心静かに、向き合いたい 京都の美に触れる 第11回(全17回) この時期の京都は観光客も少なく、心静かに本来の魅力を堪能できる絶好の季節です。京都を代表する料亭が満を持して開催する“料亭美術館”、精緻な“手業の美”に出会える美術館やショップ、そして“冬の美味”を味わう食事処──。今、注目の京都のさまざまな美の形が、ここにあります。
前回の記事はこちら>> 美しき“日本の色”をインテリアに
藍と刈安で染めた緑のクッション(45×45センチ、1万3000円)、茜と楊桃で染めた橙色(35×35センチ、1万500円)。座布団はどれも38×36センチ、各9500円。濃い色のカバーは、中の綿袋も色に合わせて染めている。染司よしおか
化学染料を使わず、植物だけで染められた「染司よしおか」の色は、深みと味わい、温もりがあり、いくら眺めても飽きることがありません。木綿や麻や絹といった天然素材を、茜や楊桃、刈安、藍などの草花で染めた9系統の色は、どれも5段階の濃淡があり、そのグラデーションは格別な美しさ。
店で実物を見ながら色や形を決めるのがベストだが、色見本裂の郵送にも対応している。ランチョンマットは表と裏を違う色で染め、リバーシブルで使うこともできる。注文から完成まで約1か月。「家の中で過ごす時間が長くなってから、クッションカバーやお座布団の注文やお直しの依頼が増えました」と話すのは、6代目を継ぐ吉岡更紗さん。
形も大きさも色もオーダーすることができ、色が褪せてきたら染め直し、綻(ほころ)んできたら当て布をつけたりと、お直しにも全面対応。自然界からとれる貴重な本物の美を愛で、一生大切に使い続ける日本の心が感じられます。
金が施された六角形のランチョンマット(直径32センチ、各1万円)。店舗にはランチョンマットや小物入れ、ストール、暖簾なども。それらを見ながら、自分だけの色と形の組み合わせを考えると心が弾むでしょう。
染司よしおか 吉岡更紗さん染司よしおか京都市東山区西之町206-1
TEL:075(525)2580
営業:10時~18時 水曜定休
吉岡更紗さんが“色”を通して京都の暮らしを綴る連載「京都のいろ」>> 〔特集〕心静かに、向き合いたい 京都の美に触れる(全17回)
細見美術館 特別展
『日本の色─吉岡幸雄の仕事と蒐集』
「染司よしおか」の5代目、染色史家の吉岡幸雄さん没後初の展覧会。日本をはじめ、世界各地に伝わる染料、素材、技術を研究し、伝統の色彩の保存と復興を成し遂げた、その奇跡の足跡を辿る。
会場:細見美術館 京都市左京区岡崎最勝寺町6-3
TEL:075(752)5555
会期:2021年1月5日(火)~4月11日(日)
開館時間:10時~17時(入館は16時30分まで)
休館日:月曜(祝日の場合は翌日)
古代印度更紗(赤星家旧蔵)撮影/本誌・坂本正行 取材協力/永松仁美
『家庭画報』2021年2月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。