鏡リュウジ 心の扉を開く タロットと占星術 第2回(全20回) 占いは未来を当てるだけではありません。自らの心の深層を探る──それも役割の一つ。あなたの心の扉を開くために、古の世界観の旅へと鏡リュウジさんが誘います。
前回の記事はこちら>> コロナ禍で再燃したタロット人気「タロットの美しさに秘められたメッセージ」(前編)
シャッフルしてカードを並べ、絵が暗示することを読み取るタロット占い。この美しいカードたちがなぜ占いの道具に?
【エジプト、オリエンタル、動物……古のタロットは時代の気分を映す】上のカードは、18世紀末に初めて占い専用として作られたエテイヤ版タロット。本はキャサリン・ペリー・ハーグレーブ著『トランプの歴史とカードとゲームの書誌学』で、図版は18世紀のドイツのタロット。上2枚はオリエンタル、下は動物のシリーズとある(カードと本/鏡リュウジ蔵 手のクリップ/LECURIO)。カードゲームとして発祥。ヨーロッパ文化の美が宿る
タロットの人気が世界的に再燃している。日本でもタロットの売れ行きはここ数年、倍増しているという。背景にはコロナ禍による在宅時間の長さがあるとも考えられるし、先の見えない不安ゆえの「占い」への依存があるといえそうだ。
しかし、タロット愛の要因をつぶさに見るとそんなネガティブな、そして一時的なものばかりではないように思われる。
世界的に人気を博すハイブランドがタロットの絵をデザインやムービーに全面的に取り入れたのをどう考えるべきか。
アートとしてのタロットをコンセプトとした「東京タロット美術館」が誕生して連日賑わっている。
手前味噌になるが、ぼくが編んだ文芸誌『ユリイカ』の別冊『タロットの世界』は異例の発売前重版になった。いわゆる「占い方」は一切入らず、歴史や文化論を扱う硬質な論文が中心なのに、である。
どうやらタロットは今、従来のおどろおどろしい、あるいはキッチュな占い遊びとは異なる次元で人々の心をつかみ始めているようなのだ。