母娘(おやこ)いっしょにもっと元気で、いきいきと 第8回(全11回) これからの日々を心身ともにもっと健やかに過ごすためのさまざまなヒントをお伝えします。たとえば、母と娘がよい関係で年を重ねるコツ、いつまでも美しく若々しくいる秘訣、健康のためにできること──などなど。母、娘どちらの立場のかたにも役に立つ「人生を豊かにするヒント」を一緒に探していきましょう。
前回の記事はこちら>> 人生100年時代の遺産相続「母と娘の幸福対策とは」
相続対策とは、本来、遺された家族が安心して人生を楽しむことができるためになされるもの。争うことなく、さらに母と娘の絆は強くなる幸せな相続のヒントを専門家に教えていただきました。
教えていただいた先生は
税理士・税理士法人 タクトコンサルティング 本郷 尚先生ほんごう・たかし 相続、贈与、事業継承、土地活用、財産管理を中心とした資産税専門の税理士。講演・執筆など幅広く活躍し、また“心”を大切にした新しい考え方の相続対策に力を入れている。独自の視点で描いた著書多数。母の立場から考える「まずは、自分の生存対策がいちばん大切です」
「遺産相続」というと、親から子への相続をイメージされるかたが多いかもしれません。しかし、人生100年時代で最も重要なのは、夫から妻への一次相続。
女性の寿命は長いので、夫が亡くなった後の妻の老後の生活保障、つまり“生存対策”を第一に考えたほうがよいからです。相続税対策になるからと、一次相続で子どもへの遺産分割をすすめる専門家もいますが、相続対策=相続税対策、子どもへの財産継承と考える必要はありません。妻に十分な財産を遺すことを考えて、可能な限りを妻へ相続してもよいのです。
その場合、生前に親が子どもに意思を伝えておくこと。さらに相続時に妻と子どもたちが揉めないように、夫が公正証書遺言で「財産はすべて妻に残す」と明記すること。これは、妻への愛情です。子どもたちからの不平が予想されるなら、付言事項で「夫婦の財産は二人で築いた財産」であること、妻への感謝の気持ちを加えておくとよいでしょう。二人で築いた財産の行方は、どうぞ夫婦で決めてください。
いずれにしても、親は子どもに遠慮せずに老後の人生を楽しむ権利があります。最後は、子どもへ財産を遺すために「預金残高最高」を目指すのではなく、遺さず頼らず、“自遊自財”に「思い出残高」を増やしましょう。
物語で学ぶ、「母」の相続
京子さんの場合『家庭画報』2021年6〜7月号掲載夫を病で亡くした京子さん。京子さんには、それぞれ家族を持つ息子と娘がいますが、夫の遺言に記されていたのは「全財産を妻に譲る」という言葉。
不満に思った子どもたちは、執拗に遺留分を要求しました。京子さんは、遺産分割へ心が揺らぎますが、後日、税理士から夫の伝言を聞き、心が変わります。夫が自分の生活の安定を願う愛情、さらに子どもたちにはかなりの額を生前贈与しており、それが彼らの夫婦関係を悪化させていることを憂慮した結果だということがわかったからです。
そこで、京子さんは全財産を一旦相続したうえで、一定額を均等に二人に贈与。自宅を売り、友人が多い土地のマンションを購入し、自宅を売った現金も分け与えました。その後は、十分な預金とともに自立して、新天地で充実した老後を過ごしています。
〔特集〕母娘(おやこ)いっしょにもっと元気で、いきいきと
イラスト/神崎 遥 取材・文/小倉理加 ※神崎さんの「崎」は正しくは「大」の部分が「立」です
『家庭画報』2023年4月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。