酒器や食器に用いられることの多い錫は、水を腐りにくくする抗菌作用に優れているといわれており、花器にもふさわしい素材です。
今回お届けするのは、錫で作ったピッチャー型の花器。『家庭画報』表紙の花を制作していただいている並木容子さんのご協力のもと、どんな種類の花も美しく生けられるオールラウンドの花器が完成しました。
ドウダンツツジとライラック。ドウダンツツジなどの枝ものは、注ぎ口にかけるようにすると安定して生けやすい。横に伸びたフォルムと花器のコントラストが美しい。「どなたでも花が生けやすいのは、底が広がった台形の花器です。底に重心があると太い枝ものを生けても倒れずに安定しますし、口がすぼまっていると花がまとまりやすいです」と話す並木さんが愛用するのが、ロンドンやパリの骨董市で買い集めてきたアンティークのピッチャー。片側に取っ手があることで、花を生けたときに重心のバランスがとりやすいのです。
「バラなどのボリュームのある花はこんもりと丸く生け、枝ものは取っ手とのバランスを見ながら横に伸びるように生けるのがいいですね。どんな花でも格好よく決まります」
バラ、トルコギキョウ「楊貴妃」、アリウムをメインに、イタリアンベリーを口縁にかけるようにして生ける。ボリュームのある花は高さを抑えてこんもりと丸いフォルムを意識すると花器とのバランスがとりやすい。新年には松や南天を飾ったり、春には庭で摘んだ愛らしい草花を生けたり……と、錫の柔らかな光沢は夏に限らず一年を通して花を際立たせてくれます。
光の差し込む窓辺に、ダイニングや玄関に……。ご自宅の至る所で、空間に優しい華やぎを添えてくれる花器ができ上がりました。
一緒に考えてくださったかた
並木容子(なみき・ようこ)さん
東京生まれ。OLの頃習い始めたフラワーアレンジメントをきっかけに花の世界へ入る。東京・吉祥寺で「ジェンテ」主宰。生産者の応援にも情熱を注ぎ、全国の産地へ足繁く通う。