驚きと感動の“美味逸品” 第5回(全29回) 料理は、言葉より雄弁にその国のことを物語ります。駐日大使公邸のおもてなしを拝見し、世界各国の料理をレストランで楽しみ、珍しいスパイスやハーブに出合える食材店を巡る――私たちの周りにたくさんある“日本の中の外国”へご案内します。
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クリスマスはベルギー人にとって家族の愛を育む大切なとき
大使公邸のダイニングにて、睦まじく並ぶロクサンヌ・ドゥ・ビルデルリング大使と夫のステファンさん。紋章の入ったプレートと、ツリーの形にあしらわれた可愛らしい赤いナプキンがお客さま一人一人を華やかにお出迎え。オマール海老、七面鳥。聖夜には特別な食材を使ったコースを
クリスマスには特別仕立てのオマール海老が登場。旬の根セロリとりんごを合わせ、上品なサラダに。「ベルギー人の主食」ともいわれているじゃがいもと、ポワロー葱の濃厚な甘さが際立つスープは、冷えた体を温める。ベルギーでは、大切な行事の際は必ず仲間で食卓を囲みます。特にクリスマスは、家族との食事の時間がメインイベントです。
「イヴのディナーは親戚一同が集まります。スパークリングワインから始まり、全員が揃ったら、持ち寄った料理をおしゃべりしながらいただきます。日付が変わると“メリークリスマス!”といい合い、昼にはまたクリスマスランチで集うので、ずっと食べ続けている感じですね」と微笑みながら語るドゥ・ビルデルリング大使。
[駐日ベルギー大使] ロクサンヌ・ドゥ・ビルデルリングさんベルギー中南部のナミュール地方出身。通訳とフランス語教師を経て、2000年にベルギー外務省へ入省。ケニア、南アフリカ、コンゴでの大使館勤務の後、19年の8月に駐日ベルギー大使に。4人の子どもの母親でもある。「日本に来てからは、日光の中禅寺湖にある大使館の別荘でクリスマスを過ごしています。海外に住んでいる子どもたちも来日し、家族揃って雪景色と暖炉の趣に浸ります」。
この日は公邸にゲストをお招きし、大人だけで贅を尽くしたディナーを楽しみます。クリスマスソングが流れる中、銀器のトレーに並ぶ10種ものベルギービールを大使夫妻がゲストに直接ご紹介。素敵なおもてなしのもと、おいしく優雅なひとときを過ごします。
七面鳥の丸焼きを切ると、栗、玉ねぎのブイヨン炒めを角切りパンに吸わせた詰めものが顔を出す。付け合わせは首都の名を取ったブリュッセルスプラウト(芽キャベツ)とじゃがいも。シコン(ベルギーチコリ)のグラタンとともに。大人も子どもも、クリスマスの楽しみは1か月続く
ブッシュ・ド・ノエルは、暖炉で燃やす薪に由来するといわれている伝統的なクリスマスデザート。大使の好みでモダンさをひと匙加え、ベルギー産のダークチョコレートとミルクチョコレートをふんだんに使っている。クリスマスシーズンは12月6日の「聖ニコラの日」から始まり、約1か月続きます。街全体がクリスマス一色に染まる中、ひときわ賑わうクリスマスマーケットの出店には、食事だけでなく、グリューワインやホットチョコレート、手作り小物や飾りつけの品々もあり、クリスマスプレゼント探しにぴったりの場所です。都市に出ると、アイススケートリンクが広場に設営され、ホリデームードに包まれます。
大使にとって子どもの頃から今もなお、クリスマスシーズンの一番の楽しみは「シークレットサンタ」という、プレゼント交換の風習です。家族内で一人ずつくじを引き、それぞれが引いた名前の人の「秘密の(シークレット)サンタ」として、決められた予算内でプレゼントを準備します。自分のサンタが誰なのか、どんなプレゼントなのかはクリスマス当日まで明かされません。
「第一子を授かったとき、ちょうどクリスマスの時期だったので、編み物が好きな夫の母に編み物セットと子ども服の型を贈り、妊娠発表をしました」と振り返る大使。子どもから大人まで、心待ちにしているイベントです。
下のフォトギャラリーで詳しくご紹介します。 撮影/阿部 浩
『家庭画報』2022年12月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。