名産地・名店で味わう、家庭で楽しむ 究極のアワビ三昧 第7回(全8回) 夏に旬を迎えるアワビは、磯の香りが清々しい美味なる食材。都心の名店で心ゆくまで味わいたい極上のアワビ料理やお取り寄せ情報をお届けします。
前回の記事はこちら>> 蒸しアワビは江戸前寿司の夏の華
人形町㐂寿司(きずし)油井一浩さん
5月の中頃、千葉のアワビが解禁になると、順番に各地のアワビが入ってきます。その頃になると、蒸しアワビの季節ですね。蒸しアワビといっていますが、伝統的に江戸前のアワビは煮るんです。しっかり洗って湯びきして、さらにもう一度洗ってから、殻をはずして煮ます。
殻を入れると苦みが出ますね。酒と塩、水だけで煮るのですが、途中で金箸で身を突き刺して、エキスを出すようにします。汁が真っ白に白濁してエキスが出た汁につけたまま冷まします。こうして身にエキスの味を含ませるんです。
蒸しアワビはマダカアワビが一番ですが、雌貝アワビもします。握りにするときは穴子のツメを塗ってお出しするので、塩は薄め。季節になって大きいマダカアワビが手に入れば、煮ているときからとうもろこしみたいな甘いいい香りがしますよ。本当に季節ならではの握りですね。
アワビの握り3種左から生の黒アワビ、肝の甘辛煮、ツメを塗った蒸しアワビ。それぞれ食感も香りも甘みも異なり、アワビの味の幅、奥行きを感じられる。㐂寿司ならではのきりっとした寿司めしがアワビの甘さを引き立てる。もちろん、生のアワビもお出ししていますから、生、蒸しアワビ、そして甘辛く煮た肝の3種の握りで楽しんでいただけます。
生の磯の香りがふんだんにする黒アワビはおつまみで食べるのが好みですね。(談)
アワビちらし
今回特別に作っていただいた、蒸しアワビだけのちらし寿司。一桶に今日のアワビのサイズなら1個半以上入る、という贅沢なもの。寿司めしには定番の、かんぴょう、しいたけ、刻みのり、刻んだガリが混ぜ込まれている。
金箸で刺しながら煮て、うまみエキスを引き出す
アワビの最初の下ごしらえはひたすら磨くといってもいい。たわしで白くなるまでしっかりこすり洗いをし、殻から身をはずす。
さっと湯びきをした後、さらにもう一度たわしでこすり洗いをして磨き上げる。
鍋に入れて酒と水、塩だけで煮始めたら、ひたすら金箸でトントンと突き続ける。
いったん沸いたところであくを引き、さらに突き続けると汁はどんどん白くなっていく。こうしてうまみの出た汁につけて冷ます、どぶ漬けの手法が江戸前。
油井一浩さん
㐂寿司の4代目としてつけ場に立つ。手に持つのは雌貝アワビとマダカアワビ。代々の仕入れ先から特別に仕入れるアワビは、老舗ならではの素材。蒸しアワビの木札がつけ台の上に掲げられるようになると、夏の到来。
Information
人形町㐂寿司
東京都中央区日本橋人形町2-7-13
TEL | 03(3666)1682 |
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営業時間 | 11時45分~14時30分、17時~21時30分(平日)、~21時(土曜) |
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定休日 | 日曜、祝日定休 |
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- 昼おまかせ1万3200円~、夜おまかせ1万6500円~。蒸しアワビの握りは季節によって注文可。アワビちらしも注文でき、こちらは約5万円。要予約。
〔特集〕名産地・名店で味わう、家庭で楽しむ 究極のアワビ三昧
撮影/本誌・坂本正行 取材・文/久保香菜子
『家庭画報』2021年6月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。