毎日を心豊かに生きるヒント「私の小さな幸せ」 「私の人生はご縁で今がある。先は考えすぎず、決め込みすぎず、目の前の患者さんに向き合っていきます」と穏やかに語る東銀座タカハシクリニックの髙橋博樹先生。人生を変えた出会いやその医師哲学などを伺いました。
一覧はこちら>> 第17回 髙橋 博樹 (「東銀座タカハシクリニック」院長)
「研究するのが好きなので、文献を読むのは楽しいですね。医学の進化は日進月歩ですが、ついていけるよう日々勉強して、治療に役立てたいと思います」髙橋博樹(たかはし・ひろき)1962年4月17日神奈川県生まれ。医学博士。産業医科大学医学部卒業後、同大学病院神経内科入局。新宿海上ビル診療所に勤める傍ら、2004年東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科修了。2008年〜15年タニクリニック副院長。2015年7月東銀座タカハシクリニック開院。「治療法を研究する時間も楽しいですが、元気になって嬉しそうな患者さんの姿を見られるのがなにより幸せです」
東銀座に開院して約7年。こちらでは漢方などの中医学や西洋医学の標準治療のほか、有効な新技術があれば取り入れて、トータル的な視点で治療にあたっています。今の自分があるのはまさに人とのご縁。漫画『ブラック・ジャック』に憧れて医師を志した私ですが、出会いによって導かれ、想像していなかった医師人生を歩んでいます。
「治療の選択肢は多いほどいいので、勉強会などで自ら体験し、効果がありそうなら取り入れています」。その1つががん活性消滅療法。上写真のようにウイルスやがん組織の実物などが入ったプレパラート(標本)を使ったテストで、まず反応を検査する。3人の医師との出会いで変わった人生の方向性
元々は、脳卒中やアルツハイマー病などを専門にする神経内科医を考えていました。漢方薬の可能性を教えてくれた頼建守先生、患者さんを治したいという熱意とバイタリティに溢れていた谷美智士先生、マイクロ波を使った“がん活性消滅療法”という新たな治療法を示してくれた前田華郎先生。尊敬できる個性豊かな3人の医師との出会いが、私の人生を導いてくれたのです。
谷 美智士先生 撮影/鍋島徳恭お三方とも情熱的ですが、特に谷先生はすごかった。エイズ患者の治療にルーマニアへ飛んだり、休日返上で患者さんの薬草探しに奔走したり。いい治療法が見つからないと自ら作り出そうとする。そんな姿に心底驚きました。
「余計なことは考えず、患者さんの診療のことだけ見ればいい」という生き方に多少なりとも影響されたのは間違いありません。その後は自分なりに文献を調べたり、一般的なアプローチ以外にも効果的な治療法がないか、広い視野で考えるようになっていきました
タニクリニックに飾られていた柱時計。そして2015年の2月、谷先生が急逝されてしまいました。突然の出来事で、ご本人も予期されていなかったと思います。新たにクリニックを開いて谷先生の患者さんたちを引き継ぐよう頼まれ、準備期間4か月で「東銀座タカハシクリニック」を開院。
猫好きの谷先生へのオマージュを込め診察券に猫マークを。患者さんや医師仲間から贈られた猫グッズ。診察もしながらの準備で大忙しでしたが、内科、がん、不定愁訴、子どもの自閉症など、谷先生が診ていらした患者さんたちを受け入れてスタートしました。今は漢方薬と、前田先生のところでその効果を実感した、マイクロ波を使ってのがん活性消滅療法を二本柱に、水素療法、ドイツ波動医学などを組み合わせながら、治療にあたっています。
医師として最も大切にしているのは、先入観を持たず患者さんに向き合うこと。何かを求めてここにいらしている患者さんの思いに応えるには、先入観は邪魔なのです。自分を空っぽにして話を正確に理解し、適した対処法を考えたい。症状が改善してきた患者さんが嬉しそうにされている姿を見るのが幸せであり、充実感を抱く瞬間です。
「医師として常に無心でありたい」という髙橋先生の書。怒ることなどなさそうに見えるが「イラっとすることもありますよ(笑)。でもネガティブな感情は間違いなく体に悪影響なので、切り替えます」。 撮影/本誌・西山 航 背景スタイリング/阿部美恵 取材・文/小松庸子
『家庭画報』2022年9月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。