家庭画報の手土産 第22回(全28回) 美しく、そして美味しい手土産は、私たちにとって相手を大切に想う心を伝える必携アイテムです。この特集では家庭画報ゆかりの皆さまや、家庭画報編集部の「美味手帖」から選りすぐりのアイテムを、セレクトしたエピソードとともにご紹介します。
前回の記事はこちら>> お煎餅&あられ界に新しい風!プレミアムなお煎餅
遡れば、その原型は起源前からあり、日本へは空海が中国から持ち込んだといわれるお煎餅。日持ちのよさから進物の定番ですが、かつての常識を一新したところから、新たなトレンドが生まれています。
それが東京・葛飾区の青戸にある「富士見堂」の「あんこ天米」。店頭には行列がたえません。「このふわっとサクっとした食感は何?」と煎餅好きをうならせたヒット煎餅「白ほおばり」もここの商品。人気の理由に迫ります。
本店に隣接する工場で作られる「あんこ天米」。薄焼きの天米に、割れないようあんこをそっと挟む。パリッとした食感に湿気は大敵。湿気を呼ばない餡に美味しさの秘密がある。東京都葛飾区は江戸時代“葛西3万石”と呼ばれた穀倉地帯。ほぼ中央の青戸ではお煎餅の生産が盛んで現在は3軒がその伝統を守っています。
なかでも「富士見堂」は新たな取り組みで人気を集め、百貨店での催事出店などは長い行列ができるほど。人気の的は米の粒感が残るしょっぱいお煎餅に甘い餡を挟んだ“あんこ天米(てんべい)”。
奥は「白ほおばり」(648円)左が塩味、右が醬油味。山椒塩の小袋がついている。手前が「あんこ天米」(1枚189円)。伊勢丹新宿店の本館地下1階でも販売中。「餡を挟んでも湿けずお煎餅はパリパリしたままで、賞味期限は餡ものにしては長い約50日。これを実現するにはさまざまな工夫が必要でしたが生地作りから自社で行うからこそ実現できた商品」と語る3代目の佐々木健雄さん。
創業70年を迎える富士見堂3代目の佐々木健雄さん。卸しから自家ブランドへの転換を図り、地元が誇る人気店に。発売当初から安定した人気の“白ほおばり”は空気を含ませるように揚げる技により、驚くほど軽い食感が魅力です。
「季節の限定商品にも力を入れています。来年もまた食べたいと来る季節を待っていただけるような記憶に残る旬のお煎餅を作っていきたいです」
季節の花が迎えてくれる青砥本店。下のフォトギャラリーで詳しくご紹介します。 撮影/本誌・坂本正行 構成・取材・文/安藤菜穂子 取材協力/久保香菜子 平岩理緒
『家庭画報』2022年11月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。