まるで庭の花を摘んだよう
藤野流 花合わせの秘密
「どうしてこんなに、心が震えるのだろう?」。藤野幸信さんが制作するブーケや、フローラルフォームを使ったアレンジメントを目にするたび、そんな新鮮な感動を覚えます。
ショップ名「fleurstrémolo」(フルール トレモロ)のtrémoloとは、音楽用語で震音を表し、「感動で声が震える」という意味だそうです。
まさに店名のとおり、作品コンセプトは、人の五感に触れる四季の色彩や質感を表現すること。こういった作風へのシンパシーが、全国各地から寄せられるたくさんのオーダー数に現れているに違いありません。
五感に触れる花アレンジをどのように制作しているのか?という問いに、藤野さんは「いつも自分の感性と感覚で束ねているので、何か特別な決まり事があるわけではないのですが……」とことわりを入れながらも、ショップで催す教室さながらに、その秘訣を一つ一つ丁寧に紐解いてくれました。
「いちばん大切にしているのは、どんな色や形の花を使っても、最終的にはまるで庭の花を摘んできたような、自然な雰囲気、瑞々しさを感じていただくこと」と藤野さん。
そのためにまず欠かせない素材は、花ではなく、リーフの存在。しかも、藤野さんが使うリーフは、香りのよいミントやゼラニウムなどのハーブ類、アメリカテマリシモツケや銀葉アカシア、ユーカリといった低木など、庭によく植えられているようなものばかりです。
加えて、ペンペン草の異名でおなじみのナズナのように、道端で見かける素朴な雰囲気の草花も頻繁に選ばれ、とても効果的に使われています。
リーフづかいも含めて、ナチュラル&エレガントな「藤野流花合わせ」の秘密を4つ伺いました。ぜひ、ご自身でアレンジする際の参考にしてみてください。
夏のピンクの花アレンジには、涼しさを感じさせる爽やかなトーンの花を選んで。バラ“マリラブ”、アジサイ、クレマチス“ミスすみれ”、ダウカス“ロビン”、スカビオサ“マリーベル”、グリーンスケール、銀葉アカシア、ダスティーミラー。 〔特集〕日本各地、選りすぐりの花を束ねた美しきフラワーアレンジメント(全9回)
写真/藤野幸信 撮影/北恵けんじ 取材・文/高梨さゆみ
『家庭画報』2020年8月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。