進化するホームシアター&音楽のある、夢のライフスタイル拝見「わが家コンサート」のすすめ 第7回(全9回) 家で過ごす時間が長くなる今、俄然、注目が集まっているのが家庭内のAV環境。一方でリアルな楽器の学びなおしのブームもあり、自宅で生の音楽を楽しむ文化も多様な形で成熟しつつあります。音楽と映像を愛する豊かな暮らしを訪ね、わが家を“感動劇場”に変えるヒントを探ります。
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─I邸 (福岡)
緑深き筑豊の山々とのどかな川を望む福岡県行橋市の郊外に、存在感を放ちながらも自然になじむI邸。地域の音楽教育にもかかわるIさんが夢に描いたのは、音楽と暮らしを共存させたスケール感のある家でした。
小さな丸窓がある中2階の和室からも窓越しにコンサートの様子や庭の景色が見下ろせる。(2015年撮影)「プロの音楽家の演奏を聴きながら、地域の人たちと交流を深められる文化サロンを兼ねた空間を作ってほしいというのが一番の希望でした」と語るIさん。
そのリクエストを、チューブのようなU字の天井とコンクリート壁を骨格とする建物で実現したのは、福岡に拠点を置く建築家の末廣香織(かおる)さんと末廣宣子さん。
家族団欒の安らぎの場と音楽交流する場を兼ねたリビングは、約45平方メートルの広さ。本物の音楽を楽しめる交流の場に──
杉板の型押し仕上げにしたコンクリート壁、白く塗ったU字形の天井、2面の庭からなる開放的なリビング。音楽ホールを兼ねたリビングは、トップライトの一部が開閉できる吹き抜けや二方の庭がもたらす爽やかな開放感で居住空間としての快適さを生む一方で、音楽ホールとして機能性も追求されました。
コンクリート壁とU字形の曲線で構成されたスケール感たっぷりのI邸。南北に4つの庭があり、趣を生んでいる。壁には吸音材を埋め込んだ穴を複数開けて残響時間が短くなるようにし、建具にも吸音材を使用。さらに湾曲した天井は陽光を室内に拡散するだけでなく、楽器の音を拡散させる役割も果たしています。
コンサートにはIさんが指導する高校の吹奏楽部の生徒も参加し、プロの演奏を体感。(2015年撮影)「30人入っても窮屈でなく、1人でも寂しくない空間に」という希望どおり、普段は家族団欒の場になり、コンサート時には40名近い人を収容。
アートを飾る玄関ホールや庭も地域に開放し、交流の場を広げながら、暮らしをより心豊かなものへと昇華させています。
曲面同士の間にはトップライト、目の前に庭があり、終日明るく季節のうつろいを感じながら過ごせるダイニングキッチン。カウンターとテーブルは幅を揃えて作られたもの。 〔特集〕進化するホームシアター&音楽のある、夢のライフスタイル拝見「わが家コンサート」のすすめ
撮影/本誌・坂本正行 岡本公二 取材・文/西村晶子
『家庭画報』2021年4月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。