「赤坂」の魅力をたずねて 第6回(全9回) 壮麗な迎賓館赤坂離宮、緑に囲まれた神社仏閣などの歴史的建造物と、ビジネス街や賑わいを見せる繁華街が同居し、一流ホテルが建ち並ぶなか路地裏に入ると個性的な飲食店が現れる。赤坂という街は、時間により、場所により、さまざまな表情を見せてくれます。港区赤坂・元赤坂を中心に、周辺エリアも含めてこの街が持つ多面的な魅力をご紹介します。
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「静かに燃える炎や煙の香りは、懐かしさを誘います。『かますの杉板焼き』は、そんな郷愁とともに味わっていただきたい一品です」と主人・村田吉弘さん。情緒ある日本家屋で京料理の心に触れる
乃木神社が近づいてくると、赤坂通りの表情もまた変わり、住宅街の趣をたたえるようになります。そして一本裏に入れば、名だたる店がさりげなく点在するのも、この辺りならでは。
竹林に囲まれた石畳の露地。その奥を曲がると京数寄屋が迎えてくれる。そんな静かなエリアの雰囲気をゆっくり味わえるのがお昼のひとときです。「赤坂 菊乃井」でも趣向を凝らした、お昼ならではの京料理がいただけます。
鮟肝としめじ、くわい煎餅、鴨肝の松風、粉吹銀杏、紅葉烏賊などが彩りよく盛り込まれた「八寸」。まずは一献いただいて、口福の昼膳の幕開けを。霜月、11月。献立の始まり「八寸」の蓋を開けた瞬間、冬の訪れも近いことを実感します。黄葉や紅葉のあしらいの上には、寒くなるにつれ味わいを増す鮟肝や鴨が。
甘鯛の下には、粟と道明寺粉で作られた小さなお団子が。「五穀の一つ・粟を料理に使いたくて」と村田さんが考案した「甘鯛粟蒸し」。この季節の京料理には欠かせない甘鯛も、あでやかな緑の菊菜あんとともに「蓋物」で。
杉板が燻されるほのかな香りと煙とともに食卓に登場するのは、「焼物」のかますの杉板焼き。ジビエであるうずらは、みぞれ鍋仕立てで。
締めくくりのくるみのカステラまでの流れは、まるで季節の絵巻物を見ているよう。京都から離れた赤坂の街で味わうと、京料理の新たな魅力に出会えるかもしれません。
「東京のお客さまが足を運びやすいように」、1階はカウンター席とテーブル席、そして小上がりのみ。京都の本店と同じく中村外二工務店が手がけた清閑な内装に、京都気分も高まる。赤坂 菊乃井(あかさか きくのい)
東京都港区赤坂6-13-8
TEL:03(3568)6055
12時~12時30分(LO)、 17時~19時30分(LO)
日曜、第1・第3月曜定休
昼懐石1万円、夜懐石1万5000円~
座敷4室 要予約