自然がくれる癒やしの力 日本の「新緑遺産」第6回(全13回)今、森の中を歩いていると想像してみてください。土の匂い、小枝を踏む音、鳥のさえずり、葉擦れの音、木漏れ日など、五感を通して自然が私たちに語りかけてくれます。新緑が美しくなるこの時期、自然の中で、また自宅で、「森の効用」を取り入れる暮らしを提案します。
前回の記事はこちら>> 観葉植物や盆栽を目にしたり、森の写真や画像を鑑賞するだけでも森林浴効果が得られるといいます。暮らしに彩りを与えるインテリア・グリーンの実例や、家の中で、心と体の健康に役立つアイディアをご紹介します。
ガーデンデザイナー玉井禎晋さんに学ぶ家の中の“小さな森”
まるで小さな公園に足を踏み入れたかのような緑あふれるリビング。ここはガーデンデザイナー、玉井禎晋さんの自邸です。壁面の鏡に室内や庭が映り、緑が倍増して見える仕掛け。こんな家なら「おうち時間」も楽しくなりそうですが、緑の量だけが快適さの理由ではありません。玉井さんによれば、まず大切なのは自然な形の樹木選び。
「門に覆いかぶさった松を『門かぶりの松』といいますが、僕が重視するのはその『かぶり』の樹形。少し傾いて優しげな線を描いた枝がソファに座った人の頭上にかぶるように配すると、心地よい空間になります」
次に大切なのが器選びで、樹形とのバランスがよい形に加え、素材も重要。
「器は洋服と同じ。スタイリング次第で印象が変わります」と玉井さん。さらにマルチングにも気を配ります。リビング以外の随所に配したグリーンを見ても、玉井さんの細やかな配慮が、自然を感じるくつろぎの空間を生み出していることに気づかされます。
高さと動きのある樹木が室内に木漏れ日や木陰を生み出す
緑のボリュームが倍増するミラー張りの壁面ソファの背後の壁2面は鏡張り。室内や庭が映り、緑の量が倍増して見える。手前は自然な樹形を生かしたソヨゴ、右奥はヒメユズリハ。どちらも日本古来の庭木だが、日陰に強く、室内でも十分育つという。マルチング材や下草で鉢の土をカバーするのも、玉井流の繊細な心遣い。
自然な枝ぶりの樹木をくぐった先に広がる緑に満ちた別世界リビングの入り口には自然な枝の曲線を生かした大ぶりのシマトネリコを配置。その先に広がるグリーンでいっぱいの空間を予告するようなしつらいに、期待が高まる。窓の外にはアウトドア家具が置かれたテラス、さらに和と洋をミックスした庭が続き、開放感は抜群。
器や下草までスタイリングして初めてくつろぎの空間が完成する
明かりの効果で夜は葉陰が美しい空間に一変「夜は照明の効果で植物の陰影が窓辺や床に映り、昼とはまた違った雰囲気になります」と玉井さん。左はヒメユズリハ、右は斑入りのフィカス ルビギノーサ(フランスゴムの木)。ヒメユズリハの台は木片を樹脂で固めた玉井さんデザインの特注品で、内部に照明を仕込むことができる。鉢はミュールミル。
バリのホテルのような空間をテラスに再現する
スイングチェアを木々で囲って外にも緑のコーナーをスイングチェアをグリーンで囲んで、テラスの一角にも「小さな森」を再現。わが家にこんなオープンエアのコーナーがあれば、毎日リフレッシュできるはず。右奥のビッグプランツはフェイジョア。「最近は、木漏れ日を感じるような小葉の大型植物が人気です」と玉井さん。チェアは平田ナーセリーのもの。