マギー・ハイドの占星術
鏡リュウジさんが、占星術家としての実力と人格において最も尊敬する一人、マギー・ハイドさん。2023年、英国占星術界の重鎮マギーさんが注目するのは冥王星の動き。その星が意味するものとは……。
マギー・ハイド国際的に知られる占星術家。英国ケント大学で文学修士号を取得。1983年に占星術の教育機関「カンパニー・オブ・アストロロジャーズ」を共同創設。東京アストロロジースクールでは鏡リュウジ氏通訳のもと、ホラリー占星術の講義を開講。著書に『ユングと占星術』(青土社)がある。
「冥王星の水瓶座入り」がもたらす 金融の冬と〈真の価値(トゥルー・バリュー)〉
金(きん)が嫌いな人はいないでしょう。占星術では、金はその輝きや色、また永続的な性質から、太陽と結びつけられてきました。
金が風化も変色もしないこと、さらに、その太陽の永遠の光との連想とは、太陽が日々昇っては沈むという神聖な宇宙の秩序を映しています。金の結婚指輪は、天上での婚姻を象徴し、私たちはゴールドジュエリーの贈り物を大切にします。
金は多くの文化で非常に重要であったため、何世紀もの間、国家の富は保有する金の量に通貨の発行量を固定することで測られてきました。
1971年、アメリカは世界の主要通貨であるドルの金本位制を廃止しました。それ以来、ドルはただ印刷するものとなり、紙幣と電子情報上のマネーが造られてきました。さあ、冥王星の登場です!
冥王星の発見は1930年。12星座を約250年かけて一巡する。写真は地動説を説明するための太陽系儀。惑星は電動で太陽を回る。公転速度比が表現される。太陽系儀・星座絵撮影協力/アート・アンド・アンティークスル・キュリオ 東京都杉並区高円寺北2-35-14冥王星(プルート)は、太陽と金の対極の存在です。その危険な金属プルトニウムは原子力と結びつけられています。ギリシア神話ではプルートはハデスと呼ばれ、地下の冥界の神。ハデスの役割は富の神プルートスと合わさり、「プルトクラシー(金権政治)」の語が生まれました。これは彼の莫大な地下資源を示しています。
プルートは、被ると姿が消える兜を持っており、その動きは見えません。冥界ではプルートが地平線を破壊してしまうため、何かが空に昇ることも沈むこともありません。しかし、それが粛清と変化を可能にします。冥王星はリセットし、再起動(リブート)する、挑戦を突きつける神なのです。
2023年、冥王星と太陽は、私たちの富と繁栄だけでなく、人生の目的やスピリチュアルな幸福の観点からも重要です。
これを理解するためには、リーマン・ショックで知られる「2008年の世界金融危機」を振り返る必要があります。私は占星術家で、経済学者ではないので、経済評論家のジャック・ケニー氏の協力を得ました。
この金融危機に際し、米国の中央銀行に当たる連邦準備理事会(FRB)は、金融の新秩序ともいえる規模のお金を増刷──量的緩和です。景気を支えるため、大量の紙幣を刷ったのです。
しかし、量的緩和は異常な低金利をもたらし、借金をするコストがほぼなくなりました。政府は大量の借金を繰り返し、負債は膨大に。
そして2022年3月、FRBはインフレの抑制のため、金利の引き上げを開始。今では世界各国の政府が安くお金を借りられなくなり、財政は借金だらけで誰もが、特に貧しい人たちが苦しんでいる状態です。
さらには新型コロナ、ウクライナ戦争、環境危機が重なり、2023年の始まりに私たちは負債と不景気の金融の冬をどう乗り切ればよいのか悩んでいます。そこへ冥王星が関わってくるのです──しかも、大きく。
冥王星が黄道12星座を巡るには、248年かかります。2008年に冥王星が入ったのは山羊座でした。山羊座は、政府、政治合意、企業活動などの星座で、そのキーワードは「コントロール」です。
FRBが量的緩和を開始したのは、2008年11月25日。冥王星が山羊座に落ちついたのは、そのたった1日半後のことでした。以来14年間にわたり、各国政府や中央銀行は量的緩和によって経済のコントロールを試みてきました。しかし、繁栄と富どころか、巨大な負債が積み上がっていったのです。
その間、人間は環境破壊をものともせず、大地が抱く宝を奪い続けました。冥王プルートは、山羊座の資本主義的地平を転覆させ、世界経済を混乱に陥れ、再起動を突きつけたのです。今が最後のチャンスだ、と。
2023年3月24日 冥王星は水瓶座に移り、新時代が始まる
冥王星と太陽はなんと対照的でしょうか。私たちは太陽と金を愛し、それらに見晴らし、宇宙の秩序、真の永続する価値を連想します。
一方、姿の見えない冥王星は力の象徴であり、電子マネー、隠れた負債、マネーロンダリングやレバレッジ投資など、その実体をはっきり見ることができない世界を支配し、太陽の光に満ちた世界秩序を蝕みます。
2023年、冥王星は重要な動きをします。山羊座に別れを告げ、3月24日(日本時間0時24分)に初めて水瓶座入りするのです。これは東京株式取引所(東証の前身)のホロスコープから乱高下が予想された時期と一致します。
冥王星は来年までにこの2つの星座を数回行き来するため、一夜にしての変化は望めませんが、この3月を起点に冥王星が私たちの地平をリセットする新時代が幕を開けるのです。
冥王星はその後2043年3月まで水瓶座に滞在を続けます。今年の初夏にかけては、まだ世界経済は山羊座冥王星が残した負債の山に苦しんでいるものの、冥王星の移動は、負債や、私たちのささやかな贅沢や資源への配慮だけではなく、より哲学的でスピリチュアルな問題に関わってきます。
そしてその一方で、太陽もまた牡羊座で力を強め、私たちに自分自身の真実とつながるように促します。人生において、〈真の価値(トゥルー・バリュー)〉とは何なのかを追い求め、自分にとっての黄金の壺を見つけなさい、と。
2023年のあなたにとっての〈真の価値〉の探し方は、12星座別メッセージをご参照ください。
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【マギー・ハイドの占星術】12星座別 2023年あなたにとっての「真の価値(トゥルー・バリュー)」を読む>>>