「美しい家具」と暮らす 第5回(全21回) おうち時間の質が求められる時代にあって、インテリアの世界では本物志向のハイエンド家具の動きが好調です。空間と時間の価値を高めてくれる、「美しい家具」のある暮らしを訪ねました。
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Vol.3 Fritz Hansen(フリッツ・ハンセン)
日本家屋に似合うデーニッシュ ラグジュアリー
M邸(京都)【ケアホルムの家具の凜とした佇まいと相和す静謐な空間】松坂屋初代社長の別邸だったという古い民家を改修。細切れの部屋があった中央部分の柱を取り払い、太い梁で支えることで約40畳のリビングに。年ごとに味わいを増すソファ「PK31」など、家具はすべてデンマークの鬼才ポール・ケアホルムのデザイン。金属の脚が醸し出す緊張感、座面が床から浮いたフォルムの軽さが和の空間とマッチ。手前の2脚の間にあるのは折りたたみ椅子「PK91」。Mさんのアイディアで、ガラス板をのせてサイドテーブルとして使用。座面の低さ、簡素なデザインに日本の暮らしとの共通項
京都・嵐山の一角にひっそりと佇む茅葺きの家。苔むした和庭を通り、玄関から一歩室内に入ると、思いがけない光景が待ち受けています。
床は畳ではなく板の間で、置かれているのはデンマークの巨匠、ポール・ケアホルムが手がけた家具。北欧デザインといえば温かみのある木の家具をイメージしますが、ケアホルムの家具はスチールを多用した革新的な構造とミニマルなデザインが特徴です。伝統的な日本家屋に、金属を用いた洋家具という組み合わせには驚かされますが、不思議としっくりなじんで見えます。
この家は学生時代に建築を学んだオーナーのMさんが、宮大工の宮田裕一さんの手を借り、二人三脚で改修したもの。Mさんはイタリア人の友人の「日本には素晴らしい住文化があるのに、日本人は新しい家ばかり建てている」という言葉を聞いて一念発起。
何年も古い茅葺きの家を探し続け、今の建物に出会いました。伸び切った庭木に隠れ、屋根も朽ちかけていましたが、なんとかなると即購入し、3年がかりで庭と家をリフォームしたそうです。