伝統工芸の美しい手業をテーブルに 漆器と豊かに暮らす 第9回(全11回) 2022年9月に開催された第57回「全国漆器展」。美術工芸品部門、産業工芸品部門の2部門に、全国の漆器産地から数多くの力作が出品されました。各産地では古来の技法を大切に守りつつ、現代の暮らしにフィットする新しい器を生み出しています。この年に新設された「家庭画報賞」を含めた入賞作品を中心に、日々の暮らしを豊かにしてくれる漆の器を紹介します。
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「一器多用」――自在な発想で使いこなす
ライフスタイルの変化や、漆芸の技術革新により、新たな漆器も誕生しています。
ここでは「スタッキング」「色と柄」「一器多用」「保存・抗菌」のキーワードをもとに、現代の暮らしに使いやすく、フィットする魅力的な器を紹介します。
フリートレーセット 石目塗
中村漆器店(高岡漆器)
小さな板皿にグラスと小鉢をのせてトレー代わりにすることもできるし、小ぶりのランチョンマット風に用いても素敵。テーブルクロス/アクセル ジャパン例えば蕎麦猪口は、つけ汁を入れるだけでなく、和食のあえ物を入れたり、アイスクリームを入れたり、野菜スティックのデイップソースにも便利で、時には庭から切った花を一輪挿したりするのにも使えます。和洋自由自在。一器多用は、家庭ではごく当たり前のことです。
長い板皿を大皿風に盛り鉢に。縁に少し立ち上がりがあるので、器感覚で使いやすい。小さな板皿は銘々の取り皿に。その使い勝手をさらに推し進めたのが、ただ平らな四角の板皿といえます。器の形をなしていないのですが、料理を盛りつけると視覚的な効果がよく新鮮です。使い手のセンスが、そこに凝縮されるからでしょうか。
食材やスイーツをのせても似合いますが、ドリンクと小皿をのせれば、ミニトレーに転じ、何種かのおつまみやチーズをバランスよく絵を描くつもりで並べれば、洒落ていて、しかも取りやすいものです。
石目塗は、漆が乾かないうちに炭粉を蒔きつける技法で、ざらっとした質感が特徴。傷がつきにくく日用の器にはもってこい。黒の長手板皿に朱、黒、緑の12.5センチ角の皿が3枚収まる。塗りは高岡でポピュラーなカシュー塗料を使用。37.8×13×高さ2.3センチ、1万6500円。板皿は、漆ならではのテクスチャーによって、高級感や存在感をプラスさせます。アイディアを駆使して使ってみませんか。
中村漆器店富山県高岡市長慶寺53
TEL:0766(22)8433
表示価格はすべて税込みです。 撮影/武蔵俊介 スタイリング/阿部美恵 取材・文/片柳草生 取材協力/日本漆器協同組合連合会
『家庭画報』2023年3月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。