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伝統工芸

独特の波模様に輝く螺鈿のオリーブ。日常からハレの日まで活躍する「家庭画報賞」受賞の漆器

2023.02.17

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伝統工芸の美しい手業をテーブルに 漆器と豊かに暮らす 第3回(全11回) 2022年9月に開催された第57回「全国漆器展」。美術工芸品部門、産業工芸品部門の2部門に、全国の漆器産地から数多くの力作が出品されました。各産地では古来の技法を大切に守りつつ、現代の暮らしにフィットする新しい器を生み出しています。この年に新設された「家庭画報賞」を含めた入賞作品を中心に、日々の暮らしを豊かにしてくれる漆の器を紹介します。前回の記事はこちら>>

漆器の作り手の工房を訪ねて


日本各地の漆器産地には、それぞれ特有の技法が今に受け継がれ、その土地柄が表れた漆器が作られています。津軽、輪島、高岡、山中、木曽、香川へ、全国漆器展入賞作品の作り手の工房を訪ねて、漆の器作りに懸ける思いを伺います。

独特の波模様に螺鈿のオリーブが輝く大皿
渡辺漆器(香川漆器)


渡辺漆器(香川漆器)


盛皿後藤存清(ぞんせい)
中央と縁には香川の名産であるオリーブが存清と螺鈿で描かれている。存清は絵柄の輪郭を線彫りした後に金粉を摺り込む技法。螺鈿にはアワビの貝を使用し、一部貝の裏に金箔を貼って色の変化をつけている。径42.7×高さ5.4センチ、7万7000円。


2022年に新設された最初の家庭画報賞を受賞したのは伝統工芸士の渡辺光朗さんの作品です。渡辺さんは香川漆器独特の技法である“後藤塗(ごとうぬり)”と“存清(ぞんせい)”を組み合わせた漆器を作り続けてきました。「盛皿後藤存清」にもその2つの技と、螺鈿(らでん)を使った加飾が施されています。

渡辺漆器(香川漆器)

右・そのときの漆の状態に合わせて厚みを調整しながら、全面に朱漆を塗り広げる。次に、寒冷紗で作ったタンポで全体をたたき、表面に細かな凹凸をつける。左・その後、表面を刷毛で一方向に優しくなでつける。立ち上がっていた凸の部分が左右に伸びて目の流れができる。

盛皿全面に施された畳の目のようにも見える細かな波模様が後藤塗の特徴。渡辺さんはタンポでたたいた後に刷毛で表面を優しくなでつける“なで後藤”でこの模様を表現します。

「後藤塗といっても工房によってやり方はいろいろです。昔はこのなで後藤が主流でした。漆の粘り気と厚み、刷毛を持つ力加減で目の大きさが変わるので、数をこなさなければ美しい模様を出すことはできません」。

匠の技が凝縮された一枚ですが、「傷んだら直せばいいだけです。使っただけ手にもなじんできます。恐る恐る使うのではなく、とにかくたくさん使ってください」と渡辺さん。

渡辺漆器(香川漆器)

渡辺光朗さんは香川県高松市生まれ。1969年、渡辺漆器入社。先代で父の一夫さんに学ぶ。2001年、香川漆器の伝統工芸士認定。2021年、第56回全国漆器展で農林水産大臣賞受賞。

今回審査員を務めた千葉由希子編集長は「日常からハレの日まで幅広い場面で重宝する一枚だと思います。お客さまがいらっしゃるときにはセンターピースになりますし、普段はお菓子やフルーツを置いておくだけで、テーブルが華やぐはずです」とその魅力を語ります。

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渡辺漆器(香川漆器)

カップ、ソーサー、スプーンの3点がセットになった「スープカップ」(カップ径12センチ、各1万3200円)。記事の最初の写真のように、ソーサーは取り皿としても使える。

渡辺漆器(わたなべしっき)
香川県高松市上林町782-3
TEL:090-7146-5191
表示価格はすべて税込みです。 撮影/大泉省吾 取材協力/日本漆器協同組合連合会
『家庭画報』2023年3月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。
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