英国ポタリーのある暮らし 第6回(全8回) 英国近現代陶芸の礎は、世界中でスペイン風邪が猛威を振るった頃と重なる1920年に、陶芸家のバーナード・リーチと濱田庄司がともに大志を抱いて船で英国へ渡り、東洋式の登り窯を築いたことに始まります。そして、当時二人が研究し再現したスリップウェアは、日本における民藝運動の原動力にもなりました。それから100年、英国は2000以上ものスタジオ・ポタリー(陶芸工房)が存在する欧州随一の陶芸大国に。両国の絆を象徴するスリップウェアを中心に、英国陶芸の今をご紹介します。
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英国伝統の一生もの【クライヴ・ボウエンさん】
高火度焼成の丈夫なストーンウェアの需要が高まったことで、20世紀半ば頃に作り手が途絶えてしまったスリップウェア。その再興に力を尽くし、現代に復活させたのがクライヴ・ボウエンさんです。
英国の伝統的なボトル型の窯の前で、焼成前の大皿を手にするクライヴさん。(撮影/坂田和人)1971年に築いた工房があるのは、材料の赤土が採れ、かつてスリップウェアの主産地だった北デボン地方。納屋の天井を突き抜けるほど大きなボトル型の薪窯を焚き、78歳となった今も唯一無二の存在感を放つ器を制作しています。
スポイトのような道具で、素早く描かれていく文様。さまざまな絵柄が楽しめる装飾タイルは人気作品の一つ。(撮影/横堀 聡)作品のけれん味のないフォルムと土地が持つエネルギーを宿した健やかな力強さには、一心にスリップウェアと向き合ってきたクライヴさんの生き様が重なります。
温かく、柔らかく、素朴。一見何気なく見える造形の中に、誰にも真似のできない佇まいと風格を備えたクライヴさんの作品。食器として使うのはもちろん、インテリアデコレーションとして楽しむのも素敵。★スクエアディッシュ(幅32×奥行き32×高さ5.5センチ)5万600円、筒型のジャグのフォルムは中世の水差しを参考にしたもの。★メディーバルジャグ(幅14×奥行き11.5×高さ28.5センチ)5万5000円。(撮影/本誌・西山 航)★がついている作品は誌上販売対象商品です。
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