“静寂”を味わえる、とっておきの場所へ「秘密の京都」 第7回(全12回) 多くの観光客で賑わう街の喧騒から逃れ、静かに、心豊かに古都の魅力を堪能できる。そんなとっておきの場所が、京都にはまだたくさんあります。非公開の寺院で特別な体験をし、地元のかたが愛する名店の味に舌鼓を打ち、美の新名所で心を潤す......。この春、“秘密の京都”があなたの訪れを待っています。
前回の記事はこちら>> 郊外に、街中に、ひっそりと佇む
今、注目の隠れた美味処へ
京都の中心部から離れた店、“市中の山居”を思わせる店など、今の料理店選びのキーワードは「喧騒を離れた静かな立地」です。
旬の食材がおまかせで楽しめる料理店へご案内します。
手前は1人前の小鍋で出される「朝採り野菜の丸鍋」。天然のクレソンは近くの山の湧き水で育ったもの。奥は「新筍と赤貝 春薫るジュレ」。ふきのとうのジュレのほろ苦さが、春がすぐそこまで来ていることを告げる。【おたぎ】
洛北鷹峯で冬の名残と早春の香りに出会う
江戸時代初期に本阿弥光悦が芸術村を築いた洛北、鷹峯。この地にひっそりと暖簾を掲げるモダンな平屋建ての料理店「おたぎ」。
庭を背にゆったりと設えられたカウンターは8席。奥に4人掛けのテーブル席が2卓ある。日が暮れて店の灯りがつく頃、この店でしか出会えない季節ごとの美味を求めて、8席のカウンターに京都市内外から食に通じた人々が集い、賑わいます。
早春、料理の主役となるのは、鷹峯の山で採れた山菜と、店近くの畑で育てられた根菜たち。
「この日のおまかせコースは、まだ肌寒い冬の名残と、もうすぐ訪れる春を感じさせる食材を組み合わせて考えました」と鷹峯で育ったご主人の馬場一彰さん。
うど、こごみ、うるいなどをのせた「地山菜の手打ち冷麺」。そば、そうめんなど、ご主人自ら手打ちする麺がコースの合間に出される。先付けの後に出されるのは、金時にんじん、小かぶら、天然のクレソンの入ったあつあつの丸鍋。
体を温めてほっとしたところに続くのが、赤貝とたけのこのお造り。かけられたふきのとう入りのジュレから春の息吹が立ち上ります。
冬には味噌仕立ての和風ビーフシチューも登場、オーソドックスな料理を主体にしつつ、ひとひねり加えた一品を織り交ぜながら楽しませてくれます。
ご主人の馬場さんは毎朝店近くにある幼なじみの農家の畑に立ち寄り、収穫したばかりの野菜を仕入れるのが日課。【推薦者】
藤井寿子さん(花フジ活花店)
ほんわりとしたお人柄ながらしっかりとしたお料理を出すご主人に、縁の下の力持ちをしっかりと務める魅力的な奥さま、何より“人がおいしい”お店と思います。
決して奇をてらうことなく、食材、器など料理全体から四季折々の情景を感じさせてくれます。
おたぎ住所:京都市北区鷹峯土天井町18
TEL:075(492)1771
営業時間:17時30分~20時(LO)
定休日:水曜定休、ほか不定休あり
※要予約 コース2万円