進化するホームシアター&音楽のある、夢のライフスタイル拝見「わが家コンサート」のすすめ 第6回(全9回) 家で過ごす時間が長くなる今、俄然、注目が集まっているのが家庭内のAV環境。一方でリアルな楽器の学びなおしのブームもあり、自宅で生の音楽を楽しむ文化も多様な形で成熟しつつあります。音楽と映像を愛する豊かな暮らしを訪ね、わが家を“感動劇場”に変えるヒントを探ります。
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「わが家コンサート」のできる家
音楽には空間の質を変える力があります。そして、人生に潤いをもたらします。
また、自宅に音楽が思いきり楽しめる空間をつくると、サロンとしても活用できます。街に開かれたコンサートホールのある住まいをご紹介します。
「コンサートのできる小さな家」の間取り2例
最高の音を響かせる五角形のホール:底面が正五角形のピアノホール。天窓やS字形の窓から入る光が刻々と変わる。Sは姓の鈴木とサラさんの頭文字を掛けたもの。1.五角形のピアノホールのある家
──鈴木邸 (愛知)
郊外の住宅地に建つこの家は、底面が五角形と長方形の棟を合体したような形。五角形部分は目下、音大を目指す一人娘のためのピアノホールです。
鈴木さん夫妻は娘のサラさんの音楽的なセンスを小さい頃から感じ、才能をじっくり育てたいと一流のピアノを購入して、その音を最大限生かせるホールを主役にした家をつくろうと考えました。
竣工まもない頃。小学生だったサラさんが弾いているのはベーゼンドルファーの名器「Model 225」。設計を手がけた上野英二さんに「住まいは楽屋でいいとお願いしました」と夫の完二さんは笑います。上野さんは音響設計の専門家も交えてホールの最善の形について検討を重ね、最終的に現在のプランに決定。正五角形の空間は音を乱反射するため、どの位置でも同じように聞こえるそうです。
美しい木組みのホールは「外にいるような心地よさと、しっかり守られているという安心感があります。天窓とS字の窓からの光は季節や時間とともに変わっていくので一日中いても心地いい空間です」とサラさん。今後も末長く大切に使われていくことでしょう。
水盤のある庭から見た外観。五角形のホールと住居の関係がよくわかる。木がふんだんに使われたLDK。鈴木邸の平面図
玄関の左手に正五角形の2層吹き抜けのホール、右手に住居を配置。今も和室に川の字で寝ていて、平屋暮らしに近いそうだ。ピアノホールのS字窓は図面の左下にあり、ここから差す西日が美しいという。
設計/オークヴィレッジ木造建築研究所