軽井沢の秘密 第2回(全25回) 恵まれた自然の中で、趣味や「森の生活」を愉しもうとする優雅なライフスタイル、食道楽をうならせる美味、軽井沢人だけが知るスポットなど、知られざる軽井沢の秘密に迫ります。
前回の記事はこちら>> 自然と趣味を愉しむ。高原の優雅な軽井沢ライフを訪ねて
外国人コミュニティにより、西欧の本物のライフスタイルが一式で持ち込まれた軽井沢では、恵まれた自然環境に根差した独自の生活文化が発祥しています。軽井沢を拠点にして、自然と趣味を大いに愉しむ、“理想郷(ユートピア)”の豊かな暮らしを訪ねました。
【森とつながるテラスは、ワイン談義を愉しむ場】カラマツの林を見渡すY邸のリビング。反対側にも同様の大開口がとられ、両側の窓から見える緑の樹木が心をほぐす。ワインを飲みながらこの景色を愉しむため、テラスの手すりはあえて幅広くし、そこにボトルやグラスが置けるようになっている。ワインと現代アートでゲストをもてなす喜び
Yさん(経営者・投資家・大学教授)
【玄関脇に設けたワインカーブ(ディスプレイ用)】アーチ型のドアの奥には、オークの無垢材を使った棚に、約700種類もの国内外のワインが並ぶ。「長年アメリカに住んでいた関係で、なじみがあるのはカリフォルニア州のナパワイン。ほかにもブルゴーニュや長野、山梨のワインなど各種揃えています」とYさん。「ここは世代や肩書きを超えて、カジュアルな交流を愉しむための場所です」と話すのは、ワインと現代アートをこよなく愛するYさん。
カラマツの林に囲まれたご夫妻の別荘は、建築家の坂倉竹之助さんが手がけたものです。坂倉さんは冒頭のYさんの思いを実現するべく、広大な敷地の中に平屋造りのプライベートな寝室棟と、1階部分をピロティとするパブリックなリビング棟からなるL字形の建物を提案。2棟の領域を明確に分け、ともに自然の中に調和させることで、もてなしの要素を備えたリビング棟は“客人ファースト”としてのポテンシャルをより高めることができました。
ピロティから爽やかな風が吹き抜ける庭のテラスには、焚き火のできるファイヤーピットを設置。「ゲストは玄関脇のワインカーブで選んだ好みのワインを手に、庭のテラスでBBQをしたり、2階のリビングでグラス片手にアート談義に花を咲かせたり。人数や天候などに応じて自由に交流を愉しむことができます」とYさん。
東京の家が家族で過ごす場所なら、ここはまさに緑の中の文化サロン。毎年、夏には若手アーティスト数十名を招いての交流会を開いているのだそう。「ワインもアートもどちらも生き物で、人をつなぐ潤滑油となるものです。その魅力をこの家で感じてもらえれば」。
日本を代表する現代アーティストの一人、椿昇さんの作品を中心に、塩田千春さんの絵画や高瀬栞菜さんの油彩、香月美菜さんのペインティング作品などが並ぶリビング。自然に向けて開かれた家には、人の心をも開く豊かな魅力がありました。
設計/坂倉建築研究所(坂倉竹之助、吉田智重、柴田裕輔)
下のフォトギャラリーで詳しくご紹介します。 撮影/本誌・坂本正行 取材・文/冨部志保子 スタイリング協力/山田喜美子
『家庭画報』2022年8月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。