同研究所の酒粕焼酎につけ込んだどじょうのフリット。山でとれた山椒の風味。下はぬかとよもぎ入り丸いものドーナツ。上にこんかさばをのせて。上左は、加賀れんこんのチップス、黒こしょうとコリアンダー風味。オーベルジュ オーフ
石川・観音下(かながそ)
左から、厨房の若手料理人、坂口 功さん、糸井章太シェフ、スーシェフの山本渚生さん、ソムリエの等々力竜輝さん。スタッフの平均年齢は25歳。フレッシュなチームでオーベルジュを運営している。新進気鋭のシェフが迎える元小学校のオーベルジュへ
「菊芋 大麦 アオリイカ」。菊いものピュレとあおりいか、大麦を合わせ、まわりには菊いものチップスを。ライムのヴィネグレットが味を引き締める。器は森岡希世子作。観音下の土地の恵みに魅せられて
石川県小松市観音下町。緑豊かな里山の地で、廃校となった小学校がオーベルジュとして生まれ変わりました。レストランを率いるのは糸井章太シェフ。
「イノベーティブのその先を目指したい」と糸井シェフ。日本最大の料理コンペティション「RED U-35」において、史上最年少の26歳でグランプリを受賞した気鋭の料理人です。
「このエリアは食材の種類が豊富。海に近くて魚介類が素晴らしいのはもちろん、僕らは川でさわがにを、山で野草をとることができます」。店のオープン前から移住して土地の暮らしや食材になじんできた、その成果がお皿の上で花開いています。
すべての料理に地元の食材が使われ、このエリアだけで生産される蛍米、こんかさば(さばのぬか漬け)など、この土地ならではの味が満載。和食やエスニックのエスプリも感じられる料理が多いのは、スパイスやハーブを独創的に使っているから。テクニックはフランス料理のものであっても、香りで印象づけるのが糸井流です。
「サワラ 春菊 発酵玉ねぎ」。皮目を焼き、藁で燻したさわらに、春菊のソテーと春菊オイル、チャツネ、発酵玉ねぎを添えて。厨房の向かいには発酵ルームがある。隣接する酒蔵「農口尚彦研究所」の酒粕、自生している山椒や黒文字、地元で育てられた柚子やレモングラスなどの香りが鼻に抜けて深い味わいとなり、記憶に残ります。11品ほどの料理をデザートまでいただいたらラウンジへ。現代アートを眺めながら、食事の余韻に浸る贅沢なひとときとなることでしょう。
下のフォトギャラリーで詳しくご紹介します。 Information
オーベルジュ オーフ
石川県小松市観音下町口48
- 食事はランチ(土曜・日曜・祝日のみ)12時〜13時、ディナー(火曜・水曜定休 祝日の場合は営業)17時30分〜20時(ともにLO) コース1万6500円〜 要予約 個室1室 宿泊は1室2名利用で1泊2食付き1名2万6400円〜
撮影/鍋島徳恭 取材・文/北村美香
『家庭画報』2023年3月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。