静岡の地で古来受け継がれてきた竹細工は、細いひごを用いて作られます。折れそうなほどに細く削られたひごが成す形には、思わず両手でそっと包み込みたくなるような繊細な美しさが宿ります。
菓子器やバッグ、照明など暮らしを彩る品が多岐にわたって作られていますが、今回、家庭画報本誌オリジナルで製作していただいたのは、多彩に活躍するコースターです。
ゆり根のおしるこを盛った漆の小椀をのせて。横に入った3本の竹がひごを補強しているので、うつわをのせても安心。「細いひごが細かに並んださまを目にしたとき、このすっきりとした美しさを生かしたコースターがあれば、蓋にもうつわにもなり、さまざまな使い方を楽しめるのではないかと思いつきました。
蓋物のうつわをお出しすると、サプライズ感が出てお客さまに喜んでいただけることが多いのですよ」と話すのは、おもてなし上手で知られる料理研究家の久保香菜子さん。
コースターの製作にあたり、使い勝手のよい大きさや形など、細部にわたりアイディアをご提案いただきました。
いわしの酢じめの和風サラダを前菜に。グラスにのせるだけで、おもてなしの演出になる。コースターの大きさは内径約8・5センチ。一般的な大きさの茶碗やグラス、そばちょこなど、お手持ちのうつわにのせるだけで、蓋物の演出を楽しめます。
陶磁器、ガラス、漆に金属……と、さまざまな素材の和洋のうつわに優しく寄り添ってくれるのは、竹の持つ柔らかみと、細いひごのシャープな印象を生かしたデザインだからこそ。
竹は、涼やかに見えるため夏に用いられるのが一般的ですが、より多くの機会に楽しんでいただけるよう、あたたかみのある飴色の炭化竹を使用しています。
うつわの蓋としてだけでなく、もちろんコースターとしても、あるいはプティフールを盛る小皿としてティータイムに用いても、さまざまなシーンで目を喜ばせてくれることでしょう。
一緒に考えてくださったかた
久保香菜子(くぼ・かなこ)さん
母譲りの料理好きが嵩じて、高校生の頃より京都の老舗料亭「たん熊北店」にて懐石料理を学ぶ。料理研究家として活動するほか、スタイリングや料理書の編集など食のジャンルにおいて幅広く活躍。