海を渡った京焼の器と、おもてなしの心 パリと真葛焼、茶懐石の一会 最終回(全3回) 19世紀後半、パリ万国博覧会で高い評価を得た日本の陶芸家、初代宮川香山。それから140年後、先祖を一にする京都の陶家、6代宮川香齋の嗣子、宮川真一さんは、京焼の魅力を世界に発信したいと、数多くの器を携え、パリに渡りました。フランスの人々を茶懐石でもてなした一会を追いました。
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当代、先代、先々代の香齋作品と真一さんの新作が勢揃いした茶の湯の器。パリの人々がじかに触れて愛でた道具たちも無事に2日間の役目を終えた。「美とおいしさが完璧に一体になった特別な時間でした」と称賛の言葉をかけてくれた先のマダムのように、茶懐石の会はパリの人たちに美しい余韻を残しました。
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パリで催された茶懐石の会の様子>>2日間、合計6回の会を終えて「まずはホッとしています」と、宮川さんは頬の緊張を緩めます。すこし気障に聞こえるかもしれませんが、とはにかみつつ、「いま自分がどこまでの仕事ができているのかを確認できるのがパリ。ゼロから始めてやっとここまでこられたと思う半面、いまようやくスタート地点に立てたかどうか」とも語ります。
亭主の宮川真一さんとシェフの秋吉雄一朗さん。秋吉さんは2021年5月、パリ15区に「CHAKAISEKI akiyoshi」を開店する予定。「このイベントは私一人では成し得なかったことです。先祖代々が培ってきた信頼があるからこそ、日本から手弁当で駆けつけてお手伝いしてくださる人に恵まれ、京都の老舗のかたがたの協力も得られました。今後海外展開を続けるにしても、自分がいちばん大切にするものをおろそかにしてはいけないと思います。
お客さまの中で『あなたの仕事を続けていって、どうかこの素晴らしい文化を次の世代に遺していってください』といってくださったかたがいらして、背筋が伸びる思いがしました。やはり毎日土を触り、京都で制作を続けていくことが私の使命と再認識しました」と、宮川さん。去来するさまざまな思いとともに器を桐箱に納め、真田紐をしっかりと結びました。
炭火を使うことができない会場ということで、茶釜を掛ける代わりに、京都の釜師・吉羽與兵衛の仕事を燗鍋で披露。色鮮やかな真葛焼の替蓋を添えて。 〔特集〕海を渡った京焼の器と、おもてなしの心 パリと真葛焼、茶懐石の一会(全3回)
京都・真葛焼の器を特別に誌上販売します
パリでフランス人に称賛された真葛焼の茶懐石の器を、読者の皆さまに特別誌上販売いたします。茶懐石のみならず、日常にも使える真葛焼の器をお手もとに置いて、日本の器の美を再認識してみてはいかがでしょうか?
撮影/武田正彦 コーディネート・取材・文/鈴木春恵 取材協力/今津京子 パリ日本文化会館 パリ装飾芸術美術館
※この記事は2020年2月上旬に行われた催事を取材したものです。
『家庭画報』2021年2月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。