私の最高レストラン66 第17回(全19回) 美味なる思い出は、人生の彩りとなります。創刊66周年を記念し、家庭画報ゆかりの著名人の「人生の思い出に残る」美食処66軒を紹介します。
前回の記事はこちら>> 2023年、グルマンはここを目指す。旅の目的地(デスティネーション)にしたいレストラン
日本各地の豊かな自然に魅せられたシェフがその土地の恵みから作り出す料理は、まさにそこでしか出合えない特別な味。ここからは、新しく誕生した3軒のデスティネーションレストラン(
「オーベルジュ オーフ」、
「ソウア」、「ときと」)をご紹介します。
もちろんすべて宿泊も可能。美味なる旅へ出かけましょう。
オーベルジュ ときと
東京・立川
左から、料理長でもある大河原謙治総支配人。石井義典総合プロデューサー 総料理長。イタリアでも修業を重ねた日山浩輝料理長。総料理長が作陶する器で味わう新しい日本料理
東京・立川。かつて立川飛行場があり、第二次世界大戦時には特攻機が飛び立ちました。特攻隊員へ最後の晩餐が振舞われたといわれる歴史ある料亭が、この春、和のオーベルジュに生まれ変わります。切り盛りするのは3人の料理人。
「京都吉兆」で出会い、国内外でそれぞれ経験を重ねた後、ここに再結集しました。
「ほっこり“まぐろ節を食べる Ome ファームの蕪”」。器は旧無門庵紅葉 高台椀。近年、食べる機会が減ったまぐろ節を味わってほしいと、削りたてのまぐろ節に醬油をまぶした焼きかぶを合わせた一品。春はたけのこに。「海外で、日本の食材のパワーを改めて実感しました。懐石のルールも大切にしながら、より食材に寄り添った料理を作りたい」と話すのは、総合プロデューサーで総料理長の石井義典さん。
陶房で作陶する石井さん。自ら生産者を訪ねて丹誠込められた食材を見つけるのはもちろん、地方の消えゆく素材や、活用方法がないと捨てられているものの魅力を見直し、料理に生かします。
左・「離島“うじお 五島列島大紋はた”」。はたの刺し身に液体状の塩を添えて。器は堀口切子。器の下には石井さんお手製の版画のメッセージカード。右・「地冷栄“太田さんが仕留めた猪の沢煮 根室カジカ節 立川うどと根野菜”」。そんな広い視野から生み出すからでしょう、余分な手を加えずストレートに食材の味や香りが引き出されています。もちろん、日本料理の技を駆使した繊細な仕立ても。その技と味の多彩さに驚かされます。東京の新しいリゾートとして、大いなる楽しみを発信してくれる新生オーベルジュ。覚えておきたい一軒です。
下のフォトギャラリーで詳しくご紹介します。 Information
オーベルジュ ときと
東京都立川市錦町1-24-26
- コース2万2000円 要予約 個室3室 宿泊は1室2名利用で1泊2食付き1名9万3500円 2023年春開業予定。2月中旬以降予約受け付け開始。
撮影/大泉省吾 取材・文/北村美香 ※京都吉兆の「吉」は、正しい表記は旧字体の「土のしたに口」です。
『家庭画報』2023年3月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。