「赤坂」の魅力をたずねて 第5回(全9回) 壮麗な迎賓館赤坂離宮、緑に囲まれた神社仏閣などの歴史的建造物と、ビジネス街や賑わいを見せる繁華街が同居し、一流ホテルが建ち並ぶなか路地裏に入ると個性的な飲食店が現れる。赤坂という街は、時間により、場所により、さまざまな表情を見せてくれます。港区赤坂・元赤坂を中心に、周辺エリアも含めてこの街が持つ多面的な魅力をご紹介します。
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1967年の創業時の面影を残す店先で、炭火を熾して焼き物をする料理人の姿もお店の名物。お客さまを迎える女将の純子さんは先代の鈴木正男さんの長女。大通り沿いではなく、小道を少し入った場所においしい香りが漂う料理店が点在するのは赤坂ならではかもしれません。各界の著名人に愛される味を守り続ける名店から勢いのある気鋭店まで。美味なる隠れ家へとご案内します。
【和食の隠れ家で夕膳を】
割烹 津やま
皮はパリッと、身はしっとりと焼かれた「きんきの塩焼き」。程よい塩気でお酒が進む。手書きのお品書きにはシンプルな料理がずらり。各界の著名人に愛される端正な味
静かな路地で創業52年を迎える「割烹 津やま」は、政治家や著名人が通い続ける赤坂の名店。風格溢れる暖簾をくぐるとどこか温かみのある空気に包まれ、ふわりと緊張がほどけます。
1階はカウンター8席とテーブル席。2階には個室もある。「“かっこつけない”と“気取らない”が義父のモットーでした。そのせいか、うちのカウンターでは肩書きのあるかたがたも鎧を脱いでリラックスしているようにお見受けします」。
そう語るのは、修業時代に婿入りした二代目の鈴木弘政さん。厨房で先代から奥義を授かった、老舗の味の継承者です。
先付4点盛り。左奥の「鯛の中落ちの飯蒸し」以外は週替わり。料理は“ぼけた味”ではなく、“はっきりした味”に仕上げるのが「割烹津やま」流。
例えば「きんきの塩焼き」は、しっかり塩をふってうまみを引き立てた逸品です。魚は焼く前にひと塩して水分を抜くなど、丁寧な仕込みもこちらの特徴。
たけのこ、しいたけ、三つ葉などの野菜と豚の背脂を細く切って炒め、お椀に仕立てた「沢煮椀」。秋は松茸も使用。「沢煮椀」の野菜の上品な香りは、見事な包丁仕事の賜物です。「鯛茶漬け」などの名物は、7品のコースに組み込むことも可能。飾らぬ端正な味わいに、名店の貫禄が光ります。
割烹 津やま(かっぽう つやま)
東京都港区赤坂2-14-7
TEL:03(3583)2482
営業時間:17時30分~21時30分(最終入店)
日曜・祝日定休、土曜不定休
夜コース2万5000円、アラカルトの予算2万5000円
個室3室 要予約
*通常は紹介制ですが、土曜のみ特別に本誌読者の予約をお受けします。